PF-JPA


弁理士制度推進議員連盟の
臨時総会が開催される!
〈弁理士試験・研修制度の改正の方向等を確認〉

  

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日本弁理士政治連盟
最高顧問 古 谷 史 旺
日 時  平成17年11月29日(火)
     午後4時〜5時
場 所  衆議院第二議員会館第4会議室
出席者  自由民主党 衆議院議員、参議院議員、関係議員秘書
     特許庁 野澤総務部長、豊永総務課長
     内閣官房 知的財産戦略推進事務局 杉田参事官    
     日本弁理士会 正副会長
     日本弁理士政治連盟 正副会長、顧問
議 題  1)特許特別会計について
     2)将来の弁理士制度の見直しの方向性について
     3)弁理士の労働者派遣について
   *中川秀直当議連会長は公務のため欠席、船田 元議連副会長が会長代行を務め挨拶された。司会は
    山本 拓事務局長が務められた。
   *議事に先立ち、衆議院議員選挙の結果を踏まえた「役員の選任」(案)が諮られ、満場一致で承認さ
    れた。
  
1)議題中の「特許特別会計」と「弁理士の労働者派遣」について野澤特許庁総務部長が説明された。「特許特別会計」存続の必要性と併せて「特許審査の民営化・独立行政法人化」に対する問題点の指摘もあった。また、佐藤日本弁理士会会長と加藤日本弁理士政治連盟会長からも、同趣旨の説明と要望があった。これに対して出席議員の多くから「特許特別会計」を“一般財源化”することへの反対と、「特許審査の民営化・独立行政法人化」に反対する意見が出され、当議員連盟の意向とすることが確認された。

2)議題中の「将来の弁理士制度の見直しの方向性」について佐藤弁理士会会長と加藤弁政連会長が“弁理士法改正の方向性について”を説明し理解を求めた。これに対して出席議員の多くから賛同の意向が示され、「確認事項」(案)が満場一致で承認された。尚、有力議員から「単に“国に負担を求める”では賛同を得られない。工夫が必要。」との助言があった。

「確認事項」
(平成17年11月29日採択)

1.知的財産立国という国家戦略的視点に立って狭義の特許審査(特許を与えるべきか否かを判断する審査)は国が行うべきものであり、特許特別会計に関連して狭義の特許審査までを民間委託するべきではない。

2.特許の会計の独立採算性は維持する。

3.技術と法律の素養を備えた国際競争力ある知財専門家としての弁理士の特質を踏まえて、試験制度を充実すると共に、登録前研修の義務化を含む研修を強化した新しい弁理士試験研修制度の実現を図る。なお、量的拡大は質を十分に担保することを前提とすること。
  研修のために必要な費用は、国が負担する。

4.弁理士の労働者派遣特区事業の実施と制度運用に関しては、守秘及び利益相反行為防止の徹底措置、特に相談業務のうち個別事案に係るものの除外が徹底できるよう、具体的措置の策定について日本弁理士会と十分協議して結論を得ること。

5.産業財産権は、独占排他権であり、その創設には弁理士の専門性が必要であるので、この分野の専権は堅持する。

6.総合的な知的財産政策を永続的に展開するため、知的財産戦略本部等の恒久的機能について検討を行う。

〔感 謝〕
 自由民主党の弁理士制度議連が上記の『確認事項』を総会に諮られ、満場一致で承認されたことは、極めて高度な政治判断によるもので、その英断に敬意と感謝を申し上げたい。この『確認事項』を真摯に受け止め、関係各位の一層のご理解とご協力を、切にお願いする次第である。

