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「日米特許FTA構想」は
「10X」の変化か?
 

Ryosuke Oohashi
日本弁理士政治連盟
会員 大 橋 良 輔


  「10X」の変化(A“10X”Change)という語は、名著『インテル戦略転換』(アンドリュー・S・グローブ著、七賢出版、1997年発行)に出てくるキーワードです。そして、この本の原題は、『Only the Paranoid Survive』です。
 荒井寿光氏が提唱されている「日米特許FTA構想」が「10X」の変化かどうかを皆様に判断してもらうべく、私が先見知財Mailing Listに投稿したメールを以下に転載します。

 参考までに、『インテル戦略転換』の目次を以下に引用しておきます。

「序章 パラノイアだけが生き残る−遅かれ早かれ、あなたの業界の基礎的要因に変化が起きる
第1章 何かが変わった−新しいルールが敷かれ、われわれは五億ドル近くの損失を被った
第2章 「10X」の変化−移行期の影響は深刻で、その時の対応が企業の将来を決める
第3章 コンピューター業界の変貌−コンピューティングの基盤だけでなく、競争の基盤も変化した
第4章 それは、どこにでも起こる−戦略転換点は、ハイテク業界特有の現象ではなく、誰の身にも降りかかる
第5章 われわれの手でやろうではないか?−メモリー事業の危機を克服し、われわれは戦略転換点の何たるかを学んだ
第6章 「シグナル」か、「ノイズ」か−シグナルを見分ける唯一の方法は、深く広く議論することである
第7章 カオスに統治させよう−解決は、実験から生まれる。殻を破ることから新たな発想が生まれる
第8章 カオスの手綱をとる−何を追求するかだけでなく、何を追求しないかを明確にすることが重要だ
第9章 インターネットはノイズか、シグナルか−数兆ドル規模の市場を左右するものは、それが何であろうと見逃せない」

件名: 知的財産推進計画2004(H16.5.27)
送信日時: 2004/05/28 23:48
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http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/index.html

に、昨日公表された知的財産推進計画2004がアップされています。

その42ページに、

「2)日米欧三極特許庁間で特許の相互承認の実現を図る

世界特許システムの第1段階として、世界の80%の出願シェアを有する日米欧三極特許庁間で相互承認の早期実現を図るため、その前提となる制度・運用の調和や必要なインフラ整備等に関する具体的な工程表を作成すべく、日本がリーダーシップを取り、2004年度から三極特許庁間の作業グループにおいて取り上げ、米欧との検討を進める。(外務省、経済産業省)」

と書いてあります。特許の相互承認の前段階として、肯定的審査結果の相互承認が考えられます。

ヨーロッパ特許条約(EPC)に加盟するドイツ、イギリス、フランス、スペイン等の特許庁は、いうならば、肯定的審査結果の相互承認を(ヨーロッパ特許庁という枠組みを通じて)実現していると、見ることができます。

ヨーロッパで肯定的審査結果の相互利用が実現した結果、ドイツ弁理士と英国弁理士が、日本企業や米国企業の仕事を取り合うという、競争が生じました。

東ヨーロッパ諸国の弁理士は、中間手続きにほとんど関与しない明細書の翻訳屋さんになっている、という声も聞かれます。

外内の仕事をメインの仕事としている弁理士は、大きな環境の変化に直面しつつあると思われます。

肯定的審査結果の相互承認は、弁理士会にとって大きな争点になることが予想されます。

件名:自民党の提言
送信日時: 2004/05/29 01:33
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http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/dai8/08gijisidai.html

にある、

「[資料4]「知的財産立国」の早期実現(平成16年5月13日自由民主党政務調査会経済産業部会知的財産政策小委員会、司法制度調査会知的財産権の法的保護・特許裁判のあり方に関する小委員会、知的財産制度に関する議員連盟、コンテンツ産業振興議員連盟、マルチメディア懇話会ブロードバンドコンテンツ小委員会)」

にも、

「3. 世界特許・国際標準の実現
(1)経済の国際化に伴い、事業活動に不可欠な特許を一回の手続きで取得できるよう、世界特許の実現を目指す。その第一段階として、日米欧三極間で審査基準や制度運用を調和させ、特許の相互承認を実現する。」

と書いてあります。与党も政府も本気です。

大手特許事務所に勤務する弁理士さんは、この問題をどう考えていらっしゃるのでしょうか?

件名:「黄金の三年間」
送信日時: 2004/06/05 06:14

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今日の日経新聞朝刊の「大機小機」というコラムに、

「参議院選挙を終えると、三年間は、選挙がないというのが常識だ。そこで、その三年間は、選挙を気にせずに腰を落ち着けて日本の将来に直結する政策の道筋をつけることが可能になる。バブル崩壊後の低迷からようやく抜け出したわが国経済にとって、特定の利害や団体にこびることのない国家百年の大計を考える、きわめて重要な期間で、「黄金の三年間」とでも呼ぶべきものだ。」

と書いてあります。参議院選挙で、自民党が勝てば、「黄金の三年間」は自民党のものです。

「3. 世界特許・国際標準の実現
(1)経済の国際化に伴い、事業活動に不可欠な特許を一回の手 続きで取得できるよう、世界特許の実現を目指す。その第一段階として、日米欧三極間で審査基準や制度運用を調和させ、特許の相互承認を実現する。」

という提言は、弁理士会にこびることなく粛々と進めていくことができます。
小泉総理は、残りの二年半の任期内に、思い切ったことができてしまいます。

件名:荒井事務局長の「ひとこと」
送信日時: 2004/06/05 06:54
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http://www.ipr.go.jp/hitokoto08.html

に、知財戦略推進事務局長の荒井氏の「ひとこと」がアップされています。

見出しは、「知財推進計画2004」です。

「○国際的視野
昨年の計画ではどちらかと言えば、国内対策に集中していましたが、科学技術やビジネスの国際化に合わせ、今年の計画では戦略の視野を国際化しました。
世界特許のニーズが高まっており、日米欧の3極特許庁間で、デファクトの相互承認を目指して具体的な作業が進められます。」

と書いてあります。荒井氏も本気です。

件名:国内会計基準の相互承認、EUに要請・経産省
送信日時: 2004/06/11 09:26
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http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20040611AT1F1001910062004.html

によると、

「経済産業省は金融庁や企業会計基準委員会などと協力し、欧州連合(EU)に企業会計基準の相互承認を要請する。EUは2007年から域外企業にも国際会計基準を適用する方針だが、日本の会計基準が欧州で通用しなくなると欧州で資金調達している日本企業に悪影響が及ぶため。今月下旬に東京で開く日・EU首脳会談などで対応を求めていく。」

そうです。もしかしたら、その日・EU首脳会談で、特許の相互承認についても話し合われるかもしれません。

経済産業省のキーワードは、「相互承認」のようです。
「相互承認」というキーワードには要注意です。

件名:日経社説 第2ラウンドに入った知的財産戦略
   (6/21)
送信日時: 2004/06/22 00:27
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http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20040620MS3M2001M20062004.html

によると、

「企業支援に加え、日米欧の三極で特許相互認証を目指すとする。米が先発明主義にこだわるなど壁はあるが、5年後の実現を目標として主要国首脳会議などで働きかける。」

と書いてあります。「日米欧の三極で特許相互認証」が、5年後に実現したら、弁理士会の風景が変わってしまうかもしれません。

弁理士事務所、そして、弁理士とっては衝撃的な変革になることが予想されます。

件名:金融庁、2005年度から財務諸表の英文開示解禁へ
送信日時: 2004/06/22 16:49
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http://www.nikkei.co.jp/news/main/20040622AT2D2102022062004.html

によると、

「金融庁は2005年度から、海外企業の財務諸表や金融商品の説明書などの英文開示を段階的に認める。まず株価指数連動型上場投信(ETF)を対象とし、2007年度には日本で株式上場する海外企業に英文開示を解禁する。日本語への翻訳などにかかっていたコストを減らすことで、海外で活発に取引されている金融商品や企業を国内に誘致し、市場活性化につなげる。
 金融庁は22日に金融審議会(首相の諮問機関)ディスクロージャー・ワーキング・グループの会合を開き決定、23日に発表する。国内では海外企業やETFなどの金融商品に対しては日本語での開示しか認めておらず、翻訳などに二重の手間がかかっている。」

そうです。海外企業の財務諸表や金融商品の説明書などの英文開示が認められようとしている時代です。

「日米欧の三極で特許相互認証」が認められてもおかしくないような雰囲気が形成されつつあります。弁理士は、この問題にどのように対処していけばいいのでしょうか。

件名:吉野家、豚丼の力及ばず・8月中間期は赤字転落
送信日時: 2004/06/23 08:58
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http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20040623AT1D2206T22062004.html

によると、

「吉野家ディー・アンド・シーの連結経常損益が2004年8月中間期に10億円前後の赤字(前年同期は71億円の黒字)に陥る見通しとなった。BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)による牛丼販売休止以降、代替メニューの豚丼では客離れに歯止めがかからず、損益が従来予想(11億円の黒字)より一段と悪化する。半期ベースで経常赤字となるのは、1990年に株式を店頭市場で公開して以来初めて。
 連結売上高は前年同期比15%減の600億円前後にとどまる見通し。牛丼チェーン「吉野家」の既存店売上高は、3月が23%減り、4月と5月も3割強減少した。牛丼に代わる豚丼など新商品の値下げキャンペーンで客数の回復を図ったが、効果は小さかった。予想を超す売り上げの落ち込みで、人件費など販管費率は当初計画以上に上昇している模様だ。」

そうです。特許事務所の「牛丼」は、「外→内特許出願」かもしれません。「豚丼」は「内→外特許出願」かもしれません。牛丼(「外→内特許出願」)に代わる豚丼(「内→外特許出願」)など新商品の値下げキャンペーンで客数の回復を図ったが、効果は小さく、予想を超す売り上げの落ち込みで、人件費など販管費率は当初計画以上に上昇してしまう事態に、特許事務所も陥るのかもしれません。

件名:特許庁長官 小川洋氏の就任挨拶
送信日時: 2004/06/26 00:59
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http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shoukai/choukan/2004_aisatsu.htm

に、就任挨拶が公表されています。そこに、

「世界各国どこでも同じように知的財産が保護される環境を構築することにより、我が国企業の国際展開を支援します。このため、審査結果をいち早く発信し、各国特許庁の審査における活用を促すことで、世界の特許審査をリードするとともに、アジア途上国に対する人材育成協力や欧米先進国に対する審査協力などの国際協力を推進してまいります。」

と書いてあります。小川・新長官は「特許の相互承認」という用語は使われていません。「審査結果の相互利用」というニュアンスは滲ませているようです。小川長官の就任挨拶をどう読めばいいのでしょうか。

件名:EU、日本の会計基準の有効性を評価へ
送信日時: 2004/06/30 14:07
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http://www.nikkei.co.jp/news/main/20040630AT2M2903030062004.html

によると、

「欧州連合(EU)は29日、欧州市場に上場する日本、米国、カナダの企業に自国の会計基準の継続利用を認めるかどうかの判断作業を開始した。2005年から欧州企業に義務付けられる国際会計基準(IAS)と比較し、IASと同等の水準と認められない場合、IASの適用を迫られる。」

そうです。そして、

「調査対象の3カ国は独自の会計制度を持ち、欧州市場への上場企業も多い。ただ米国の会計基準についてはIASとの将来的な統合作業に向けた話し合いが進んでおり、日本の会計基準の取り扱いが大きな焦点になっている。
(中略)
日本の金融庁や日本経団連はEUに対して、日本の会計基準の継続利用を認めるよう働きかけている。」

そうです。会計基準の相互承認が行われる時代です。
特許審査結果の相互利用、特許の相互承認が実現してもおかしくない時代に突入しつつあるのかもしれません。

件名:早期審査・早期審理(特許出願)の運用の概要
送信日時: 2004/07/03 12:00
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http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/souki/v3souki.htm

に、

「1. 早期審査・審理の対象となる要件の見直し
 (1) 「外国関連出願」の範囲を拡大しました。
これにより、特許協力条約(PCT)に基づく国際出願が行われている場合は、国際出願の段階であっても(まだ外国の特許庁の国内段階に入っていなくても)、対応する国内出願が早期審査の対象となります。」

「2. 早期審査・審理対象案件選定時の運用の見直し及び明確化
 (1) 外国特許庁から出願番号等を受けていない出願に対する運用を変更しました。
これにより、外国特許庁から出願番号等を受けていない出願であっても、早期審査に関する事情説明書に、出願した国(機関)及び日付を記載し、外国出願の願書の写し等を添付することにより、「外国関連出願」として扱われるようになります。」

と書いてあります。これは、日米欧3極特許庁による「審査結果の相互利用」に向けての布石だと思われます。

「外国関連出願」について、日米欧の特許庁の中で一番早く審査結果を出そう、という執念が日本国特許庁に感じられます。

しかし、(日本の大手企業の出願に係る)審査結果を早く出そうとするときに、特許庁にとって障害となるのは、3年の審査請求制度です。

審査請求制度を廃止したいと考える人が、知財戦略推進事務局や特許庁首脳部に増えてきていることが予想されます。

外国出願をしない出願や防衛的な出願は、特許出願ではなく、存続期間が10年になり、特許出願にも変更できる新しい実用新案登録出願(平成17年4月1日施行)にして下さい、という雰囲気づくりがなされることが予想されます。

もし審査請求制度が廃止されたら、特許出願時の印紙代は、現在の16000円から審査請求料も含めた20万円前後になることが予想されます。

これでは、中小企業は特許出願をすることに難色を示し、新しい実用新案登録出願にシフトするはずです。こうなった場合、弁理士事務所の多くは、特許庁から拒絶理由通知書を送付される案件が激減し、中間手続きから得られる収益が激減することが予想されます。

特許庁は、取るものは取って、中間手続きで稼いでいる弁理士さんには泣いてもらう、という政策を採用しようとしているように思われます。

件名: 日経ビジネス人文庫「吉野家の経済学」
送信日時: 2004/07/03 23:44
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http://www.morimoto-sr.ac/reading/2002/01yosinoyal.html

に上記書籍の内容が抜粋されています。

その「第3章 「食材」の秘密。」
http://www.morimoto-sr.ac/reading/2002/01yosinoyal.html#4
に、

「肉はUSビーフですが、アメリカのビーフ流通市場では、部位別にアメリカ農務省規格がある。
吉野家は牛肉の部位として、ショートプレートというバラ肉の部分ですが、農務省121の番号がついている。それを吉野家仕様のカットに変えて輸入していた。
 しかし、日本向けの主要な輸出先は吉野家なので、日本向けのショートプレート規格は、全部吉野屋仕様の規格となり、アメリカでジャパニーズカットと呼ばれる品名は吉野屋スペックとなっている。」

そうです。吉野家が儲かっていたのは、「日本向けの主要な輸出先は吉野家なので、日本向けのショートプレート規格は、全部吉野屋仕様の規格となり、アメリカでジャパニーズカットと呼ばれる品名は吉野屋スペックとなっている」

からのようです。しかし、そのジャパニーズカットと呼ばれるアメリカ産のショートプレートというバラ肉が BSEの影響で輸入できなくなったので、連結で経常赤字になっていまいました。

国際特許事務所にも「吉野家の経済学」があてはめ可能かもしれません。

件名: 新刊『われら知財派』(甘利明・編著)
送信日時: 2004/07/14 17:22
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http://www.amari-akira.com/

に、上記新刊が紹介されています。

甘利明編集著作「われら知財派」7月出版

とあります。この新刊は、今日の日経新聞朝刊1面下欄に広告が掲載されていました。

この本の副題は、「知財国富論」です。
7月1日に開催された政策シンポジュウムの内容を本にしたものだと思います。

自民党の知財戦略の一端を知ることができるかもしれません。購入しようと思います。

件名: トラック・列島3万キロ 時間を追う男たち
送信日時: 2004/07/18 22:10
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http://www.nhk.or.jp/special/schedule.html

に、2004年7月18日(日)午後9時〜9時49分に放送されたNHKスペシャル「トラック・列島3万キロ 時間を追う男たち」の内容がアップされています。

「日本経済の“血液”として、物流の9割を担ってきたトラック業界。いま時代の大きな変化の波にさらされている。「時間指定」や「産地直送」など、企業や消費者から“より早く”“より安く”を求められる一方、相次ぐ事故の影響により、大型トラックに対しては時速90kmのスピード制限装置着用が義務づけられた。「スピード」と「安全」のはざまで、大型トラックのドライバーたちは、葛藤を続けている。睡眠時間をぎりぎりまで削り、到着時間を“追う”男たち。」

とあります。そして、

「54歳の一人の長距離ドライバーと出会い、トラックに同乗して取材の旅へと出た。旅からかいま見えてきたのは、スピードや効率を求める一方で、大切なものを失い続ける現代の姿だった。」

と書いてあります。この番組を見た人も多いと思います。身につまされる話でした。弁理士も、

「特許出願の9割を担ってきた弁理士業界。いま時代の大きな変化の波にさらされている。「時間指定」や「産地直送」など、企業や特許庁から“より早く”“より安く”を求められ」「睡眠時間をぎりぎりまで削り、提出期限を“追う”男たち。」

になりつつあると思います。長距離トラックの運転手と弁理士は、似たような商売なってしまったのかもしれません。

件名:銀行店舗が10年連続減・三菱東京、UFJ
   統合で加速へ
送信日時: 2004/07/19 10:03
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http://www.nikkei.co.jp/news/main/20040719AT1F1800A18072004.html

によると、

「全国の銀行の店舗が10年連続で減少している。全国銀行協会の調べによると、2004年3月末の店舗は1万4060店で前年に比べて355店減り、10年前に比べて3000店(18%)減少した。銀行の経営悪化や再編に伴い、経費削減を目的にしたリストラが地方銀行も含めて進んでいるためだ。三菱東京フィナンシャル・グループととUFJグループが経営統合を決めたことで、店舗減少が加速する見通し。
 店舗以上に人員も大幅に減った。全国の大手銀、地方銀行の従業員数は2004年3月末で約30万2000人。過去10年間で16万人(35%)少なくなった。不良債権処理に苦しんできた銀行は、規模を縮小することで収益を確保しようとしてきた。1995年3月末に店舗、人員が初めて前年比マイナスに転じて以来、10年連続でマイナスが続いている。」

そうです。インターネットの普及に伴って、銀行の支店は減少、銀行員は減少し続けているようです。金融技術(FT)が情報技術(IT)と融合し続けているからだと思います。

同じように、ブロードバンドがさらに普及すれば、私大の数は減少し、大学教員は減少することが予想されます。学習技術(LT)が情報技術(IT)と融合し、「e-Learning」として結実することが予想されるからです。

株式会社による病院の経営が認められるようになったら、病院の数は減少し、病院で働く人の数は減少するかもしれません。医療技術(MT)が情報技術(IT)と融合し、電子カルテ、電子処方せん、レントゲン写真の電子化、テレビ電話による診察、診察券を兼ねた電子マネーによる診察料の支払いが普及することが予想されるからです。

法律技術(LT)や特許技術(PT)が、これ以上情報技術(IT)と融合しないで欲しいと思います。

知財高等裁判所や東京地方裁判所の知財部に提出する書類がすべで、インターネットにより提出することが義務付けられ、知財関係の書類に限り、一般の人がインターネットで自由に閲覧できるようになったらどうなるのでしょうか。

件名:マイクロソフト、高度な仕事も海外へアウト
   ソーシング
送信日時: 2004/07/31 11:19
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http://www.asahi.com/english/svn/TKY200407300175.html

によると、

「2年前にマイクロソフトの幹部がソフト開発の仕事をインドにアウトソーシング(外部委託)し始めて以来、次第により高度な仕事もアウトソーシングするようになった、とワシントン州のテクノロジー労働組合は言う。その中には、ウィンドウズの次世代、Longhorn関連の仕事も含まれている。この労働組合、Washington Alliance of Technology Workers(WashTech)は、マイクロソフトの従業員から同社のプロジェクトに関する内部資料を入手した。それによると、同社の数十件の仕事はインドのSatyamやInfosys、そしてWiproなどの会社が行っているという。」

ことです。そして、

「同社の研究担当の幹部も、マイクロソフトがコスト削減に必死で取り組んでいる時期には海外で行う仕事量が増加する可能性がある、と言う。「マイクロソフト製品がより成熟し、集中的な設計の仕事の必要性がなくなるにつれて、海外への仕事の移転はより多く起こることになる」と同幹部は述べる。」

と書いてあります。

「マイクロソフト製品がより成熟し、集中的な設計の仕事の必要性がなくなるにつれて、海外への仕事の移転はより多く起こることになる」

というマイクロソフト社幹部の話は、日本の知識労働者にとっても深刻な話です。ソフトウエア技術者は、自社の製品を成熟させ、完成度を高めるために日々の仕事に打ち込んでいますが、製品が成熟してしまったら、それ以降の仕事は海外へアウトソーシングされるかもしれないので、安定した生活が保障されません。

弁理士も知識労働者です。日本の知識労働市場は現在のところ、日本語の厚い壁に守られています。

その壁が崩れてくると、アメリカのソフトウエア技術者と同じ局面に直面してしまいます。

朝鮮半島が常用の文字として、漢字を止めて、ハングル文字を使用するようにしたのは、陸続きの中国に対して言語の厚い壁を作ることによって、朝鮮半島における知識労働市場を保護しようとしたからに違いありません。

インターネットのない時代は、日本の知識労働市場は、日本語の壁と日本海という二重の防護壁によって守られていました。

インターネットが日本海という壁を取り去りつつあります。日⇔中、日⇔韓の翻訳ソフトの質がここ10年の間で高まらないことを期待しています。

件名:吉野家、7月も売上高35%減・新メニュー効果
   は限定的
送信日時: 2004/08/03 11:49
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http://www.nikkei.co.jp/news/main/20040803AT2F0300803082004.html

によると、

「吉野家ディー・アンド・シーが3日まとめた7月の既存店売上高(速報値)は前年同月比35.3%減だった。減少幅は牛丼販売休止後で最大の落ち込みとなった6月に比べ0.2ポイントの改善にとどまり、4カ月連続で3割を超える厳しい状況が続いている。」

そうです。ジャパニーズカットと呼ばれるアメリカ産のショート・プレートというバラ肉が輸入できなくなった影響は甚大です。

国際特許事務所が、審査結果の相互利用の結果、「ジャパニーズカットと呼ばれるアメリカ産のショート・プレートというバラ肉」の輸入量がが減らされたら、「吉野家の経済学」が働いてしまうかもしれません。

件名:純利益8倍、復活の兆し マック、高級バーガー
   好調
送信日時: 2004/08/04 07:08
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http://www.sankei.co.jp/news/040803/kei098.htm

によると、

「日本マクドナルドホールディングスが3日発表した2004年6月中間連結決算は、高級ハンバーガー「マックグラン」の好調などで売上高が前年同期比2・1%増の1496億円、純利益も8・4倍の11億円と増収増益となった。

 価格戦略が定まらなかったことなどから、通期で2年連続赤字となるなど業績が低迷していたが、アップルコンピュータ(東京)社長から転身して3月就任した原田永幸副会長兼社長の経営改革で、復活の兆しが見え始めた。」

そうです。牛肉を原料とする商品を販売している点で、マックと吉野家は共通しますが、吉野家は厳しい状態が続き、マックは復活の兆しが見えてきました。

マックが、日本仕様のアメリカ産牛肉に依存していなかったことが大きいと思います。

日本マクドナルドは、米国特許弁護士が経営し、世界ネットワークを有する外国法事務弁護士事務所に相当しそうです。

吉野家は、米国企業や米国法律特許事務所からの外→内特許出願に依存する国際特許事務所に相当するかもしれません。

吉野家とマックの動向から目が離せません。

件名: 新刊『日本人が知りたくないアメリカの本音』
送信日時: 2004/08/07 17:13
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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/41986184
96/qid=1091864418/sr=1-24/ref=sr_1_2_24/250-2781725-1851449


に、上記新刊が紹介されています。
著者は、NHKのワシントン支局長やアメリカ総局長を歴任された日高義樹氏です。

内容と目次は、以下のとおりです。

「昨今のブッシュ叩きは大統領選に向けてのキャンペーンに過ぎない。事実は、中東・国連・EU・ウォール街を押さえつけ、今この瞬間も世界戦略は順調に進行している。転換期を生きる日本人に向け、アメリカの本音を語る。

目次

第1章 誰が石油の値段を高くしたか
第2章 二〇〇四年ブッシュ大統領は大勝利で再選される
第3章 誰が「金」の値段を高くしたのか
第4章 理由なくドルの交換レートが変動する
第5章 誰がジョージ・ブッシュをホワイトハウスに入れたのか
第6章 日本人が知らないアメリカ」

『弁理士が知りたくない特許庁の本音』という本が、(特許庁が弁理士を切り捨てたりしないと信じ切っている)多くの弁理士に必要だと思います。その第1章は、

「誰が審査請求料の値段を高くしたか」
でしょう。

第2章は、
「知的財産推進計画2004は大勝利で改訂される」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/040527f.html
でしょう。

第4章は、
「理由なく審査結果の相互利用の交換レートが変動する」
でしょう。そして、

「第5章 誰が小川洋氏を特許庁に入れたのか
第6章 弁理士が知らない特許庁」

となりそうです。

件名: 4大監査法人、昨年度37%減益・本社調査
送信日時: 2004/08/13 10:47
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http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20040813AT1D1203412082004.html

によると、

「四大監査法人の業績が急速に悪化している。日本経済新聞社が実施した監査法人調査によると、2003年度の四大法人合計の経常利益は36億円と前の期比37%減り、2年前の3分の1近くに落ち込んだ。新しい会計制度への対応や監査の内部チェック強化などで人件費負担が増え続けているが、企業から受け取る監査報酬がそれに見合っては伸びていないためだ。」

そうです。弁理士業界もこれに近いと思います。
「新しい知財制度への対応や明細書や鑑定書等の内部チェック強化などで人件費負担が増え続けているが、企業から受け取る弁理士事務報酬がそれに見合っては伸びていない」ためです。

四大監査法人は、この悪循環をどう断ち切っていくのでしょうか。

件名:パテント8月号「これからの弁理士の進路に
   ついての一考察」
送信日時: 2004/08/16 13:50

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今月号のパテント13ページに、池内寛幸弁理士が上記タイトルの論考を発表されています。

その19〜20ページに、

「わが国も今後、多量に弁護士、弁理士が生まれてくるが、おそらくドイツと似たような状況になると思われる。弁理士は自由業で気楽にやれるというような甘い時代は過ぎ去った。まさに高度な知財専門家だけが残れる世界であるといえよう。」

「以上から、品質の良い仕事をしていればコスト競争に巻き込まれることも避けられるであろう。」

とあります。裏返せば、気楽にやれるような仕事をしているミドルクラスの弁理士はコスト競争に巻き込まれ、生き残ることが容易でない世界になった、ということです。

厳しい時代です。弁理士業が自由業で気楽にやれた古き良き時代は、もう来ないのでしょうか。

件名: 日経新聞「国際2」面のコラムより
送信日時: 2004/08/20 14:19

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日経新聞の「国際2」面に、「欧州 指導者たちの憂うつ」というコラムが連載されています。

第2回目の今日は、ブレア英首相です。

「「この数年間、米国の政策を支持してきたことを誇りに思う」――。英首相トニー・ブレア(51)は休暇前の七月、下院議会で胸を張った。心中では忸怩(じくじ)たる思いが交錯していたとみられる。
 首相は二〇〇一年九月の米同時テロ以来、米大統領ブッシュの「対テロ戦争」を全面支援、強い米英関係を築き上げた。
(中略)
 ブレアは二年前に友人への手紙で「米国が聞く耳を持つ唯一の指導者は自分だ」と自負していたのに、米国の政策に与えた影響は小さかった。イラク戦争でも、空母の上で勝利宣言をしたブッシュに比べ、国内の反対世論を押し切り「米国のプードル犬」とまで揶揄(やゆ)されたブレアが払った代償は大きい。」

と書いてあります。弁理士会も、
「二〇〇一年八月の知的財産国家戦略フォーラム発足以来、元・特許庁長官の荒井寿光氏の「知財立国」を全面支援、強い官民関係を築き上げ」てきました。

