PF-JPA
 
【政府】

特別の法律により設立される民間法人の運営に関する指導監督基準について

平成14年4月26日

 民間法人化された特殊法人等については、昨年12月に策定された「特殊法人等整理合理化計画」において、役員人事、ディスクロージャー等に関する政府としての統一的な指導監督基準を策定することとされていた。
 これに基づき、4月26日の閣議において、これらの法人の運営全般にわたる指導監督の基準を定めた「特別の法律により設立される民間法人の運営に関する指導監督基準」を閣議決定した。
特別の法律により設立される民間法人の運営に関する指導監督基準

平成14年4月26日
閣  議  決  定

 特別の法律により設立される民間法人について、所管大臣がその設立根拠法等に基づいて指導監督を行う場合には、別に法令で定める場合を除き、下記の基準に沿って行うことを基本とする。
1. 本基準の対象
 本基準は、民間の一定の事務・事業について公共上の見地からこれを確実に実施する法人を少なくとも一つ確保することを目的として特別の法律により設立数を限定して設立され、国が役員を任命せず、かつ、国又はこれに準ずるものの出資がない民間法人(地方公共団体が設立主体となる法人を除く。以下単に「法人」という。)を対象とする。
2. 事業
 法人の事業は、法人の民間法人としての性格を損わない範囲内で、その事務・事業を自立的かつ適正に行わせるとの観点から、少なくとも次の事項に適合していなければならない。
(1)  法人の事業の経常的運営に要する経費は、事業による自己収入で賄われ、国又はこれに準ずるものからの補助金等(補助金、負担金、交付金、補給金及び委託費をいう。以下同じ。)に依存していないこと。
  また、真にやむを得ない理由から当該補助金等を受けている場合においても、経常収益に占める補助金等の割合の低減化を図るとの観点から、補助事業の段階的廃止、法人に本来予定されている事務・事業の遂行に支障のない範囲内で行う自主事業による自己収入の拡大等所要の措置に努めていること。
(2)  法人が制度的に独占となる事務・事業を行っている場合には、当該事務・事業が当該法人の従たる事務・事業にとどまっていること。また、当該事務・事業の独占によって法人の事務・事業全体が実態上独占とならないよう、所要の是正措置が講じられていること。
  ただし、社団的性格の法人が、当該法人の構成員の費用負担によって構成員を対象に行う共益的な事務・事業であって、当該事務・事業の運営について構成員による統制が確保されている場合には、この限りでない。
(3)  法人が制度的に独占となる事務・事業を行っている場合には、法令又は定款等に基づき行為規制を課す等独占の弊害を克服するための十分な措置が講じられていること。
  また、制度的には独占となっていない事務・事業でも、実態上独占となっている場合には、必要に応じ行為規制を課す等法人の事務・事業が独占の弊害を生まないよう十分な措置が講じられていること。
(4)  法人に本来予定されている事務・事業において手数料等の対価を徴収する場合には、その対価の額が適正なものとなっており、かつ、その対価の額及び算定根拠がインターネットで公表されていること。また、当該事務・事業について区分経理又はこれに準じた管理が行われ、その収支状況がインターネットで公表されていること。
 なお、法人が、法令の規定に基づいて検査、認定、資格付与等(以下「検査等」という。)の事務・事業を行っている場合には、その手数料等の対価の額は、各府省によって決定されていること。また、法人が当該事務・事業以外に対価を伴う自主事業を行っている場合にも、当該法人の健全な運営に必要な額以上の利益が生じていないこと。
(5)  法人が、法令の規定に基づいて検査等の事務・事業を行う場合には、所管官庁において、その検査等の基準が客観的に明確なものとされていること
(6)  法人に本来予定されている事務・事業の一部を外注する場合には、特定の事業者に限定されるような仕組みとなっていないこと。
(7)  法人の事務・事業が公正に行われることを担保するため必要な措置が講じられていること。特に、法人の役職員については、その事務・事業の内容に応じ、国家公務員に準じた規律に服することとするなど、その事務・事業の公正性を担保する上で必要と認められる職務規程等が定められていること。
3. 機関
 法人の機関は、設立目的の達成等のため、法人の健全かつ適正な管理運営を確保するとの観点から、少なくとも次の事項に適合していなければならない。
(1) 役員(監査役員を除く。以下本項目において同じ。)
@  役員の定数は、法人の事業規模、事業内容等法人の実態に照らして適正な数となっており、上限と下限を定める場合でもその幅が大きすぎないこと。
A  役員については、法人が行う事務・事業を適正かつ効率的に運営することができる者が、制度上及び実態上、公正かつ自主的に選任されていること。
B  役員の任期については、原則として2年を基準として設定されていること。また、役員の在任年齢について、独立行政法人、公益法人等における取扱いを踏まえ、適切な規程が整備されていること。