〔補足説明と意見〕
1)特許庁の独立行政法人化の問題は、今から7年前に浮上した。その時は審判制度は準司法的機能であるから民営化には馴染まない、との元総理の有力意見に押されて収まった。次に浮上したのが審査の民営化である。これも排他独占権の付与は国が行うべし、で鎮火した。なのに、また火を噴いた。確かに審査の遅れは酷い。審査期間の3年短縮による影響もある。その他の要因もあるだろう。しかし、誰が考えても明らかなのは審査官の絶対量不足である。知的財産立国を目指すと言うなら、他の省庁の公務員を減らし特許庁に振り向ける、誠の政治を行って欲しい。
   全く理解できないのは、規制緩和の議論で常に登場する「登記」、「特許」、「免許」の横並び扱いだ。特許が排他独占権であること、知的財産に関する国家間の条約締結の責任があること等を度外視し、“申請されたものを順番に権利を与える”と単純に考えているとしか思えない。

2)この4年間だけで弁理士試験の合格者は2,000名に達している。これは全弁理士の1/3に相当する。合格基準を下げない限り、この異常を創出できない。粗製濫造で割を食うのは、弁理士の良し悪しの鑑識眼を持てない中小企業だ。
   量的拡大を未だに唱える関係者の言い分は、“全国には弁理士不在地域が未だある。数を増やして競争させれば、質の悪い者は淘汰される。やがて適正な数になる。選ぶ側にも責任がある。”と言った「競争原理と自己責任」論だ。“悪貨は良貨を駆逐する。”を知らないのであろうか。
   制度を利用する国民の側からすれば、国家試験の合格者である弁理士なら、一定の品質が保証されていると思うのは当然で、目利きは自分の責任で行えと言うに等しい「競争原理と自己責任」論は、こと資格試験制度に当て嵌める限り、無責任極まりない。政治は一部の学者の無責任な論理に翻弄されてはならない。

3)特許の仕事で言うならば、資格試験で学んだことの99%は、全く役に立たない。その意味では自動車の運転免許証と似ている。構造や法規が幾ら詳しくても自動車の運転はできない。弁理士の世界は“明細書を100件書いて漸く一人前”と言われている。明細書を全く書いたことのない弁理士は、試験に合格しても明細書は書けないし、権利に抵触するか否かの判断も期待できない。
   商標と意匠を除いて言えば、弁理士の仕事は“明細書から始まり明細書で終わる”と言っても過言ではない。ペーパードライバーに等しい弁理士を幾ら増やしても何の役にも立たない。試験と研修を組み合わせた新たな制度設計を早急に構築しなければ、知的財産制度の担い手であるべき弁理士制度から綻びが生じ、やがては知的財産制度ともども弁理士制度は崩壊するであろう。

4)日本弁理士会では、年間予算の相当部分を弁理士試験合格者の新人研修費と会員の継続研修費に充てている。700有余名の合格者を対象とする研修は、もはや物理的・経済的に限界である。会員の継続研修は別として、弁理士試験合格者の新人研修は、試験を行っている国が行うのは当然であろう。弁理士の仕事の特殊性を何ら考慮せず、試験を行えばそれで由とする考えは、この際キッパリと払拭して貰いたい。

5)“前門の虎、後門の狼”ではないが、平成18年度には法科大学院卒の司法試験合格者が大量に排出される。その相当数が弁理士の業界に入ってくることになろう。一方で、規制緩和の議論をバックに、何の専門性も担保されない隣接資格士業の団体が、意匠、商標を弁理士の専権から外せと要求している。
   産業財産権は、「登記」や「免許」と違い排他独占権であるから、第三者に与える影響は極めて大きい。それが故、専門性を有する弁理士の専権であることは至極当然である。断じて妥協してはならない。
 
6)いま、我々が真剣に考えるべきことは、弁理士の位置づけである。
   自民党の『確認事項』に示されるとおり、技術と法律の素養を備えた国際競争力ある知財専門家としての弁理士の特質を踏まえた制度設計である。その制度設計は、試験・研修で裏付けされていなければ意味がない。第三者を説得することはできない。
   加えて、登録前研修の義務化は、実践的弁理士を世に送り出すための当然の措置であり、何としてでも実現させなければならない。
以 上



この記事は弁政連フォーラム第157号(平成17年12月25日)に掲載したのものです。
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