PF-JPA

今月のトピックス
   
1. 世界に劣らない弁理士制度の構築を
2. 規制改革原理主義からの訣別を

1.   世界に劣らない弁理士制度の構築を
 参構審弁理士制度小委員会では、「知財戦略推進のために弁理士制度をどう改革するか」ではなく、「試験科目の追加や登録前義務研修は参入障壁になるからできない」という否定的議論がなお、根強くある。
 弁理士制度が世界に劣らない競争力を担保するものでなければ、知財立国は絵に描いたもちである。
 世界に目を向けると、ドイツでは2000年から従来の義務研修が強化され、ロースクールの指定コース修了(2年間のe−ラーニング)が追加されて理工系大卒後合計3年の実務・研修が受験資格とされ、英国では、1次・2次の論文テストを最低2年(通例3〜4年)かけて段階的に合格する方式をとっている。また、独、英、米いずれも理工系大卒には、理工系科目のテストは課していない。韓国でも、実務研修を登録前に義務付けている。
 従って、国際比較すると弁理士には技術的素養と登録前の実務研修は当然であり、また選択試験には、行政書士など不合理な免除があり、理工系大卒でも免除は修士以上に限られるなど、免除の見直しが必要である。同時に法律科目(特に民訴法)の必須化も不可欠である。これは、弁理士業務の司法の場での重要性の増大に伴うものであり、世界的な傾向である。
 その上で、段階的合格制度を導入して、受験者の負担を時間的に分散すれば、「参入障壁」などと言われない適切な試験制度になる。これに、登録前実務研修を義務化すれば名実共に学識と実務能力を備えた新合格者が登録される。
 これにより、国際競争力をもった弁理士が輩出できる。


2.  規制改革原理主義からの訣別を
 規制改革・民間開放推進会議では、規制改革原理主義が支配的である。国家資格に関して、強制加入制度や業務独占の廃止とか、専門資格間の「垣根を低くする論」などの議論が依然として根強くある。
 粉飾決算への公認会計士の関与や、構造計算偽装やそれをチェックできない公認検査機関の検査能力の欠如などは、国家資格制度の本質を軽視した「放任主義」ないし、「自由競争主義」の欠陥が露呈したものである。資格制度を緩和して誰でも参入できるようにし、「事後チェック形社会」として、問題が生ずれば司法で解決すればよいというのが、規制改革原理主義者の論法である。
 しかし、元来、国家資格とは、国民が安心してサービスを受けられること、即ち問題が生じないようにすることが本質的機能である。従って、現在求められているのは、「質の制度的担保の強化」である。即ち、合理的な制度は一層強化して国民の付託に応えるべきである。
 規制改革・民間開放会議は来年3月をもって改組すべし、との意向が示された(9月15日安倍官房長官、9月16日日経新聞記事)。「行き過ぎた規制改革原理主義」からの訣別が、その基本に据えられることが切望される。

(弁政連会長 加藤朝道)

この記事は弁政連フォーラム第165号(平成18年9月25日)に掲載したのものです。
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