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「現行法の新業務と今後の法改正」
−条項間の不整合解消へ向けて−

 
tamama.masami
日本弁理士政治連盟
会  員 玉真正美
 
 

1.現行弁理士法の「業務」規定
 長年の弁理士法改正運動の結果、平成12年に第1次法改正として成立した現行弁理士法では、業務につき第4条ないし第6条に規定されている。すなわち、旧来の対特許庁業務および対経産省業務を定める第4条第1項を別にすると、同条第2項第1号には税関業務が、また同条同項第2号には工業所有権に回路配置および不正競争を加えた範囲での仲裁業務が、同条第3項には工業所有権に回路配置および著作権等を加えた契約業務が新たに規定された。
 そして、第5条には回路配置および不競法を加えた補佐人業務が規定され、第6条には審決取消訴訟業務が従前通りの内容で規定された。
 これら各条項を横並びにしてみると、弁理士に対して与えられた業務範囲に関し、条項ごとに規定された事項が相違し、ちぐはぐ感がある。
 ここで述べることは、今までの経緯は兎も角として、このような現実を今後の課題としてその解消を図り、全体的に均衡の取れた弁理士法を実現するための議論を高めよう、という趣旨によるものである。
2.現行弁理士法における著作権の扱い
 著作権は、例を挙げれば、古くは応用美術と意匠との関連において、またキャラクターと商標との関連において、さらにコンピュータ・プログラムとソフトウェア発明との関連において、工業所有権に隣接し関連するものと認識されている。
 したがって、工業所有権の保護を考えるとき、著作権問題が付随することがままある。そのような場合に、まずは著作権の契約を結ぶとする。これは、第4条第3項に該当するから弁理士が扱える。もっとも、この条項は政令が出るまで暫くはお預け状態であるが。
 次に、著作権を巡る紛争が生じたとする。仲裁で解決しようとすると、第4条第2項第2号には著作権が含まれていないから、弁理士は代理人にも補佐人にもなれない。それでは、裁判ならどうか。第5条の補佐人規定には著作権が含まれていないから、やはり扱えない。簡単にいうと、弁理士は、近い将来においても、契約以外で著作権に関与することができないのである。
 現行弁理士法第4条の成立過程において、第2項第2号は仲裁であるから紛争性のあるものであり、第3項は契約であるから紛争性がない、と切り分けられた経緯があると仄聞する。そして、紛争性のない業務が現行弁理士法中に盛り込まれた、とも聞く。
 しかし、第4条第3項の規定に基く契約書には、紛争解決条項を設けることが一般化していることからも分るように、契約の代理には紛争性がないという見方は果たしてそうなのであろうか。
 他方、第4条第2項第2号に規定される仲裁では、工業所有権に回路配置、不競法が加えられはしたが、何故か著作権が含まれていない。
 著作権を排除することは、知的財産の保護という観点から見たときに、そこだけ穴が空いた状態となる。知的財産政策上、好ましくないというよりも不思議というべきではないのか。
3.現行弁理士法の条項間の規定不整合による不具合
 身近な例を採ると、次のような問題が出てくる。日本弁理士会が日弁連と共同運営する日本知的財産仲裁センターは、平成13年4月から業務範囲を著作権まで広げた。現行弁理士法に対応したものである。
 しかしながら、著作権の仲裁事件を弁理士が代理できないことは上述した通りである。補佐人にもなれない。調停であれば、紛争解決が和解契約の締結で終了する、と考えることにより第4条第3項にいう契約締結の代理として弁理士が扱える。
 裁判はと見れば、現行弁理士法第5条には著作権が規定されていないから、弁理士は著作権事件の補佐人にはなれない。この結果、著作権事件は弁理士だけでは対応できないから、依頼者は弁護士を併用する必要が生じる。そして、弁理士は、事件の対応策を考え、弁護士と打ち合わせをして措置を採ってもらうことになる。
4.第3次法改正で均衡の取れた弁理士法に!
 平成14年初頭の国会に掛かる予定の第2次法改正では、既に共同訴訟代理人問題に絞った運動を展開する方針が決定されており、著作権問題は第3次法改正へと先送りになったと聞く。
 そうであれば、その次に来るべき第3次法改正では、是非とも条項間不整合というべき仲裁条項および補佐人条項の著作権脱落を、あるべき姿に是正するよう努力する必要がある。
 弁理士は、工業所有権だけの世界から知的財産権の世界に広く関与するように変化を遂げることによって、依頼者の要望に一層適切に対応するように既に道標が示されたと思ってはいるが、実際に目的地に到達できるのはもう少々先のことらしい。
5.更なる課題も併せて解決を!
 このような状態になった原因は、簡単に纏めれば、隣接法律専門職種の制度作りにおける枠組み設定が今まで不明確だった、あるいは未だに不明確である、からではないのかという気がする。
 そして、この枠組み設定は、弁理士制度だけを論ずるのではなく司法制度全体の総合的な改革論議の中で是非とも取り上げられるべきである。これは、著作権問題よりも遥かに大きな課題である。しかし、きちんとした論議を経ることによって解決策が見出されるものと思う。

以 上

この記事は弁政連フォーラム第109号(平成13年12月25日)に掲載されたのものです。

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