PF-JPA

国家百年の大計を支える
弁理士制度の構築を!


Tetsuya Mori
日本弁理士政治連盟
会長 森 哲也


ご挨拶
 会員の皆様、 新年明けましておめでとうございます。
 皆様の熱いお支えに感謝しつつ、昨年までのご報告と本年の抱負を述べさせて頂きます。
 平成11年頃から昨年までは、知財国家戦略と、これを支える弁理士制度改革にとって、極めて重要なステップの連続でしたが、弁政連はこれらの改革ステップの全てに深くコミットして参りました。
 その中で最新の実績を挙げれば、昨年、政権与党の自民党の中に「弁理士制度の改革推進及び地方展開に関する議員連盟(略称:弁理士制度推進議連)」を結成して頂いたこと、民間開放・規制改革推進会議の提言案中にあった「特許審査」の民間開放文脈を、正しくマニュアル化できるものだけに限定して頂いたこと、そして、ADR基本法の成立に伴う弁理士の著作権分野の仲裁・調停代理権の確立等を今通常国会で立法措置することの道筋をつけたりしたことは、達成感を強くしたものでした。
 野党第一党の民主党と自民党と連立政権を担う公明党には「弁政連しんぱ」の方が多く、従来から力強いお支えを頂いておりましたが、とりわけ、自民党の弁理士制度推進議連には、前総理、前自民党司法制度調査会長、元官房長官、現幹事長、前財務副大臣等々、淙々たる方々が中心となり、私達に力を貸して下さっております。
 例えば、弁理士の著作権分野の仲裁・調停代理権の確立等については、弁理士制度推進議連が決議により方向づけをされ、その結果、司法制度調査会が動き、官界首脳の方々も、極めて好意的に手を差し延べて下さいました。また、特許審査の民間開放・・については、枢要な方々のご見識とお力で、規制改革会議の方々にもご理解を頂いたのであります。
 顧みれば、弁政連は、公式団体である日本弁理士会が、立場上困難な政策提言と政治活動を可能にするため、30年前に日本弁理士会の総会の「斡旋決議」により結成され、時代の変遷に対応して「原則加入」制度の任意団体として発展してきました。この結成の経緯と組織のあり方の策定が、共に日本弁理士会の「英智」の賜物であることに思いをいたすとき、ある種の感銘すら覚えます。
 この30年の歴史の中で、私達は大先輩達が開かれた道をひた走りながら、強く太い絆を政界と結ぶことができました。弁政連は、代議制民主主義の原理を帯して、弁理士という専門家がその思想と知見を国政に反映させ、弁理士制度をこの国と共に発展させる、極めて有効且つ強力なツールとなったのであります。
弁政連30周年記念式典を弁理士制度改革の確かな足掛かりに
 2月8日に、弁政連の30周年記念式典が挙行されますが、私は、この式典には、弁理士制度にとって、また、会員の皆様と政界その他の諸方面重鎮の方々との直接の接点として、重大な意義を感じております。
 でありますから、是非とも多くの会員の皆様のご参加を頂き、式典が盛大に挙行できることを願うのであります。
 これからも、知財改革は続きます。弁理士制度はこれをしっかりと支える機能を備えなければなりません。
 そこで、私は、この弁政連30周年式典が、弁理士制度を知財立国を支える枢軸制度として夢のある世界一競争力を有する姿に再構築する改革の確かな足掛かりとなるべきだ考えるのであります。

記念式典のテーマ
 そのために、次のテーマを掲げてみました。
 @憲法に知的財産の創造・保護・活用を!
  (式典のサブタイトル)
 約50年前のいわゆる「戦後」が終わろうとしていた頃ですが、憲法改正の機運が興り、日本弁理士会にも、10年間にわたって「発明に関する憲法改正委員会」が設けられました。
 奇くも、私は最後の委員会に属する機会を得て、先達の気概と見識の高さに心を打たれたものでした。
 戦後60年になるいま、再び憲法改正の機運が国民的な広がりで興っております。
 「知的財産の創造・保護・活用」、これは伝統的に知的創造力の豊かなこの国の国民性を表しております。先達の志をこの機会に実現する運動を展開したいと思うのであります。
 既に、私をはじめ弁政連のメンバー8名が民間憲法臨調(三浦朱門会長)に参加し、その提言書に、「知的創造に関する新しい権利」を憲法に、と主張しました。これが、見事に自民党の憲法改正大綱のたたき台に採択されました。
 私達弁理士も、知的創造の観点から憲法改正を主張をして「この国のかたち」造りに貢献しようではありませんか。

