PF-JPA


新年のご挨拶



  

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日本弁理士政治連盟
会長 古 谷 史 旺

 年頭に当たり、一言ご挨拶申し上げます。

(1)「知財立国」ではなく、「知財救国」を考えるとき!
 昨年の春先に起きたマグニチュード9の東北地方太平洋沖大地震、それによって引き起こされた大津波、スリーマイル島原発事故のレベル6を超え、チェルノブイリ原発事故のレベル7に匹敵する福島原発事故、9月に日本列島を縦断して大きな風水害の爪痕を残した台風15号、10月にはタイで起きた大洪水により日本企業が大打撃を受け、それに追い打ちをかけた異常な円高と、様々な大問題が勃発し、産業界のみでなく日本全体が壊滅的な被害を蒙りました。
 大変な窮状に直面している今日、日本を復興・再生させる術はあるのでしょうか?
 TPPに加入するのかしないのか、消費税を上げるのか上げないのか、そのようなことではなく、経済・産業を活性化させる大胆な改革を実行する以外に日本を救う術はない、と思います。
 バブル崩壊で不況のどん底で喘いでいた2001年に小泉内閣が誕生し、「知財立国」を標榜し、直ぐさま「知的財産戦略本部」を立ち上げ、様々な知財改革を断行して景気の浮揚を図り、日本のドロ船不況を克服させました。
 あれから10年の時を経て今日の窮状を救うには、「知財立国」の原点に立ち戻り、産・官・学、それに知財の中心的な担い手である日本弁理士会が一体となって、5年先、10年先を見据えた「知財立国」ではなく、「知財救国」の骨太なグランドデザインを描き、国を大きく動かさなければ、日本は救えません。日本弁理士政治連盟は、日本弁理士会を支えながら、我が国の復興・再生に身命を賭す覚悟で臨みます。

(2)日本弁理士政連の活動を振り返る!
 日本弁理士政治連盟の活動を振り返り、新たな気持で活動に繋げたいと思います。
 日本弁理士政治連盟(弁政連)は、昭和49年(1974)に弁理士会の斡旋決議(臨時総会)で設立され、38年を迎えます。その間、多くの先輩諸兄が弁政連の活動を支え、礎を築いて来られました。心から感謝を申し上げます。
1)弁政連の活動の中で特質すべき点を挙げてみれば、
 まず第一には、平成12年(2000)に80年ぶりで漕ぎ着けた弁理士法の大改正でありましょう。我々の業務が特許庁に対する出願手続・関連代理から、不正競争防止法や著作権法における一部代理まで範囲が拡大し、また、弁理士会の自治権の拡大も図られました。
 すなわち、会員の「指導、連絡」から、会員の「指導、連絡及び監督」する権限が課せられました。
 第二には、平成18年(2006)に行われた第2次の弁理士法改正で、裁判所に対する手続で「審決取消し訴訟」のみであった弁理士の代理権が「侵害訴訟(弁護士との共同出廷)」にまで拡大され、補佐人から訴訟代理人への道が開かれたことです。
 加えて、登録前義務研修・登録後の継続研修が制度化され、また、「輸入の差し止め」に対する代理の範囲が「輸出の差し止め」にまで拡大されたことです。
 第三には、懸案であった「外国出願代理」が初めて弁理士法に明記されたことです。
2)忘れてならない歴史的なことは、
 第一に、1998年の行・財政改革の一環から、特許庁が国の機関から独立行政法人(エイジェンシー)に移管する動きが起こったことです。我々日本弁理士政治連盟は総力を結集して、400名に及ぶ国会議員に対し反対の大運動を展開し、すんでのところで阻止に成功しました。
 もし、特許庁が独立行政法人(エイジェンシー)になっていたならば、我が国の「知財戦略」は間違いなく後退していたでありましょうし、弁理士そのものの資格も国家資格ではなくなっていたことでしょう。
 第二に、「知的財産高等裁判所」が創設されたことです。「知的財産高等裁判所」の創設に関しては、当時の政府与党であった自由民主党の司法制度調査会会長で、その後に法務大臣になられた保岡興治前衆議院議員、甘利 明衆議院議員(知的財産制度議員連盟会長)、中川秀直衆議院議員(弁理士制度推進議員連盟会長)らに対し、「知財戦略」の象徴的存在として「知的財産高等裁判所」の創設が必要と強く迫り、法務省・裁判所の反対する中、保岡前議員らの政治主導によって国会を通過させました。
3)既にお気づきのこととは思いますが、上記の事柄は、特許庁が自発的に法案を国会に提出してくれたことではなく、弁理士会と日本弁理士政治連盟が、それこそ連日のように数多くの国会議員に対し、これでもかこれでもかと強く働きかけて成し遂げた活動の成果そのものであります。その割には、弁政連の活動が正当に評価されていない悔しさ、悲しさを禁じ得ません。
4)本年度の活動は、毎月発行している「弁政連フォーラム」をお読み頂ければ、詳しくご理解頂けることですが、「外国法事務弁護士の法人化」阻止の運動が最も喫緊な問題でした。これは弁理士会の依頼により共闘したことですが、2年前に弁理士会の執行部から政治展開を依頼されました。紙面の都合もあり詳細な説明は出来ませんが、平成24年の通常国会に法案提出を目指す法務省と、真っ向からガチンコしました。
 我々の問題意識は、外国法事務弁護士と日本の弁護士との共同運営による法人化(いわゆるB法人)を認めることは、第一に、ビジネスを主体とする外国法事務弁護士により同法人が牛耳られ、日本の技術情報が流出することを加速させる懸念があること。第二に、日本特許庁は法人代理を認めており、外国法事務弁護士と日本の弁護士との共同運営による法人代理をチェック出来ないことから、自国法の法律事務しか扱えない外国法事務弁護士が、実質的に日本の法律を扱える道を開く懸念があること、の2点です。
 幸いなことに、関係各位のご努力により、いわゆるB法人(外国法事務弁護士と日本の弁護士との共同運営による法人化)の国会提出は断念する方向で解決できそうです。
5)残された最大の課題は、平成26年に予定される“弁理士法の改正”です。日本弁理士会が目指す改正項目は、既に昨年暮れの臨時総会で発表されていますが、これをどのようにして実現させるかは、全く不透明です。我々弁政連の活動は、弁理士会が必要とする政治活動に制約されており、現段階で口を差し挟むことは慎まなければなりませんが、何事も“先手必勝”です。後手に回った場合には何倍もの労力が必要です。
“とき既に遅し”とならないことを祈るばかりです。

この記事は弁政連フォーラム第227号(平成24年1月25日)に掲載したのものです。
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