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外国人登録原票記載事項証明書の
職務上請求権について
  

furuya.fumio
日本弁理士政治連盟
最高顧問 古 谷 史 旺


 
 外国人登録原票記載事項証明書とは、日本人の戸籍謄本や住民票の写しに相当するもので、戸籍謄本や住民票であれば、弁理士には職務上請求権が認められ、他人の戸籍謄本や住民票であっても、事由を明らかにせず請求することができる(戸籍法施行規則第11条、住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票の写し等の交付に関する省令等々)。

 ところが、外国人登録法第4条の3では、外国人登録原票記載事項証明書の職務上請求権を有するのは、弁護士その他政令で定める者に限られ、外国人登録法施行令第2条では、弁護士以外で請求できる者は、簡裁訴訟代理業務を行う司法書士のみとされている。外国人登録原票記載事項証明書の職務上請求権を必要とするのは、何も訴訟手続の場面だけに限られないのに、何故、簡裁訴訟代理業務を行う司法書士に限定したのか、甚だ理解に苦しむところである。

 私が聞いた裏事情によれば、昨年か一昨年に外国人登録法施行令の見直しが行われた際、所轄官庁から隣接資格士業を司る各官庁に対し、その必要性についての打診が為されたとのことである。司法書士会は、何故か「簡裁訴訟代理業務を行う司法書士」だけで良いとの回答をされたようである。一方、特許庁にどのような打診があり、どのように回答されたかは知る由もないが、すべての弁理士に影響が及ぶ職務上請求権に関することを、特許庁の一存で「不要」と回答されていないことを祈るばかりである。

 特許庁の諸手続は簡素化され、国籍確認のための証明書を出さなければならない機会は少ないかも知れないが、皆無ではない。
 現に、特許法施行規則第7条には、「特許庁長官は、外国人の手続について必要があると認めるときは、次に掲げる書面の提出を命ずることができる。」と記載され、「国籍証明書」が一例として列記されている。
 また、特許庁に提出しなくても、実施契約や売買契約等の時に、当事者を確認するための手段として「戸籍謄本」を求めたり、「国籍」を確認することは、極めて当然に想定されることである。

 それよりも何よりも、日本人の戸籍謄本や住民票の取得に対し認められる職務上請求権が、外国人登録原票記載事項証明書の取得に対しては認められない、とする合理的理由は全くない。過去の経緯はどうあれ、特許庁と弁理士会は、所轄官庁に対し、「すべての弁理士に外国人登録原票記載事項証明書の職務上請求権を付与すべし」との改正を求め、積極的に行動を起こすべきである。
以 上



【関係する法令の抜粋】
○戸籍法施行規則
〔事由を明らかにせず戸籍謄本等の請求できる場合〕
第十一条 戸籍法第十条第二項の法務省令で定める場合は、次の各号に掲げる場合とする。
 一、二(略)
 三 弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、  海事代理士又は行政書士が職務上請求する場合
 四(略)

〔除かれた戸籍の謄本等の交付の請求のできる場合〕
第十一条の三 戸籍法第十二条の二第一項後段の法務省令で定める者は、次の各号に掲げる者とする。
 一(略)
 二 司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士  又は行政書士
2 戸籍法第十二条の二第一項後段に規定する者の請求は、職務上必要とする場 合に限られるものとする。


○戸籍の附票の写しの交付に関する省令
〔請求事由等を明らかにすることを要しない場合〕
第二条 法第二十条第二項において準用する法第十二条第三項に規定する総務省 令・法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一、二(略)
 三 弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、  海事代理士又は行政書士がその資格、職務上の請求である旨及び前条に掲げ  る事項を明らかにして請求する場合
四(略)


○住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票の写し等の交付に関する省令
〔請求事由等を明らかにすることを要しない場合〕
第三条 法第十一条第二項及び法第十二条第三項に規定する総務省令で定める場 合は、次に掲げる場合とする。
一、二(略)
 三 弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、  海事代理士又は行政書士がその資格、職務上の請求である旨及び第一条各号  又は前条各号に掲げる事項を明らかにして請求する場合
四(略)


○外国人登録法
(登録原票の開示等)
第四条の三 市町村の長は、次項から第五項までの規定又は他の法律の規定に基 づく請求があった場合を除き、登録原票を開示してはならない。
2〜4(略)
5 弁護士その他政令で定める者は、法律の定める事務又は業務の遂行のため登 録原票の記載を利用する必要があると認める場合においては、市町村の長に対 し、登録原票記載事項証明書の交付を請求することができる。ただし、登録原 票の記載のうち、第四条第一項第三号から第七号まで及び第十五号から第十七 号までに掲げる次項以外のものについては、それらの開示を特に必要とする場 合に限る。
6(略)


○外国人登録法施行令
(登録原票記載事項証明書の交付を請求できる者)
第二条 法第四条の三第五項に規定する政令で定める者は、別表に掲げる法人並びに司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)第三条第一項第六号及び第七号に規定する業務に従事する場合における同条第二項に規定する司法書士とする。

別表(掲載略)


  

この記事は弁政連フォーラム第140号(平成16年7月25日)に掲載したのものです。
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