PF-JPA
朝日新聞「私の視点」
生越論文「弁護士らの報酬に透明性を」について(声明)



日本弁理士政治連盟
会長 加 藤 朝 道

 7月27日付け朝日新聞の朝刊「私の視点」において、生越由美東京理科大大学院教授が「弁護士らの報酬に透明性を」というタイトルで、弁護士や弁理士の報酬が不透明であるとの苦言を述べている。事例として、予め説明がなかった成功報酬を弁護士から請求されたことへの中小企業の社長の不満や、弁理士から実費数千円のコピー代が10万円も請求されたとか、地域団体商標の出願が予定の3倍もかかったとか、産学連携での明細書の作成費用として、発明の数が多いほど弁理士費用は高くなり、弁理士は大学に気づかれないよう、発明の数を水増ししていたとかが報告されている。
 弁理士、弁護士について報酬規定が撤廃され、他の「モノサシ」がない結果、報酬の相場は予想し難い「時価」になった。そして、弁護士や弁理士にも報酬の説明について医者のインフォームドコンセントと同様の仕組みを作るべきではないか、と提言されている。
 しかし、生越教授の報告からは、少なくとも弁理士の実務と一般的な依頼者とのやりとりの実態の認識が希薄なようであり、また当事者間でどのような経緯があったかの事実関係の把握が明確でなく、しかも、例外的事例を一般化し弁護士や弁理士の多くが不正請求を行っているかの如き誤解を与えかねない述べ方となっているのはまことに遺憾である。
 例えば、「水増し論」については、発明者の提案に基づき、適正な権利の確保のためには一つのクレームでは足りず、多面的かつ多段的に複数のクレームとして展開して特許請求の範囲を作成し、これを依頼者と合意して出願にこぎつけるということが、弁理士なら当然行っている仕事の進め方である。その他の事例についても、何らかの理解不足が伺われるが、そうした苦情を予防するためには予め十分な説明に努める必要があろう。
 弁理士の報酬は、適正かつ妥当であるべきことは、当然の理であり、日本弁理士会としては、さらに説明義務の明確化なども含め会則上で明確化を図ることを検討している。即ち、「市場との合意」により適正かつ妥当な報酬が形成されるべきである、という市場規制の合理性の観点に立って、弁理士報酬指針の透明化に努める所存である。
以上

この記事は弁政連フォーラム第164号(平成18年8月25日)に掲載したのものです。
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