PF-JPA
年頭に想う



日本弁理士政治連盟
会長 加 藤 朝 道

 明けましておめでとうございます。

 新年に当たり一言ご挨拶を申し上げます。
 昨年5月の総会で会長に推挙されて以来半年が過ぎました。
 昨年4月1日知的財産高等裁判所が発足、民訴法改正や特許審査迅速化法が施行されると共に、商標法改正(地域ブランド:本年4月1日施行)及び不正競争防止法の改正(ADRでの著作権代理等)の成立等弁理士を巡る制度面での環境には、大きな進展がありました。
 一方、知的財産を廻る政治環境には急激な進展がありました。8月の衆議院解散、9月の総選挙では郵政民営化一本に的を絞り、「改革を止めるな」で突進した小泉自民党の圧勝となりました。10月には自民党立党50周年大会で新憲法草案が採択され、その第29条に知的財産権の保護が明記されました。その過程で当連盟は常に知的創造立国、国のかたちの中心に知的財産権を据えるべきことを訴えて参りました。
2005年は憲法改正論上、知的財産権の第一年
 省みるにまさに昨年は我が国知的財産制度の歴史の中で画期的な第一歩ともいうべき年であったと思います。
 当連盟は創立30周年記念式典で「知的財産の創造・保護・活用を憲法に!」を掲げ、次いで、森哲也前会長は昨年2月の参議院の憲法調査会で公述人として選ばれ知的財産権の保護を憲法に明記することを訴えました。このような努力の結果、民主党の憲法提言にも同旨の方向性が打ち出されました。
 今や知的財産権は日陰の権利ではありません。今まで、知的財産権というと、特許など国民には何か難しい一部の専門家のものと考えられており、知財を専門にする法曹・学者の皆さんですら、知的財産法は民法の法体系の極く片隅の特別法として位置付ける自縛的思考に陥っていたように思われます。
 それは大きな誤りです。歴史的に見ても、明治32年(1899年)民法典の整備と同時期に特許法と商標法が「パリ同盟条約」への加盟と同時に成立し、弁理士制度も同時に始まっています。平成11年(1999年)7月1日に弁理士制度100周年記念を迎えたことを想起下さい。特許の保護は、明治開国以来の懸案であった治外法権廃止の条件として欧米列強から要求されたものであり、まさに我が国の近代国家としての制度設計の中核をなすものでした。
 第2次大戦の完敗から60年、これまで追いつけ追い越せで走ってきた日本は、中国等の後続発展国の台頭に直面し最近遅まきながら知的創造立国と知的財産権の保護の戦略的重要性に気付き、小泉首相により、知的財産を国家戦略とすることが謳われ、知的財産基本法を経て現在に至っております。
 今や、コンテンツ産業は、携帯通信の発展と共に巨大なマーケットを世界的に形成する時代となり、ハードとソフトとの融合、既存の規制に守られた放送システムと自由なネットワークの融合、国際通信網を通しての国境のメルトダウンというIT時代に突入しています。この勢いはもはや止まる所を知りません。また、最近の石油価格の高騰及び急速な気候変動は、エネルギー問題の解決を人類的な課題として提起しています。
 我が国がこのような21世紀に人口減少に直面しつつ豊かな国として発展し続けるためには、知的創造立国、知財立国こそが唯一の拠り所です。
 まさに、「武」をもって争うのではなく、「智」をもって活きるのが、我が国の21世紀の「国のかたち」であるべきであります。
 そのための中核になるべき人材こそが弁理士であります。
 かくて、弁理士制度の改革は、単に「一つの士業の制度の改革」という狭い視野でとらえられるべきものではなく、まさに21世紀の我が国の活きるべき道を拓く人材の育成に関るものであります。
 少し誇張しすぎと思われる人もあるかも知れませんが、真実、技術と法律の素養を備え国際的競争力をもった知財専門家としての有能な弁理士をどれだけ育成するかに、21世紀の日本の命運がかかっている、と言っても過言ではありません。
今年は夢のある弁理士制度へ向かっての第一年
 新年早々、弁理士制度改革への議論が始動しています。
 夢のある弁理士制度によって、夢のある日本の将来を築くこと、これこそが、年頭にあたり、弁理士がこぞって掲げるべき目標であり、実現すべき夢であると思います。
 皆様のご健勝を祈りつつ。

この記事は弁政連フォーラム第158号(平成18年1月25日)に掲載したのものです。
Copyright &;copy 2000 Political Federation of JPA, All rights reserved.
日本弁理士政治連盟 〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-4-2,弁理士会館内
E-mail: info@benseiren.gr.jp
Tel: 03-3581-1917 Fax: 03-3581-1890
更新日: