PF-JPA
弁理士の訴訟代理権はいまや天王山に
差し掛かっています。司法の「国際対応
基盤の確立」として推進しましょう。
 
   
日本弁理士政治連盟
副会長 森 哲也 
 
・改革の3本柱を4本柱に

 司法制度改革審議会は、改革の3本柱として「人的基盤の拡充」「制度的基盤の整備」「国民的基盤の確立」を挙げておりますが、急激に進展しているグローバリズムに対応するために、「国際対応基盤の確立」が喫緊の課題となってきました。すなわち、例えば、米国のパテントアトーニーが17000名(理工科系出身)であるのに対して、日本の理工科系出身弁護士は僅かに27名であります。これは、ハーグ国際私法会議の成り行きによっては国際裁判管轄が流動化する可能性のある状況下において、日本の司法が知的財産権関係訴訟で国際競争力を失うことになることを意味します。この国の司法は、国際的視点に立った改革が必要となってきたのであります(資料1:知財改革構想チャート )。

・国家研修による弁理士の知的財産権法曹化

 弁理士は、現在4400名おりますが、特許庁審判部の審決を争う審決取消審決取消訴訟代理権と工業所有権侵害訴訟の輔佐権を有しており、知的財産権関係訴訟では実質的に弁護士と同じ訴訟実務の制度的歴史があります。

 この弁理士に、国家研修所により補完的な研修を施し「知的財産権法曹」としての資格を与えると、人口比率からして米国に略対抗できる数の知的財産権法曹が創出されます。すなわち「国際対応基盤の確立」であります。

・知的財産権国家研修所で知的財産権分野の「開かれた法曹一元論」の展開を

 因みに、例えば特許庁あるいは経済産業省が主催する国家研修所によって、弁理士・弁護士・裁判所調査官・特許庁審判官に国家研修を施して知的財産権法曹を創出すれば、「開かれた法曹一元論」が実現でき、特に裁判官の給源として有効であると考えます。そのイメージを図示しました(資料2:知財法曹構想概念図 )。

・弁理士の知的財産権法曹化は弁理士のみでもできる訴訟代理権で

 日本弁護士連合会の理事会は、弁理士には弁護士との「共同訴訟代理権」であるならば反対しない、との決定をしました。しかしながら、この「共同訴訟代理権」構想は、訴訟代理の二人三脚を強制するものであり、世界のどの国にも存在しない形態であります。全く国際的整合性に欠けるものといわざるを得ません。内容的にみても、必ず弁護士と連名とし且つ法廷でも弁護士と一緒に活動しなければならない、というのであれば現在の訴訟輔佐と何ら変わるところがないので改革にならないし、連名にすれば後は自由に活動してよい、というのであれば弁護士は「名板貸」的に関与するに過ぎずユーザーの二重コスト問題が浮上して資格制度の本旨に反することになり、更に、連名にして弁理士は侵害論を弁護士は損害論を担当するものとする、というのであればそのように分担する根拠が全くないのであります。

 要するに、ここでいわれている「共同訴訟代理権」は、民事訴訟法第56条の個別代理の原則に反するものでありますので、弁理士の知的財産権関係訴訟代理権は制限されたものであってはなりません。


この記事は弁政連フォーラム第98号(平成13年1月25日)に掲載されたものです。

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