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知的財産の創造・保護・活用を憲法に!

  

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日本弁理士政治連盟
最高顧問 古 谷 史 旺
  
1.日本弁理士会は、今から遡ること43年前の昭和37年10月に、内閣憲法調査会に対し、『発明条項を設ける憲法改正に関する建議書』を提出し、憲法中に「発明考案」に関する特別の条項を設けるべきことを訴えている。
  当時の我が国は、憲法を改正すべしとの機運は乏しく、80%以上の国民は護憲一色であった。
  そのような中にあって、上記『建議書』を提出するに至った正確な経緯は、今となっては知る由もないが、それにしても、随分と思い切ったことをされたものだと、その気骨に感じ入るばかりである。
  それに較べ、その後の弁理士会の不甲斐なさは目を覆うばかりで、残念でならない。
  弁理士会内に於ける発明に関する憲法改正委員会は、記録を見る限り、昭和43年を最後に廃止され、一度として復活することなく、今日に至っている。

2.平成9年、時の内閣総理大臣は橋本龍太郎氏であった。弁理士会会長は田中正治氏。橋本内閣の行財政改革の大合唱が津波の如くに押し寄せ、特許庁までを巻き込み、危なく「独立行政法人化」されるところであった。
  弁理士会は、勿論大反対ではあったが、ただ反対のむしろ旗を振り回すのではなく、特許庁を中核に据えた『知的財産権庁』構想をブチ上げ、100名以上の国会議員に訴えて歩いた。
  それは、当時の文化庁、農林省、科学技術庁、特許庁といった各省庁でバラバラに扱っている著作権、種苗法に基づく権利、特許権等の付与、科学技術の振興等を一ヶ所に纏め、統一した政策を行い、実行することが我が国の産業強化に繋がると信じたからであった。また、翌年には、『特許裁判所』の創設を訴えることもした。

3.今は亡き梶山静六衆議院議員、当時の通産大臣 与謝野 馨衆議院議員、保岡興治衆議院議員、甘利 明衆議院議員を初めとする多くの自由民主党の国会議員の方々のご理解とご協力を得て、『知的財産制度に関する議員連盟』を立ち上げて頂き、政治的理解が一層深められた。
  与野党を問わず多くの国会議員の方々、官界、財界の日本の現状を憂う心のある方々が『司法制度改革』、『知的財産制度改革』を牽引して頂いた。
  その結果、小泉内閣は、知的財産制度の強化を国家戦略と位置づけ、『知的財産基本法』を成立させた。さらに、裁判所法を改正し、『知的財産高等裁判所』を発足させるに至った。
  弁理士法も、平成12年に実に80年ぶりの大改正が行われ、業務範囲が拡大される一方で、弁理士の社会的責任の重さも示された。続く平成13年には、永年の願いであった『侵害訴訟代人』としての地位が、一定の条件は付けられてしまったが、認められた。
  中川秀直衆議院議員を会長に頂く『弁理士制度推進議連』も発足し、裁判外紛争処理(ADR)の代理権の獲得に向けて極めて大きなお力添えを頂いた。

4.このように、日本弁理士政治連盟は、常に我が国の“さきがけ”となることを志し、その結果が弁理士制度の更なる改革に繋がると信じて活動してきた。
  知的財産を国家戦略と位置づけるからには、日本国憲法に「知的財産の創造・保護・活用」を明記し、国民のひとり一人がハッキリとした意識を持つことが必要である。
  本人の口からは面はゆくて言える筈がないから、敢えて私から言わせて頂くが、昭和43年以降、『知的財産の創造・保護・活用を憲法に!』を言い出した弁理士は、後にも先にも森 哲也現会長ただ一人である。
  彼は強引にも日本弁理士政治連盟で機関決定し、民間憲法臨調で堂々の論陣を張り、遂には自由民主党の『憲法改正草案大綱』に盛り込ませてしまった。勿論、その陰には憲法調査会会長の保岡興治衆議院議員の深いご理解があってのことは言うまでもない。
  驚くべきは、平成16年5月3日付の読売新聞社の『憲法改正試案』でも、知的財産制度の整備が条文化されて盛り込まれていることだ。

5.日本弁理士政治連盟は、平成17年2月8日(火)キャピトル東急ホテルで行われた30周年記念式典・祝賀会において、『知的財産の創造・保護・活用を憲法に!』をスローガンに掲げさせて頂いた。
  我々は世界に冠たる弁理士制度の構築を夢みており、そのための活動を疎かにするつもりはないが、この国のあるべき姿を憲法に明記することは、知的財産で国を興す究極の意志の表明であり、極めて重要なことと考えている。
  知的財産の創造・保護・活用が『憲法』に盛り込まれたならば、我々弁理士が知的財産制度の中心的担い手であり続ける限り、世界に冠たる弁理士制度の構築は、夢ではなく現実のものとなる。

 
以上

この記事は弁政連フォーラム第147号(平成17年2月25日)に掲載したのものです。
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