PF-JPA




知的財産基本法の成立を祝す
 
mori.tetsuya
  
日本弁理士政治連盟
会長  森 哲也
 
 11月14日、衆議院本会議を知的財産基本法案が附帯決議をもって通過し参議院へ送付された。参議院では15日、本会議での趣旨説明に続き21日、26日と経済産業委員会で審議され直ちに本会議で成立する運びである。
 待望の知的財産基本法である。これは我が国の21世紀における知的財産の創造・保護・活用と国際対応及び人的基盤の整備を含めた戦略的取組みの法的基礎を、知的財産制度を我が国の諸制度の中核に据えることによって達成しようとするものであり、知的財産戦略大綱の趣旨に沿ったものである。知的創造立国こそ、まさに国家百年の大計である。
 
 第1条に目的、第2条に広汎な知的財産の定義を規定すると共に、以下基本理念として、国民経済の健全な発展、豊かな文化の創造、我が国産業の国際競争力強化と持続的発展を図るための知的財産に関する基本的施策を唱え、国、地方公共団体、大学、事業者等の「責務」を明確にし、続いて「基本的な施策」を定め、「知的財産基本法」の下で、具体的な目標と達成時期を定める「知的財産推進計画」を作成し、推進するための「知的財産戦略本部」を設置する、等の取り組み方を明示したものであり、第22条には人材育成について定めている。
 
 日本弁理士政治連盟は、知的財産基本法案の作成及びその成立に尽力された内閣官房の方々、そして熱心に審議された衆参両議院の諸先生方に深甚の敬意と謝意を表明すると共に、日本弁理士会の会員共々に、知的財産基本法の成立を厳粛な気持ちで祝するものである。
 この基本法の下で、その根幹をなす知的創造立国のスパイラルが大きく展開し始めることを念じて止まない。その成否は、ひとえに、この基本法で謳う精神が、従来の制度の枠にとらわれることなく知財改革による国興しとして国を挙げて推進されるか否かにかかっている。なかんずく、附帯決議に謳われた事項が強力に推進されるよう、会員一丸となって邁進することを、ここに誓うものである。

知的財産基本法案に対する附帯決議
 政府は、世界経済のグローバル化が加速度的に進展し、市場競争が激化している中で、我が国産業の空洞化を防ぎ、国際競争力を強化していく上で、知的財産の創造・保護・活用を促進していくことが喫緊の課題であり、早急に国家戦略としての取り組みを必要としていることにかんがみ、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

一 「知的財産立国」実現に向けた知的財産戦略を具体化する推進計画を早急に策定するとともに、本法により内閣に設置される知的財産戦略本部がその実現に向けた諸施策を政府として一体的かつ集中的に推進できるよう体制整備を行うこと。
 この場合において、知的財産関連産業の健全な発展を図るため、その育成及び振興に務めること。

二 特許権等の迅速かつ的確な権利付与の必要性については、これまでも本委員会において指摘してきたところであるが、事業活動のタイミングを逃さない権利付与が実現できるよう、なお、一層の迅速化に向けて特許審査官等の増員及び外部人材の活用を含めた審査体制の整備強化に最大限務めること。

三 知的財産の迅速かつ的確な保護が図られるよう、地方裁判所や高等裁判所における知的財産に係る訴訟を専門的に処理するための体制の一層の強化や今後の動向を踏まえての訴訟代理権の更なる拡大の検討を含めた弁理士の積極的活用等訴訟手続きの充実を図るとともに、裁判外紛争処理制度の充実により、地域の利便性にも配慮した迅速かつ的確な知的財産の保護ができる環境の整備に務めること。

四 海外における知的財産権の侵害によって我が国産業が甚大な損害を被っている現状にかんがみ、政府機関と民間企業等が一体となって、模倣品や海賊版製造国等に対する直接又は、国際機関等を通じた働きかけを行うなど、積極的な取り組みを推進すること。

 

この記事は弁政連フォーラム第120号(平成14年11月25日)に掲載されたのものです。

Copyright &copy 2000 Political Federation of JPA, All rights reserved.
日本弁理士政治連盟 〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-4-2,弁理士会館内
E-mail: info@benseiren.gr.jp
Tel: 03-3581-1917 Fax: 03-3581-1890
更新日: