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特許審査料2−3倍の値上げに、
断固反対する!
  

furuya.fumio
日本弁理士政治連盟
特別顧問 古 谷 史 旺


 平成14年8月30日付の日本経済新聞朝刊で、『特許審査料2−3倍に』、「件数絞り期間短縮」、特許庁方針、の記事が掲載された。
 記事の内容を拾い読めば、“審査料を引き上げるのは、日本の審査料が欧米より安いため、特許と認められないことを承知の上で書類だけを提出するような出願・審査請求が後を絶たないため。”と値上げの理由と欧米との料金比較が示されている。

1.もし、この記事が、特許庁の方針に相違ないものであるならば、我が国の知的財産制度を代理人の立場から支えていると自負する弁理士の多くは、私と同様に激しい憤りを覚えているに違いない。日本弁理士会は、特許審査料の値上げに対し、断固反対の意志を鮮明にすべきである。
 値上げの理由は、極めて短絡的であるばかりでなく、昨今の厳しい経済状況を全く理解していないし、示された料金比較も正確ではない。

2.我が国の産業経済は、デフレスパイラルに陥り、もがき苦しみ、国際競争力も急激に低下しているのが実態である。
 そのような中にあって、企業はどん底から這い上がる活路を求め、有効特許の取得と活用に必死になっている。
 その為の予算も、ギリギリの中で捻出しており、記事にあるような“特許と認められないことを承知の上で書類だけを提出するような出願・審査請求”をする余裕は、既にない。

3.今は、低迷する我が国の経済を抜本的に立て直すため、知的財産の重要性を再認識し、プロパテントへ向けた舵を大きく切り始めた矢先ではないか。
 プロパテント政策の牽引役を担うべき特許庁が、“迅速かつ的確な特許審査・審判”を実現することだけに目を奪われ、他の諸施策を講じ、その成果を確認することなく、短絡的な出願抑制に走って良いのか、と申し上げたい。
 特許庁が行おうとしている“特許審査料2−3倍の値上げ”は、プロパテント政策に対し、アクセルではなく、強烈なブレーキを踏み込むことになる。

4.『知的財産戦略大綱』には、「知的財産創造のインセンティブを確保するために、その適切な保護は不可欠である。そのため、制度そのものや、その行政機関や裁判所における運用について、使いやすく、利用者から信頼される専門性・安定性を備えたものとしなければならない。行政機関や裁判所は、知的財産立国を支えるサービス提供者としての認識を深める必要がある。」(第9頁24−27行)との記述を、今一度思い起こして頂きたい。

5.よもやこの時期に、特許庁が“特許審査料2−3倍の値上げ”を実施するとは思えないが、もし、この新聞記事の内容が真実であるならば、敢えて繰り返し言うが、日本弁理士会は、断固反対の意志を鮮明にすべきである。また、如何なる妥協もしてはならない。


  

この記事は弁政連フォーラム第118号(平成14年9月25日)に掲載したのものです。
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