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弁政連フォーラム 第320号 令和元年10月15日

特許法を改正し、秘密特許制度を復活させると共に、重要特許は我が国を第1国出願とする制度を創設すべき!

元日本弁理士会会長 元日本弁理士政治連盟会長 古谷史旺

元日本弁理士会会長
元日本弁理士政治連盟会長
古谷 史旺

 

秘密特許制度について

国家の安全性及び優位性を含む重要な技術開発がなされた場合、それに関わる特許出願の内容を一定期間秘密にする、いわゆる秘密特許制度は多くの国で採用されている。

各国の秘密特許制度の導入状況は、我が国を含む世界70ヶ国の中で、導入国は51ヶ国、非導入国は19ヶ国であり、我が国を除く先進国では殆どが導入している。IAEAの常任理事国で秘密特許制度を導入していないのは、日本だけである。

日本は、明治18年の専売特許条例以降第2次世界大戦中までは、特許法に秘密特許制度が導入されており、軍事技術を中心に運用され、最終的に1571件の秘密特許が登録されている。

日本の特許法は、発明内容の公開の代償として特許権という排他的独占権を付与する、公開代償の原則が柱となっている。

『秘密特許制度と公開代償の原則との関係について、吉藤幸朔氏は「特許出願における発明の公開」は、個人的秘密の状態を解き、発明の内容を政府に開示することであり、発明者が広く開示(公表)することの意ではなく、公表は政府の責務であると整理した上で、発明者の義務である発明内容の政府への開示は果たされ、発明の利用は国家目的のために自由に行われる状態にあり、しかも秘密を必要としなくなった時は、その秘密を解除して、一般の特許と全く同様に公表することから、特許権という排他独占権を与える根拠となっている公開代償説と矛盾するものではないとし、秘密特許制度は現行特許制度に合致していると指摘している。

つまり、秘密特許制度を日本の特許制度に導入しても同制度の根本とされる排他独占実施権付与の代償たる権利の公開の原則は維持されることになる。』(国際原子力機関Senior Nuclear Engineer 八木雅浩氏著作の「特許制度に基づく技術情報の公開による大量破壊兵器の拡散リスク」より抜粋。

先進主要国のアメリカ、ドイツ、カナダ、ロシア、韓国、オーストラリア、イギリス、フランス、中国、シンガポール等々、多数の国が秘密特許制度をもっている。

ちなみに、ドイツでは特許法第50条~56条に規定があるし、アメリカでは特許法第181条に規定がある。また、イギリスは特許法第22条、フランスはL614条3、中国は特許法第4条、韓国は特許法第41条、台湾は特許法第51条、オーストラリアは特許法第147条、シンガポールは特許法第34条にそれぞれ規定されている。

前述したように、世界70ヶ国中51ヶ国が秘密特許制度を導入しているが、日本は敗戦国という理由で、昭和23年に秘密特許制度が削除された。

しかし、日本は敗戦後74年が経つ独立国家である。国家の安全性及び優位性を含む重要な技術開発がなされても国家機密として保持できない。そんな日本が存在することに、違和感、危機感、責任感を持たないのであろうか。
この問題提起は、日本弁理士会が立ち上がってやるしかないではないか。

第1国出願義務と外国出願制限について

秘密特許制度のある国は、自国への第1国出願を強制しているところが多い。アメリカ(第184条)、イギリス(第22条・23条)、フランス(L614条2)、ドイツ(国家機密を有するもの・第52条)、中国(第20条)、韓国(国防上必要な発明・第41条)、オーストラリア(安全防護上の関連技術・第147条)、シンガポール(第34条)等々枚挙に暇がない。

しかるに、我が国は係る制限規定がないために、我が国を第1国出願とせずにスルーさせる企業が増えている。

日本の国益を考えた時、これを放置していて良いのだろうか?
本来であれば、力のある関係者の発意で改正に動くべきところであるが、そんな気配は感じられない。
そうであれば、秘密特許制度の復活と同様に、第1国出願義務と外国出願制限についての問題提起は、日本弁理士会が立ち上がってやるしかないではないか。

以上

この記事は弁政連フォーラム第320号(令和元年10月15日)に掲載したものです。

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