日経新聞のコラムは、

「英国は来年半ばに主要国首脳会議(サミット)と欧州連合(EU)の議長国となり、外交手腕を発揮できる機会に恵まれる。ブッシュであれ、ケリーであれ、米大統領相手に丁々発止のやり取りを見せることができれば、イラク問題で地に落ちた名声をばん回できるかもしれない。」

と締めくくっています。弁理士会も今年の10月末にAPAA福岡理事会があります。AIPLAのミーティングも予定されているはずです。

弁理士会も、AIPLAやヨーロッパ弁理士、そしてアジアの弁理士と連携して、特許庁を相手に丁々発止のやり取りを見せることが、必要とされている局面なのかもしれません。

件名:日経新聞連載コラム「会計ビックバン 苦悩
   する会計士」
送信日時: 2004/08/26 07:27

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25日から日経新聞の企業財務2面に上記コラムが連載されています。今日の見出しは「年収ダウン時代 代表訴訟リスクも浮上」です。

「この夏、あるうわさが会計士業界を駆け巡った。新卒会計士の年収が三百八十万円程度に下がるらしい−−。現在は約四百八十万円が相場だが、引き下げによって弁護士の卵である司法修習生の年収に足並みをそろえる。そんなもっともらしい解説もついて回った。
 うわさの背景には大手監査法人の業績悪化がある。二〇〇三年度の四大法人の経常利益は前の期より三七%減った。収入の柱である監査報酬が伸び悩み、システム投資など費用増にも歯止めがかからなかったためだ。
(中略)
 ステータスの高い資格、安定した収入……。堅実イメージで知られた会計士たちが、年収ダウン時代の足音におびえ始めている。「これでは会計士を志す人が減ってしまう」(中央青山監査法人の若手会計士)といった声も出始めた。」

とあります。さらに、

「会計士が異口同音に指摘するのは「監査報酬の安さ」だ。七月に就任した日本公認会計士協会の藤沼亜起会長は「監査内容に見合うだけの報酬引き上げを企業にお願いしたい」と力を込める。
(中略)
 しかも会計ビックバンの進展で時価会計、減損会計などチェック項目は増えるばかり。「監査報酬の据え置きは実質値下げと同じ」という悲鳴が聞こえてくる。
 だが顧客企業の反応は冷たい。「えっ、こんなに高いのですか」。新日本監査法人のある幹部は監査報酬を巡ってしょっちゅう嫌みを言われる。リストラ時代を生き抜いた多くの企業にとって、監査関連費用はほかの販管費と同様に「できるだけ圧縮すべき対象」と映る。今年四月から監査報酬が自由化され、企業と監査法人のせめぎ合いは九月中間決算を前に厳しさを増していく。」

と続きます。公認会計士業界で起こっていることは、弁理士業界で起こっていることと、全く同じです。しかも、

「監査報酬の伸び悩みを他の収入で補うのもままならない。
(中略)
 もう一つの頭痛のタネは「訴訟リスク」だ。」

というあたりは、そっくりです。

「ある大手監査法人の幹部は自宅を妻との共同名義にしている。「たとえ賠償金を支払って破産しても、家だけは残したい」。心のどこかに、そういう思いがあるという。」

大手特許事務所のパートナーも同じ思いを持っているはずです。最後に、

「会計ビックバンや一連の金融危機を通じて会計士の業務範囲は広がり、社会的責任も重くなった。それに見合った「実利」をどう担保するか。難題を解決する糸口は、なかなかみえてこない。」

と書いてあります。弁理士も同じです。

「プロパテント、知財立国や一連の経済危機を通じて弁理士の業務範囲は広がり、社会的責任も重くなった。それに見合った「実利」をどう担保するか。難題を解決する糸口は、なかなかみえてこない。」


訴訟リスクは高まり、年収はダウンする時代をどうやって乗り切っていけばいいのでしょうか。

件名:弁護士事務所、大競争時代に・企業法務対応
   へ合従連衡
送信日時: 2004/09/01 08:52
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http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20040901AT1D3106D31082004.html

によると、

「大手弁護士事務所のアンダーソン・毛利法律事務所(東京・港)と友常木村法律事務所(東京・千代田)は、来年1月に合併することで合意した。合併後の弁護士数は約160人と最大手の一角になり、M&A(企業の合併・買収)の助言、国際間の資金調達、知的財産権の保護など企業からの需要が高いビジネス法務サービスを幅広く提供する。法曹人口の増加や海外勢の国内進出も手伝って弁護士事務所は大競争時代に突入、今後一段と合従連衡が進みそうだ。」

ということです。

「企業からの需要が高いビジネス法務サービス」の中に、「知的財産権の保護」が含まれています。

これからは、四大弁護士事務所が優秀な「弁理士」を囲い込む時代が来るかもしれません。

四大弁護士事務所、大手外国法事務弁護士事務所、そして大手弁理士事務所との大競争時代も予想されます。

中小の弁理士事務所は、はじかれてしまいそうです。

件名: 知的財産フォーラム開幕、「特許版日米FTAを」
送信日時: 2004/09/13 14:04
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http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20040913AT1D1300313092004.html

によると、

「特許など知的財産を活用した日本経済の競争力向上策を議論する「日経知的財産フォーラム2004」(主催・日本経済新聞社)が13日、東京・港の六本木ヒルズ森タワーで始まった。基調講演で内閣官房知的財産戦略推進事務局長の荒井寿光氏は、「日本で取得した特許が米国でも自動的に認められる仕組みが必要」と述べ、「特許版の日米FTA(自由貿易地域)」の創設を提唱した。

 同フォーラムの開催は昨年に続き2回目で、今回のテーマは「知的財産で日本を掘りおこす」。中川昭一経済産業相のあいさつに続き、基調講演した荒井氏は、「現在の制度では、企業は同じ発明でも国別に出願し、特許を取らねばならず、企業も審査する側も負担が大きい」と指摘。「相手の国が認めた特許を原則的に受け入れる特許FTAを日米で作れば、両国の企業は大きな利点を得られる」と主張した。」