 A夢のある世界一競争力を有する弁理士制度を!
 それは、優秀で多様な人材が夢を抱いて参入してくる制度に他なりません。そのためには「法律と技術の専門家」としての弁理士の制度的枠組みを確立するための試験制度と研修制度の改革をすることが肝要であり、このことが、prosecution から完全なかたちのlitigationまでに一貫関与できる夢のある世界一競争力を有する弁理士制度の構築に結びつくのであります。
 とかく改革のときには、現実への「妥協」がつきものですが、始めから妥協を前提にした主張は、福沢諭吉翁の戒められた「惑溺」であり、結局はその場凌ぎのこととになり、後顧に大変な憂いを残すことになるのです。
 「法律と技術の専門家」の制度的枠組みは、第一に、産業財産法、関係条約類、民事訴訟法、自然科学系を、論文式試験の必須科目にし、第二に、研修を弁理士登録要件化することで担保されます。何故ならば、論文式試験はこの分野の全てにわたって「必要な素養」を、研修の登録要件化は「即戦力」が、それぞれ担保されるからであります。
 因みに、択一式試験は知識をフィルタにして論文式試験を充実するための足切手段、登録前研修は「即戦力」の担保と補充的に素養の担保、とそれぞれ制度趣旨が異なるので、相互に代替することは小手先の誤魔化しであり、それこそ妥協・惑溺であります。例えば、「自然科学系を研修で」などというのは、一見妥当に見える全く現実離れした論であります。試験合格後の短い研修で、弁理士の基礎的素養の大方をなす自然科学系の素養がつくかどうかを考えればすぐ判るでしょう。
 また、このように試験科目や研修制度の改革をしますと、規制改革論者からの攻撃を受けますが、プロセス教育方式を導入し、民事訴訟法や自然科学系の科目については、大学や専門学校でその科目の単位を得ておけば科目免除する、ということにすれば、レベルが高くなった受験者( 参入者) への「障壁」は、時間軸上に横倒しになり「障壁」ではなくなるのです。
 ただし、制度趣旨の異なる他士業資格による科目免除の制度はこの際見直さなければ整合性がとれなくなります。
 そして、いま、ベテランの現役弁理士の司法での活躍を旨として出来た付記弁理士の認定に、「厳然たる国家試験」を課す結果となっていることは問題である、との声が上がっております。
 つまり、「厳然たる国家試験」であるから若い方々が合格するのは当然として、90年もの制度的歴史の訴訟補佐と実質的に変わらないかたちの「代理」に関する認定(しかも「資格内資格」)なのに、全体の合格率が60%強という低さ(認定司法書士は80%強)、そして、ベテランの現役弁理士の合格率が極端に低いことであります(中には受験勉強のためふらふらになり体調を崩した方々も)。
 本来の趣旨に向けて、運用なり改革なりの軌道修正が望まれます。

 B弁理士業務を、知的財産基本法の守備範囲に!
 知的財産は、知的財産基本法によりおおきな広がりを見せました。「法律と技術の専門家」である弁理士は、この全てを守備範囲とするよう研鑽しなければなりません。この研鑽を素に知的財産分野の枢軸的存在として活動するのが、弁理士の国民から受けた付託であります。
 その自覚を持って、弁理士業務を知的財産基本法の定義に整合させる努力をしましょう。いま徐々にではありますが、この方向の展開がおこなわれています。このようにして夢のある世界一競争力を有する弁理士制度を後世に残す努力を弁政連は続けます。







この記事は弁政連フォーラム第146号(平成17年1月25日)に掲載したのものです。
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