PF-JPA

知財2年を祝す
 

Kato Asamichi
日本弁理士政治連盟
筆頭副会長 加 藤 朝 道


知的財産基本法成立の2002年を知財0年とすれば、2003年は知財元年、今年は知財2年ということになる。弁理士制度をメルクマールとしても弁理士法2次改正施行の2003年がやはり知財元年となる。昨年は第1回能力担保研修・試験が粛々と行われ550余名の付記弁理士が誕生した。その資格の制限の問題はさておき、晴れて侵害訴訟で弁護士と共に代理人として活躍する弁理士が我が国知財の百余年の歴史上始めて誕生する。まずその活躍を祈念したい。
 現実の訴訟は勝か負かの厳しい世界である。特許等知的財産権の取得の過程が行政庁たる特許庁(審査官、審判官)との戦いであるのに対し、民事訴訟の場での戦いは正に知と知を戦わす場である。双方の当事者と代理人が知恵と実力をふりしぼって戦い抜く場である。そのような真剣勝負に勝ち抜く専門的実力と気概を備えた弁理士の輩出を期待したい。
 そのような実力での競争と戦いで研ぎすまされ知的創造力で裏打ちされた知的集団のみが、世界に互して我が国の21世紀を切り拓く力となりうる。知財戦略とは、そのような土俵を提供し、種をまき、育てるものでなくてはならない。
 知的財産高等裁判所が、独立の裁判所として創設されることが1月14日新聞報道された。知的財産基本法のもたらした成果である。
 戦後の我が国の三権分立の中で聖域とされていた司法、なかんずく最高裁を頂点とし東京高裁を筆頭とする8つの高等裁判所、その下位の地方裁判所からなる裁判所システムの単一ピラミッド階層構造に、始めて専門性を重視した職分管轄という改革の楔が打ち込まれた。この楔は小さな楔であるが、今後、着実にその機能を発揮させるよう育てて行かねばならない。
 今や、知財裁判は、特許権や著作権等知的財産(無体財産とも言う)の「国際性」により国際比較の対象となっており、一国の裁判制度、司法のあり方、ひいては国家のあり方そのものを国際的視野からあぶり出す。
 一つの発明がされると、その情報は直ちに全世界に伝わり、たちまち模倣品が各国で出現する。そこで各国に特許を出願し、それぞれ対応して特許を取得する必要がある。特許の出願から権利付与までの手続は、WTO体制の下で大方の面で国際的に調和されている。このような権利付与手続のシステムの基礎は1883年パリ同盟条約に始まり、発明その他の工業所有権を世界各国で有効に保護する仕組みとして確立されて来た。即ち、特許や商標の工業所有権は、その法制化の当初から、パリ条約等によってその国際性−内外人平等に各国で保護されること−の重要性が認識されてきた。弁理士には、当然そのことに深い理解と実務上の習熟が求められ、国際的交流と提携がその業務上、不可欠のものとして位置付けられて来た。WTOの世界では、さらに国際的な模倣の防止という観点から、弁理士の司法面での役割が重視される。
 かかる知的財産権とその保護のあり方の国際的性格にも拘わらず、司法の世界では、司法の国際競争力という視点が、長らく忘却されてきた。まさに、「井の中の蛙」が我が国知財裁判の歴史的伝統であった。
 今や、WTO世界単一市場の21世紀において、このような閉塞的な司法システムは、我が国の産業の国際競争力の発展の桎梏である。即ち、裁判制度そのものも国際競争力を持たねばWTO世界に生き残ることはできない。
 その意味で、独立した知的財産高等裁判所の創設は、国際競争力ある司法への礎石と銘記されるべきものであり、知財戦略のシンボルそのものである。
 弁理士は、そこでさらに活躍の場を拡充発展させることが国民のユーザ・産業界から期待されている。一層高度な専門性を磨き、訴訟に耐える権利を日本のみならず世界中で獲得するとともに、自ら訴訟の代理にも耐えうる実力を錬成すること、そしてそのための環境の整備に努めること、これが、知財2年に課された課題である。弁理士には、そのための人材の中核として、応分の貢献が期待されている。この負託に応えるべく、会員は日本弁理士政治連盟に結集し、日本弁理士会と共に、力を一にして邁進しようではありませんか。

以上

この記事は弁政連フォーラム第134号(平成16年1月25日)に掲載したのものです。
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