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弁理士と政治

 
okuyama.hisao   
日本弁理士政治連盟
元会長 奥山 尚男 
 
 

 弁政連は、昭和49年11月の弁理士会臨時総会で、その設立を弁理士会が斡旋するという決議を経て、設立された。
 昭和60年3月の「弁理士業務の実態調査報告書」(野村総研に依頼したもの)によると、弁理士会に対するニーズについて、「弁理士の利益を守るための政治的な役割」を果たしてほしいと望む人が、第1位(50.1%)を占め、半数を上回った。
 この数字は、現在では、さらに上昇していると思われる。
 医師会、歯科医師会、弁護士会、公認会計士会、税理士会など、主要な自由業団体のすべてが政治連盟を結成している。これは、各団体が、弁政連と同じような必要性を感じたからだと思う。

国の政治における弁政連の立場
 これら自由業団体の政治連盟は、一体、国の政治の枠組の中で、どのような地位を占めているであろうか。
 われわれは、国民として参政権をもち、国政選挙で一票を投じ、議員を選ぶという形で政治に参加する。しかし、個人による政治への参加は、僅か数秒間の政治参加に過ぎない、とみる人もいる。
 日本の政治の現状をみると、日常的に政治参加しているのは、むしろ、市民団体、労働組合連合体、財界団体、その他各種の政治団体などではないのか。
 この点について、学者は、国民による参政権の行使は間接的、「制度的政治参加」であり、団体による参加は間接的、「非制度的参加」である、と分類している(政治学者、篠原一著"市民参加"より)。
 日本の政治は、現実には、議会制民主主義のもと、国民と団体による政治参加によって支えられている、とみてもよいのではないか。
 弁政連は、団体として政治に参加する形で、日本の政治の枠組の中にあると思う。

弁政連の活動範囲
 弁政連は、その規約において、日本弁理士会の方針に添ってその活動を行わなければならない、と規定されている。
 「日本弁理士会の方針」が理事会の意向を指すのか、総会の決議を指すのか、一般会員の多数の動向を指すのか必ずしも明らかでないが、日本弁理士会の方針に反して活動することはできない。
 しかし、弁政連は日本弁理士会が「設立する」という決議ではなく、設立を「斡旋する」という決議によって作られたこと、および、憲法第21条が、結社、表現の自由を保障していることを考えあわせると、弁政連は、ある程度自由な範囲内で、日本弁理士会会員の意向を汲みながら活動と発言をすることができ、またそうすべきではないかと思う。

政治とは何か
 弁政連が政治活動をするにあたって、「政治とは一体何か」を考えておく必要がある。
 後藤田正晴さん(元副総理)は、その著書「政治とは何か」の中で、次のように述べている。
 『政治は、私達の生活のほとんどの局面と深い関係がある。学問的にも、「政治」についての定義は一定していない。ある学者は「国家意思の決定と執行に参加するすべての公的組織の作用」と説く。また「政治は道徳である」として、「道徳」だけで指示不信を説明する人がいる。
私は、政治とは個人や集団や国家間に生ずる利害の衝突を調整することであると考えている。この調整を的確に行って紛争を解決に導き、新しい方向に踏み出させることが政治そのものなのではるまいか。』
 この「政治とは、個人や集団や国家間に生ずる利害の衝突を調整することをいう」との考えに、私は、実感として、賛意を表したい。

専門有識者団体の発言の重み
 日本弁理士会は、弁政連を生み出した。しかし、果して、弁政連は政治的に十分な成果をあげられるのか、という意見がある。資金のわずかな弁政連になにが出来るか、という声もある。資金の額でとらえれば、そのとおりである。
 しかし、工業所有権制度に関して灼く4,600名の専門有識者(弁理士)の発言は、国の政治に対して予想以上の重みを持っている。日本弁理士会会員は、この点に、もっと自信をもつべきであるまいか。
 いまだに、金で政治が動くという、次元の低いことが、往々にしてある。しかし、それとは無関係に、きわめて真面目に、国家、国民のために政治が行われていることもまた事実である。金を使うことが政治である、という考えは、全体をみた意見ではない。
 弁政連は、正論を押し進めるだけである。4,600名の意見は、政治的に大きな力を持つはずである。

組織の協会の必要性
 弁政連は原則加入政をとっている。現在の会員数は約3,600名。全弁理士会会員の約78%になっている。しかし、会費納入会員は、それを下まわる。
 民主主義のもとでは「数が力」という現実もある。組織をさらに強化することは急務である。
 弁政連は、誰のためでもない、弁理士のためにある。弁理士は、みなが、弁政連に加入し、会費を納入すべきだと思う。

おわりに
 知的財産権が、これほどグローバルに評価されている時代はない。司法制度は、大きな改革の流れの中にあり、弁理士制度は、最近、激変しつつある。
 そのなかで、国会、政党、司法関係団体などに活動を続けられている、渡辺弁政連会長、古谷最高顧問を含む執行部、および弁理士会会長、執行部の方々の活躍とその実績は、まさに、特筆すべきものがある。一人の会員として、感謝を申しあげたい。
 おわりに、痛感することは、日本弁理士会会員が政治参加への理解を示し、まとまって力を出すことが何よりも大切で、これが弁理士会の活動を成果あらしめる大きな要因であろう、ということである。

以 上


この記事は弁政連フォーラム第107号(平成13年10月25日)に掲載されたのものです。

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