C  役員のうち、特定の企業の関係者(役員、使用人、大株主等)又は所管する官庁の出身者が占める割合は、それぞれ役員現在数の3分の1以下となっていること。
 また、同一の業界の関係者が占める割合は、役員現在数の2分の1以下となっていること。特に、当該同一の業界の関係者が、法人の事務・事業に関わる業界の関係者である場合には、その数と所管する官庁の出身者の数との合計が、法人の役員現在数の2分の1を上回らないこと。
 ただし、特定の業種の事業者又は事業者団体に係る共益的事業を主たる事業とする法人については、この限りでないものとし、この場合には、役員(監査役員を含む。)に、当該業種の関係者又は所管する官庁の出身者以外の者を登用していること。
D  役員の報酬等(報酬及び退職金をいう。以下同じ。)は、当該法人の資産及び収支の状況並びに国家公務員の給与・退職手当や民間の役員の報酬等の水準と比べて不当に高額に過ぎることなく、社会一般の情勢に適合したものとなっていること。また、法人及び所管官庁において、その支給基準が一般の閲覧に供されるとともに、インターネットにより公表されていること。
E  役員会については、役員の多数の意思が適正に反映されるように、その成立要件、議決要件等が定められていること。
(2) 監査役員
@  監査役員は、会計監査を含む法人の事務・事業の全般的な監査を行うものであり、適正な監査機能を発揮する上で十分な体制とするとともに、可能な限り関係府省以外の者及び外部の者を登用していること。
A  監査役員は理事を兼ねていないこと。
B  監査役員に関し、前記(1)−A、B及びDを準用すること。
(3) 社団的性格の法人の総会等
@  組合等の社団的性格の法人の総会等については、その構成員の多数の意思が適正に反映されるように、その成立要件、議決要件等が定められていること。
A  社団的性格の法人の構成員が多数であったり全国に散在する等の場合であっても、構成員の意思が正当に反映されるような措置がとられていること。
(4) 評議員会等
@  法人の運営に関する重要事項の審議を行う評議員会等(評議員会、経営委員会等法人外部の者を含めた第三者的性格を有する機関をいう。以下同じ。)において、法人の業務実績の評価が行われていること。
A  評議員会等の構成員は、公正な手続により選任されていること。
B  評議員会等の構成員は、原則として役員を兼ねていないこと。やむを得ず評議員が役員を兼ねる場合においても、その割合は、評議員会等を実質的に支配するに至らない程度にとどまっていること。
C  評議員会等及びその構成員に関し、前記(1)−@、B及びEを準用するとともに、特定の企業又は所管する官庁の出身者及び同一の業界関係者が占める割合は、評議員会を実質的に支配するに至らない程度にとどまっていること。
 ただし、特定の業種の事業者又は事業者団体に係る共益的事業を主たる事業とする法人については、この限りでないものとし、この場合には、評議員会等の構成員に、当該業界関係者又は所管する官庁の出身者以外の者を登用していること。
4. 財務及び会計
 法人は、設立目的の達成等のため、健全な事業活動を継続するに必要な確固とした財政的基礎を有するとともに、その財政状態及び経営成績を明らかにするため、適切な会計処理が行われなければならない。したがって、その財務及び会計については、少なくとも以下の事項に適合していなければならない。
(1)  企業会計原則その他法人の特性に応じ一般的かつ標準的な会計基準に従い、適切な会計処理が行われていること
(2)  法人の余裕金(財産)は、事務・事業の安定的な運営を確保するため、過度なリスクを負うことのないよう適切な運用が行われていること。
(3)  法人が長期借入(返済期限が1年以上の借入をいう。)を行う場合には、確実な返済計画を策定する等法人の活動に支障をもたらすことのないよう十分留意されていること。
(4)  引当金・特別法上の引当金等は、事務・事業の適切かつ継続的な実施に必要な程度となっており、その明細及び増減状況が毎年公表されていること。
(5) 収支決算額がおおむね50億円以上の法人については、所管官庁からの要請に基づき、公認会計士による監査を受けるよう努めていること。
5. 株式の保有等
 法人の株式の保有等については、公共上の見地から特別の法律により設立されているという法人の性格にかんがみ、関連組織のいたずらな拡大を抑制するとの観点から、少なくとも以下の事項に適合していなければならない。
(1)  法人は、法定の資金供給業務として行う場合及び財産の管理運用である場合を除き、公益法人、株式会社等への基金拠出又は出資を、原則として行っていないこと。
(2)  法人が真にやむを得ず、あるいは法定の資金供給業務又は財産の管理運用として、公益法人、株式会社等への基金拠出又は出資(間接出資分を含め法人による出資比率・議決権比率が20パーセント以上のものに限る。)を行っている場合には、毎事業年度の事業報告書に当該公益法人、株式会社等の概要(名称、所在地、資本金、事業内容、役員の状況、従業員数、持株比率及び法人との関係)が具体的に記載されていること。
