PF-JPA
就 任 挨 拶

Kato Asamichi
日本弁理士政治連盟
会長 加 藤 朝 道

 21世紀の日本の知財を支える夢のある弁理士制度を!
 皆さん今日は。去る5月27日の当連盟総会で役員交代を受け、引続く理事会にて16名の副会長と共に新しく会長に選ばれました。新会長選出に際して日本弁理士会佐藤辰彦会長よりの推挙を賜ったことは、重く承っております。
さて、就任の挨拶に回る間もなく弁理士に関連する2つの法案の審議が国会で始まり、与野党国会議員への説明に忙殺されました。
 先ず、「商標法の一部を改正する法律案」(地域団体商標制度の導入)が成立に至り、もう一つの「不正競争防止法等の一部を改正する法立案」(弁理士法改正を束ね法として含む)は、6月8日及び16日衆参両院経済産業委員会で夫々附帯決議を付して可決されました。その最終項では「特定不正競争」に関し弁理士の技術的性格及び弁理士制度の趣旨に鑑み、業務範囲の拡大について検討することが謳われました。
 これは、これから来年度にかけて予定される弁理士制度の見直しについて、国会決議をもって具体的方向性が示されたものであります。即ち、これは弁理士制度改正へ向けての政治主導の時代を象徴するものです。
 知的財産基本法による国家戦略としての明確な位置付けから本年4月1日知的財産高等裁判所の創設と進展し、いよいよ知的財産戦略はその具体的展開が期待される時代となりました。
 一方、目を海外へ向けると自由貿易体制WTOへ加盟した中国を始めとするアジア諸国の急激な産業化と国際市場化が進み、我が国の中国・アジアとの貿易は米国をも凌ぐようになりこの趨勢は、今後さらに強化するものと想定されます。欧州ではEUの拡大が進み、巨大な単一市場への歴史的動きは、もはや止めることはできないでしょう。自由貿易の世界における基本ルールは、知的財産の保護であり、知的財産保護制度の国際的調和です。米国においても先願主義への転換を始め国際調和を目指す特許制度の大改革が法案として提出される運びとなっています。
 このような中で、我が国の国際的競争力をどのように維持するか、これは一国の存亡をかけた21世紀的課題であります。そのためには何よりも知的創造立国を実現しかつ知的財産制度を世界一の競争力を担保しうるものに改革することが肝要であります。
 知的財産制度の活用は、企業にとっても既に20世紀後半以来日本国内での競争に留まらず、世界との競争の域にあります。これからその傾向は一層強くなります。弁理士は知的創造サイクルの中で創造から権利化・活用まで一貫してサポートする役割を与えられております。創造と権利化しかも国際的な権利化は活用の前提です。
 現在、少なくとも我が国の弁理士制度に関する限り、その国際競争力は対抗すべき米欧諸外国の先進制度に比し、特に質的になお抜本的強化策を必要とする状態にあります。これこそが、現在の日本が知財国家戦略の要として、重視すべき問題であると考えます。
 80年ぶりの平成12年弁理士法1次改正、同14年2次改正によって弁理士制度は、その一定の業務範囲の拡大(著作権の契約代理、特性不正競争防止法等への部分的拡大)及び司法面での活動の範囲の部分的拡充(弁護士との共同による侵害訴訟代理のためのいわゆる「付記」弁理士制度の導入)が果たされると共に、新弁理士試験制度により大量の新合格者が実現しました(この3年間で約1600名の増加)。しかしこれは、弁理士の質的充実なくしては知的創造サイクルへの貢献という観点から見ると我が国の国際競争力の強化には程遠いものであります。質、即ち必要な業務範囲での実務能力を備えた弁理士を多数育成すること、これが知財戦略の中心課題です。
 自民党弁理士制度推進議連(中川秀直会長)の決議はその意味で重要な指針を示しています。即ち、「技術と法律の素養をもった知財専門家」としての弁理士の特質を踏まえて、質的な担保を行うため、弁理士国家試験制度を見直し、試験制度とリンクさせて、弁理士登録前研修制度も検討する、としています(5月23日決議第5項)。その意義は、発明等知的財産の掘り起こしから権利化・活用までを一貫してサポートし、紛争解決も視野に入れた実務能力を備えた弁理士の育成のための新しい試験・研修制度を構築することにあると考えます。
 このような重い課題を前にして、日本弁理士政治連盟は日本の国の進むべき方向を先取りして中長期的な視点に立って日本弁理士会の活動を政治の面でバックアップして行くべきであると考えております。そのため私は古谷史旺、渡辺望稔、森哲也と続いた歴代会長により開拓された弁政連の政治との係わりの歴史を引き継ぎ、森哲也最高顧問、古谷、渡辺常任顧問の助力を得て正副会長の力をあわせ発展させることを念願しております。会員諸兄の格別のご指導ご協力をお願いして会長就任の挨拶といたします。
 夢のある弁理士制度で21世紀の日本を支えよう。


この記事は弁政連フォーラム第151号(平成17年6月25日)に掲載したのものです。
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