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弁政連フォーラム 第278号 平成28年4月15日

自由民主党「知的財産戦略調査会」の開催について

平成28年3月23日に自由民主党本部にて、政務調査会「知的財産戦略調査会」が開催され、日本弁理士会から伊丹勝会長、大澤豊次期副会長、日本弁理士政治連盟の会長を兼務する水野勝文政務報告ワーキンググループ委員、及び副会長を兼務する瀧野文雄委員が出席しました。

福田峰之常任幹事による司会進行の下、保岡興治会長が挨拶を述べられ、調査会が開会しました。

保岡会長は、挨拶の中で「知財教育は、創造性を育むことの視点から、国策として重要な事項であり、政府主導で強力に推進すべきである。」旨を力説されていました。

当日の議案は、(1)渡部俊也東京大学政策ビジョン研究センター教授(日本知財学会会長)による『IoT、BD及びAI時代に向けた知財戦略とそのための教育』、(2)松岡守三重大学教育学部教授(日本知財学会理事)による『知財教育の充実について』、及び(3)伊丹会長による『知財教育に関する日本弁理士会の取組について』でした。

伊丹会長は、日本弁理士会による知財教育に関する取組として、「知的財産に関する専門家」たる弁理士が、以下に記すプロボノ活動を行っていることを説明しました。

(1)教育支援活動のコンセプト

(1-1)未来を担う子どもたちの「知的財産マインド」育成
  • 10年後、20年後の日本のエジソンを育てたい。
(1-2)「知的財産マインド」の育成とは
  • 発明への理解を通じて創造力を養うこと。
  • アイデアを尊重する心の大切さを学ぶこと。
  • 創造したものを守る世の中の仕組みを理解すること。

(2)知財教育の在り方

(2-1)小学校
  • 人の創作物を尊重すること、様々な制度により知財権が守られていることに対する理解
  • 創造することの不思議、喜びの体験など、情操教育も含めた、根幹的な理解を深めるべき。
(2-2)中学校
  • 知財権制度の種類や各制度の仕組みの理解とともに、企業の経済活動において知財権が不可欠なものであることの理解を深めるべき。
(2-3)高校
  • 工業高校、商業高校などでは、特許制度、商標登録制度など社会に出て役立つ実践的理解
  • 普通高校では、制度の包括的理解を深めるべき。
(2-4)大学
  • 権利解釈の基礎理解、知財部の役割など、社会人になる前の実践的理解を深めるべき。

(3)教育支援の実績

(3-1)小学校・中学校・高校への知財授業
(3-2)教員への教材提供
  • 教員が学校教育現場で使用できる動画教材及び様々な科目に対応した知財権エピソード集である「先生のための知財のひきだし!」をホームページから自由にダウンロードして利用できるようにした。
  • なお、全国の約5,200の高校あてに周知のためのパンフレットを送付した。
  • (参考)http://www.jpaa.or.jp/chizaikyouiku/chizainohikidashi.pdf
(3-3)高等専門学校への知財セミナー
  • 平成25年3月14日に(独)国立高等専門学校機構との間で締結した「知的財産教育の充実及び知的財産の活用のための協力に関する協定」に基づき、高専にてセミナーを開催している。平成26年度は11回、平成27年度は20回行った。
(3-4)大学との提携講座、共同研究等
  • これまでに慶応大学、中央大学、東京理科大学、早稲田大学、政策研究大学院大学、東京農工大学と提携講座又は共同研究などを行っている。
(3-5)パテントコンテスト及びデザインパテントコンテストの実施
  • 日本弁理士会、特許庁、文部科学省及び工業所有権情報・研修館が主催して毎年行っている。
  • 高校生、高等専門学校生及び大学生から発明(アイデア)・意匠(デザイン)を応募してもらい、優秀な作品(出願支援対象作品)を表彰する。
  • 優秀な作品は本人から出願することができ、その際の指導弁理士の派遣と弁理士の指導料や出願手数料等を日本弁理士会が負担している。
  • 平成26年度は、応募数が494件(パテント)、274件(デザインパテントコンテスト)のうちパテント29件、デザイン31件を出願支援対象とした。また、各コンテストの前にセミナーを行っており、平成26年度は19回行った。
  • なお、デザインパテントコンテストでは、意匠権に係るセミナーの受講は応募要件の一つになっている。

(4)「弁理士知財キャラバン」とは

(4-1)訪問型コンサル事業
  • 知財を活用した事業戦略を立案する知財経営コンサルティングのスキルを有す弁理士が直接企業を訪問し、企業の業績アップに貢献していく活動である。
(4-2)目的
  • 日本の中小企業は良い技術やノウハウを持ちながら、上手く活かして収益を拡大させていく戦略作りが不足している。
  • 自らが所有する優れた知財を再認識してもらい、それを事業に活用していく。
(4-3)実績
  • これまでに、160社以上の企業を訪問してコンサルティングを行った。

(5)地方公共団体などとの知財支援協定の締結に基づく支援

  • これまでの締結実績は19道県、4市及びその他4である。
  • 今後、鹿児島県(3/28)及び広島県(4/7)と締結する予定である。

その後の質疑応答及び意見交換においては、「大学発の知財を戦略的にビジネスに結び付けるべきである。」などの意見が述べられ、盛会のうちに終了しました。

この記事は弁政連フォーラム第278号(平成28年4月15日)に掲載したのものです。

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