そうです。「現在の制度では、企業は同じ発明でも国別に出願し、特許を取らねばならず、企業も審査する側も負担が大きい」という荒井氏の指摘に反論することは容易ではありません。

しかし、企業が同じ発明でも国別に出願し、特許を取らねばないので、特許事務所は、外内出願、内外出願ビジネスが成り立っています。

荒井氏が「特許版日米FTA」に本気で取り組むようなことになれば、特許事務所は利益の源泉を失うことになりかねません。

そして、こういう場合にうまく立ち回るのが、AIPLAとUSPTOです。大きく損をするのは、JPAAだけということになりそうな予感がします。

件名: 東京でテクノ・フォーラム交流会
送信日時: 2004/09/17 11:46
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http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20040916ic24.htm

によると、

「「東京テクノ・フォーラム21」(代表=滝鼻卓雄読売新聞東京本社社長)の第79回研究交流会が16日に東京都内で開かれ、小野新次郎・特許庁特許技監が「世界特許システムの構築に向けて」と題して講演した。
 国際的な特許審査の迅速化を目指し、日米欧が共同で進めている先行特許の調査システムの共通化、審査官の相互交流などについて、進行状況と今後の展望を説明した。」

そうです。JPOもうまく立ち回っています。JPAAは、「世界特許システム」なんて夢のまた夢だ、という認識なので思考停止状態で、この問題について何ら意見を開陳できないでいます。

さわらぬ神にたたりなし、ということなのでしょうか。弁理士会が崩れていくとしたら、この問題が発端になる、と私は思っています。

大手特許事務所で働く弁理士は、日々の業務に忙しく、ギリシャ神話に登場する「カッサンドラ」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%83%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%A9
の声に耳を傾ける余裕すらないのかもしれません。

件名: 企業会計基準、日米欧共通化へ始動
送信日時: 2004/09/27 11:11
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http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20040927AT2D2402526092004.html

によると、

「日本の基準を決める企業会計基準委員会(斎藤静樹委員長)は、日本基準と国際会計基準の差を埋めるため、国際会計基準理事会(IASB)と協議機関を設ける。年内にも設置し、早ければ2006年までに議論を集約する。すでに欧州連合(EU)が全面採用する国際基準と米国基準との共通化作業が始まっており、日米欧の企業会計基準の共通化を目指す。資金調達を中心に企業のグローバル経営を後押しすることになりそうだ。」

ということです。日米欧の企業会計基準の共通化が本格的に議論されているようです。

日米欧の企業会計基準の共通化が出来るのであれば、日米欧の特許審査基準の共通化もそんなに難しいことではないように思われます。

もしそうなれば、特許審査結果の相互利用は現実味を帯びてきます。

件名: 日米特許FTA構想(荒井事務局長の「ひとこと」)
送信日時: 2004/09/27 14:15
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http://www.ipr.go.jp/hitokoto14.html

に、日米特許FTA構想の具体像が示されました。

「まずは先進国の間で協力を進めることが、合理的です。日米欧の3極特許庁は審査の前段階のサーチ結果を相互に利用できるよう努力しています。これはこれで、大きな進歩です。しかし、企業や大学は、ものすごく早いスピードで国際化を進めており、少なくとも、先進国間の特許の相互承認を早く実現して欲しいと要望していますので、次のステップが必要です。

日米を見れば、世界で1,2位の出願件数があり、経済関係も密接ですし、技術的な交流も進んでいます。出願人の経験では、両国の審査結果は相当、近寄ってきており、「日米特許FTA」の基盤が整ってきました。第1段階では、日米両国に出願したもので、どちらかの国で特許になったものは、他国で6ヶ月以内に補充審査して、NOと言われない限り、そのまま認めることにします。審判と審決取消訴訟は従来通り、残しますので、第3者の利益は保護され、国家主権の問題も生じません。

これを3年位、実施すると、どのくらい両国の制度や実務に違いがあるか、明らかになりますので、それを調整し、第2段階に進みます。ここでは、補充審査なしに、そのまま、相手国の特許を承認します。ただし、審判と審決取消訴訟は第1段階と同じく残します。」

商標のマドリッド・プロトコルに類似した構想です。「6ヶ月以内の補充審査」というがキーワードのようです。

とうとう、具体案が出てきてしまいました。知財戦略本部の専門調査会の議案になりそうな勢いです。

件名:IPO OPPOSES PROPOSED 12 PERCENT
   INCREASE IN PCT FEES
送信日時: 2004/09/29 22:05
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http://www.ipo.org/Template.cfm?Section=Home&Template=/ContentManagement/ContentDisplay.cfm&ContentID=16338


によると、

「 IPO's Board of Directors has adopted a resolution opposing a 12 percent increase in Patent
Cooperation Treaty fees, until the increase is
justified. Last Wednesday IPO joined with three
other associations in sending a letter to the director of the World Intellectual Property Organization objecting to the proposed increase. For the text of the letter click here.」

だそうです。値上げ反対のレターをWIPOに連名で送ったのは、

(1)UNICE、(2)IPO、(3)JIPA[日本知的財産協会]、(4)AIPLAです。

こういうレターにこそ、JPAAも名を連ねておく必要がありそうです。

件名: 特許国際出願料値上げを先送りへ・WIPO総会
送信日時: 2004/10/04 14:47
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http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20041004AT2M0201E03102004.html

によると、

「世界知的所有権機関(WIPO)は来年1月の実施をめざしていた特許の国際出願料値上げを先送りする方針を固めた。ジュネーブで開催している総会で値上げに反対する先進国と、WIPOの財政難による支援削減を懸念して引き上げに賛成する途上国が対立。4日の本会議で先送りを正式決定し、来年内の実施をめざす。

 WIPO事務局は財政事情悪化に歯止めをかけるため、9年ぶりに出願の基本料金を12%引き上げるよう総会に提案した。しかし日米など先進国は企業のコスト増に直結する値上げに反対。事業活動をどこまで削減するかが明確でなく、今後収入の推移を見極めたうえでないと、値上げ幅が適切かどうか分からないという結論に至った。」

そうです。

(1)UNICE、(2)IPO、(3)JIPA[日本知的財産協会]、(4)AIPLA
による連名のレターが効いたようです。

件名:「特許の日米FTAを実現しよう」
   (馬場錬成氏)
送信日時: 2004/10/12 17:37
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http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/colCh.cfm?i=t_baba51

において、馬場氏は、

「荒井私案で示された相互認証の提唱

 9月13日に開催された「日経知的財産フォーラム2004」の基調講演で、荒井寿光・内閣官房知的財産推進事務局長(元特許庁長官)が、アメリカで取得した特許を自動的に日本で認める(同じように日本で取得した特許もアメリカで自動的に特許となる)「特許の日米FTA(Free Trade Agreement、自由貿易協定)」の創設を提唱して注目を集めている。

 荒井私案によると、日米両国に出願した特許案件は、どちらかの国で特許と認められれば6ヶ月の補充審査をした後、自動的に相手国でも特許とするという案である。
 これが実現すると、さまざまなメリットがある。まず、同じ特許案件を日米双方で審査していたものが、どちらか一方の国だけの審査になるので両特許庁にとって二重審査の手間がなくなる。」

と書かれています。そして、

「特許庁は、荒井私案に対し、「6ヶ月以内の補充審査は無理ではないか」とか「米国から日本に出願する案件数が、日本から米国へ出願する案件数に比べて少ないのでバランスがよくない」などの課題をあげている。しかし、早期審査の実績を見れば6ヶ月以内の補充審査は十分可能だし、日米間の出願件数のアンバランスは両国に出願されていることがFTAの条件であるから相殺されるはずだ。

 アメリカ特許商標庁も現状よりは負担が軽くなるし、アメリカの出願人のメリットも大きいので、もしアメリカから何か指摘してきても、話し合いで解決できる課題だろう。」

と書かれています。「アメリカの出願人のメリット」は、日本の弁理士による中間手続きを飛ばすことにより生じます。

おそらく、荒井氏は、日米特許FTA構想を実現するために、USPTO
http://www.uspto.gov
、IPO
http://www.ipo.org
、そしてAIPLA
http://www.aipla.org
と水面下で交渉していると思われます。

この「日米特許FTA構想」について弁理士会国際活動センターは、「我関せず」の立場だと思われます。実現するはずがない、と高を括っているのかもしれません。

件名: 2004 AIPLA Trilateral Users Conference
送信日時: 2004/10/21 15:19
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http://www.aipla.org/Content/NavigationMenu/Meetings_and_Events/Seminars/Seminars_and_Road_Shows.htm

に、上記カンファレンス(AIPLA主催)のお知らせがアップされています。

「On Thursday, November 18, 2004, the top officials of the Trilateral Patent Offices will meet in
Alexandria, Virginia to discuss their achievements, plans and challenges, and how they can meet their
growing burdens. The countries covered by the
Trilateral Offices generate 85% of the world's
patent activity.

Cooperation among the Trilateral Patent Offices
increasingly influences the patterns for patent law and practice in this country, and throughout the
world. This year, you can join those leaders and
other users of their patent systems in a one-day discussion of patent practice today and in the
future.

November 18, 2004
Hilton Alexandria Old Town
Alexandria, VA」

と書いてあります。AIPLAは、

「Cooperation among the Trilateral Patent Offices
increasingly influences the patterns for patent law and practice in this country, and throughout the
world.」

と認識し、強い危機意識を持っているようです。このカンファレンスで、「日米欧3極特許庁による審査結果の相互利用」について話し合われるはずです。

弁理士会からも国際活動センターの委員の方が出席して、弁理士会会員にどんなことが話し合われたのかを報告してもらいたいです。

件名: 気になる本『国際会計基準戦争』
送信日時: 2004/10/23 22:00
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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/482224282X/249-5333429-4660301

に、上記本が紹介されています。著者の磯山氏は日経新聞の記者です。

内容は、

「本書は、国際会計基準をめぐる世界と日本の動きと、それがおよぼした日本経済への影響をドキュメンタリー風につづっていく。著者は、会計制度への不信が、国際社会における日本企業、そして日本経済そのものの不信につながり、長期的な経済低迷の遠因となったと指摘する。にもかかわらず、会計の国際化が遅れたのは会計基準の裁量権を大蔵省が握っていたことが原因であると主張している。

そして、遅まきながら「連結決算中心」と「時価会計」という国際会計基準の2本柱に準拠することで、日本の企業経営は大きな転換期を迎えているが、金融機関の含み損処理の先送りで会計基準の国際化が今後さらに遅れることに、著者は懸念を隠さない。」

です。会計基準が日米欧の3極で共通化される時代です。
特許の審査基準も日米欧の3極特許庁で共通化されてもおかしくありません。

この本のP.17-18に、

「当時(93年)の経団連事務局の幹部は、「そんなものはエスペラント語だ。(国際会計基準が)できたって誰も使うはずがない」と取り合わなかった。
(中略)
日本の経済界は、経済大国であるニッポンが「日本には日本の文化がある」と突っぱねれば済む問題だと高をくくっていた。
 けれどもその後、日本がどうなったかは、ご存じの通りである。」

日本公認会計士協会は、国際会計基準への対応が遅れたため、国際的に信用されない存在になり、金融庁からの紳士的な脅しに怯える存在になってしまいました。

弁理士会には、公認会計士協会のようになって欲しくないです。



  

この記事は弁政連フォーラム第144号(平成16年11月25日)に掲載したのものです。
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