本日、公表された政府司法制度改革審議会の「中間報告」は、国民がより利用し
やすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹の在り方とその機能の
充実強化の観点から、我が国21世紀の在るべき司法制度を実現させるため、司法
制度改革と基盤の整備に必要な基本的施策を国民に示したものであり高く評価でき
るものであります。
とりわけ、民事司法を国民の期待に応え得るものとするためにその充実・迅速化を
はかり、社会経済の複雑化、専門化、国際化が進む中で、知的財産権関係事件等
の専門的知見を要する事件への的確な対応を求め、その基本的方策が示されたこ
とは極めて重要であります。
ことに、「裁判外の紛争解決手段(ADR)の拡充・活性化のための基盤整備として
適切な担い手の確保」、「知的財産権関係事件への対応強化として工業所有権仲裁
センターの拡充・活性化」が明示されたことは、今後ますます増加することが予想され
る知的財産権に関する紛争事件に的確に対応するものであり、民事司法に対する国
民の期待に応えるもと考えます。
しかし、弁理士に特許等の侵害訴訟における訴訟代理権を付与することについては、
「各隣接法律専門職種を個別的にとらえて、それぞれの業務の内容、実情、専門性、
その固有の職務と法律事務との関連性に関する実情や実績等を実証的に踏まえた
上で、それによって担保される能力との関係で認めることを前向きに検討すべき」という
包括的な見解に留まっておりますので、今後さらに踏み込んだ議論がなされることと
期待します。その際弁理士に対する特許等の侵害訴訟における訴訟代理権の付与の
問題が、「弁護士の在り方」の枠内における「弁護士と隣接法律専門職種との関係」と
いう切り口からのみならず、「知的財産に関わる紛争の訴訟による適切で速やかな解決
の実現」という観点からも十分に審議されることを強く望みます。
当会としては、現在、研修制度の充実と工業所有権仲裁センターの強化に取り組んで
いるところであり、司法制度改革審議会の中間報告を受けて、より信頼性の高い能力担
保制度の確立と工業所有権仲裁センターの一層の強化に努める所存です。来年7月の
「最終報告」に弁理士に特許等の侵害訴訟における訴訟代理権を付与すること等の具体
的方策が盛り込まれ、それが早期に実現されることを強く望みます。