 また、法人の委託先で、その収入に占める当該法人からの収入の割合が3分の2以上となっているものがある場合においても、これと同様とする。
6. 情報公開
 法人の業務及び財務等に関する情報の開示は、法人の公共的性格にかんがみ、その透明性を確保するとの観点から、少なくとも以下の事項に適合していなければならない。
(1)  法人は、次の業務及び財務等に関する資料を主たる事務所に5年間備えておき、一般の閲覧に供していること。また、インターネットによりこれらを公表していること。
@ 定款
A 役員名簿(注)
B 組合員等名簿(組合等の場合)
C 事業報告書・附属説明書類
D 損益計算書又は収支計算書
E 貸借対照表
F 法律上作成が義務づけられている財産目録及び決算報告書
G 監事の意見書
H 事業計画書
I 収支予算書
 (注)常勤・非常勤の別及び退職公務員については、その最終官職名(官房付等で退職した者については、その前職名を含む。)を付記すること
(2)  所管官庁においては、その所管する法人について、(1)に規定する資料を備えておき、これらについて閲覧の請求があった場合には、これを閲覧させていること。また、所管官庁は、ホームページに、次に掲げる事項を記載した所管する。法人の一覧表を掲載するとともに、所管法人がホームページを開設している場合には、一覧表からの簡便なアクセスを可能とする措置を講じていること。
@ 名称
A 所管する部局(担当局担当課等)の名称
B 主たる事務所の所在地及び電話番号
C 設立年月日
D 代表者の職名及び氏名
E 主な目的及び事業
(3)  所管官庁においては、その所管する法人について、次に掲げる事項を各府省のホームページに掲載していること。
@ 最新の業務及び財務等に関する資料
A 制度的又は実態的に独占となっている事務・事業を行っている法人については、当該事務・事業の内容及び根拠法令名
B 補助金等の交付を受けている法人については、当該補助金等の名称及び金額、交付対象事業の内容並びに補助金等全体の金額及び年間収入に対する割合
(4)  法人は、その役員に就いている退職公務員の状況を公表するとともに、その子会社又は一定規模以上の委託先の役員に就いている退職公務員及び当該法人の退職者の状況を把握し、公表するよう努めていること。
7. 基準の運用に当たって所管府省に求められる措置等
(1)  所管官庁は、その所管する法人について、その設立根拠法等に基づく指導監督を行う場合には、別に法令で定める場合を除き、本基準に基づき適時・適切な指導監督を徹底することを基本とし、毎年度その指導監督の状況及び結果を公表すること。また、総務省は、公表されたものをとりまとめて整理すること。
  ただし、特定の業種の事業者又は事業者団体に係る共益的事業を主たる事業とする法人で、制度的に独占となる事務・事業を行っておらず、かつ、経常的運営に要する経費がすべて自己収入で賄われているものについては、本基準にかかわらず、その特性を踏まえた適切な指導監督を行うことができるものとすること。
(2)  所管官庁は、その所管する法人の事務・事業について改善すべき点がないか毎年見直しを行い、その状況を公表すること。特に、法令の規定に基づく検査関連制度「については、事業者による自己確認への移行の可能性について毎年見直しを行うこと。
 また、所管官庁は、社会経済情勢の変化を踏まえ、当該法人の事務・事業の必要性、補助金等の政策的必要性、当該法人の設立の根拠となる特別の法律の必要性等について、法人の特性に応じ、行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成13年法律第86号)第3条に規定する政策評価の結果を活用しつつ、おおむね3〜5年を目途に定期的に全般的な見直しを行い、その結果に基づき、当該特別の法律の改廃を含め所要の措置を講ずるとともに、その状況を公表すること。
経過措置
(1)  特殊法人等改革基本法(平成13年法律第58号)別表に掲げる特殊法人等については、「特殊法人等整理合理化計画」(平成13年12月19日閣議決定)に基づく民間法人化が行われるまでの間は、本基準は適用しない。
(2)  所管官庁は、本基準に適合しない法人に対しては、当該法人に対する本基準の適用後原則として3年以内に本基準に適合するように指導すること。
(3)  本基準7−(2)に定める見直しについては、いずれも初回の見直しを平成17年度末までの集中改革期間(特殊法人等改革基本法第1条に規定するものをいう。)内に実施すること。



Copyright © 2000 Political Federation of JPA, All rights reserved.
日本弁理士政治連盟 〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-4-2,弁理士会館内
E-mail: info@benseiren.gr.jp
Tel: 03-3581-1917 Fax: 03-3581-1890
更新日: