PF-JPA
ドイツ弁理士制度との
国際比較について



日本弁理士政治連盟
会長 加 藤 朝 道

  ドイツ弁理士法の概要を紹介する。その品格の高さ、業務範囲・実務研修の充実等、我が国弁理士制度の改革に参考にすべき点が多い。

§1 司法におけるドイツ弁理士の位置は、「司法における独立の機関」とされ弁護士法と全く同様の規定ぶりである。
§3(2)1号は、知的財産権(我が国知的財産基本法第2条の定義に相当)の取得、維持、攻撃及び防御について、他人に助言し、他人を第3者に対して代理するという包括的規定であり、国及び官庁の制限は規定されていない。
§3(2)2号は、ドイツ特許庁及び特許裁判所における代理を、3号は、連邦最高裁判所での代理、4号は連邦品種局での代理を、夫々規定している。
§3(3)1号は、知財権関連事件の助言・代理、2号意匠についての区裁判所での代理、3号で仲裁等の代理を規定している。
§3(4)は、国民が弁理士から助言・代理を受ける権利を規定。
§3(5)で弁護士業務の助言・代理の権限は、影響されないと規定。
第2部第1節§5〜§12に試験・教育訓練(Ausbildung)について規定しており、理工系大卒レベルの技術的能力、事前の教育訓練(弁理士等の許で26ヶ月、特許裁判所6ヶ月、特許庁2ヶ月、計34ヶ月)及び指定法律科目の修了が、弁理士試験の受験資格となっている。

 国際競争力の観点から、弁理士制度の国際比較を行い、見劣りのしない質的レベルを確保することは、知財立国の至上命令である。
 また、我が国の産業の国際競争力強化のため、弁理士の国際対応能力を強化することが不可欠であり、国際関連業務を弁理士の業務として明記することに併せてその基盤をなす条約の論文科目の復活は、当然なすべきことである。

 なお、ドイツと比較すると、日本の場合、民訴や契約法など、法律面が論文試験の選択科目にしか入っていないこと、その反面で理工系の選択科目免除が理工系修士以上に限られること(ドイツでは理工系大卒は、受験資格であって、追加の理工系科目について試験を課すことはしていない)など、日本の弁理士制度の問題点も浮かび上がって来る。

 国際比較すると、理系大卒は理系選択科目を免除とし、その代わり法律科目を必須とすることによって、理想的な弁理士制度となろう。訴訟面での弁理士の業務範囲の拡がり(審決取消訴訟から侵害訴訟での無効抗弁まで)に対応するさらなる試験・研修制度の改革が必要ということになる。

 なお、受験者の負担増軽減のためには、段階的(ないし科目毎)の合格方式をとることで対処できる。


ドイツ弁理士法(部分仮訳)

第1部 弁理士
§1 司法における弁理士の位置
 弁理士は、本法律により弁理士に認められた任務範囲において司法の独立した機関である。(unabh_ngiges Organ der Reschtspflege)

§2 弁理士の職業(Beruf)
(1) 弁理士は自由な職業を営むものとする。
(2) 弁理士の活動は、営利事業ではない。(kein Gewerbe)

§3 助言及び代理の権限(Recht zur Beratung und Vertretung)
(1) 弁理士は、本法律の規定に従い、独立の助言者であり代理人である。
(2) 弁理士は、下記の職業上の任務(berufliche Aufgage)を有する。
1.特許権、補完的保護証(発明者証)、実用新案権、意匠権、トポロジー保護(半導体回路配置)権、商標権若しくは商標法により保護される他の標章(工業所有権)又は品種保護権の取得、維持、防御及び攻撃の事件において、他人に助言し第三者に対し他人を代理すること;
2.特許庁及び特許裁判所の業務範囲に属する事件において、他人を特許庁及び特許裁判所において代理すること;
3.特許権若しくは補完的保護証の無効又は取消しの宣言に関する又は強制実施権の付与に関する手続において他人を連邦最高裁判所(BGH)において代理すること;
4.品種保護権の事件において他人を連邦品種局において代理すること。
(3) 弁理士はさらに以下の権限を有する。
1.工業所有権、データ処理プログラム、保護権とされていない発明若しくはその他技術を豊富化する業績(Leistung)、品種保護権若しくは植物栽培の分野で保護権とされていない植物育成を豊富化する業績に関連する問題が重要である事件、又はそのような問題に直接関連する法律問題が重要である事件において、他人に助言し第三者に対し他人を代理すること、
2.意匠権の出願及び保護期間の延長に対し、区裁判所で他人を代理すること;
3.第1号に記載された事件において、仲裁裁判所及び第2項に記載の政府当局以外の政府当局において、他人を代理すること;
(4) 何人も、その選んだ弁理士に法律の規定により助言及び代理をしてもらう権利を有する。
(5) 全ての法律事件における弁護士の助言及び代理の権限(連邦弁護士法§3)は、影響を受けない。

§4 裁判所への出頭(法廷陳述権)(以下略)
以上

この記事は弁政連フォーラム第166号(平成18年10月25日)に掲載したのものです。
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