PF-JPA

日本弁理士政治連盟の政策提言



  

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日本弁理士政治連盟
副会長 小川 眞一



 
 平成19年度日本弁理士政治連盟政策委員会では、以下の項目についてその必要性、改正した場合のメリット・デメリットについて検討し、必要に応じて、関係各方面に改正に向けた働きかけをする予定です。
 弁政連フォーラム本号から隔月(全2回)で、政策検討項目の必要性について、簡単な理由等の見解を掲載致します(本号は項目1乃至3)。
 弁政連フォーラムでは、有識者の皆様の政策提言、会員の皆様の弁政連の政策に対するご意見ご感想等掲載して、各界からの意見を交換することで、弁理士にとってあるべき姿を模索する広場としていきたいと考えております。




 [政策検討課題]


  • 1.特許業務法人の一人法人制度については、これを認める弁理士法の改正を行うこと。

    2.知財事件に関する弁理士の単独侵害訴訟代理については、侵害訴訟に対する補佐人としての80有余年に亘る実績及び共同侵害訴訟代理の実績を踏まえ、これを認める弁理士法の改正を行うこと。

    3.種苗法における品種登録の手続代理を、弁理士の標榜業務として弁理士法に規定すること。

    4.著作権登録の手続代理を、弁理士の標榜業務として弁理士法に規定すること。

    5.弁理士登録前の実務修習に必要な費用は、実務修習者の過剰な負担とならないよう、国からも必要な支援を頂くこと。

    6.弁理士試験においては、工業所有権法(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)の基礎をなす「工業所有権の保護に関するパリ条約」(以下、「パリ条約」という)が工業所有権法にからめて出題されることを明確にすること。

    7.弁理士試験の論文試験選択科目の免除の見直しに関連して、免除対象士業を弁理士の論文試験としての適格性の観点から見直すこと。




(説明)
 <項目1について>

 顧客への継続的な対応を図るという法人制度の趣旨、及び業務の共同化が進んでいない弁理士事務所の実体により、今回の弁理士法改正においては、特許業務法人の一人法人制度導入は見送られたが、以下の理由により、やはり一人法人を許容する弁理士法の改正を今後も要求していくべきではないか。
  • @弁護士法では一人法人が認められている。
    A会社法における会社設立の規制が緩和の傾向にある。
    B一人法人を許容すれば、個人資産と法人資産とに分けて管理することができ、業務の引継がスムーズに行える。そのため、一人個人事務所に比べ、継続性の点からもメリットがある。

 <項目2について>

 弁理士の単独訴訟代理が実現したとしても、実務上は弁護士との共同代理がほとんどであると考えられ、単独訴訟代理を実現することの実質的なメリットが乏しいと言う意見も聞かれる。
 しかし、ユーザー側からは、弁理士の知財一貫関与の要請とともに、訴訟費用等の面から今まで関与してきた弁理士に単独の訴訟代理を望む声があると言う事実も真剣に受け止めなければならない(特に、資金力の乏しい中小企業等からの要望等があると言われている。)。
 そのユーザーニーズに応える一方、弁理士の訴訟代理権を担保する研修の確保など実質的な事情を考慮しつつ、知財事件に関する単独侵害訴訟代理を弁理士に認める制度の検討をして行かなければならない。

 <項目3について>

  項目3は、弁理士の「標榜業務」のうち種苗法品種登録手続きの代理についてのものである。
  検討するに当たって現状では、以下の積極的な必要性が認められる。
  • @バイオ特許等を通じて農業分野にも精通した弁理士がいる。
    A農学部出身の弁理士も増えてきている。
    B品種登録については現に弁理士が代理しているケースが少なからずある。
    C外国企業からは、特許出願の代理等をとおして交流のある弁理士に対し、種苗法の品種登録についても依頼がある。
    D品種の名称を決めるときには商標の調査もしなければならず、商標の知見も必要である。
    E一昨年あたりから地域ブランドの普及活動を通して農水関係(農協、漁協等)との交流が増えてきている。
    F農林水産省内の知財戦略本部への表敬訪問を契機として、昨年より、農林水産省と日本弁理士会との交流が始まり、互いに協力関係を構築しつつある。省内の知財戦略本部専門家会議に日本弁理士会からも委員を派遣しており、今後は、農業分野における知財の普及に一層の貢献を行う必要がある。
 弁理士法には、弁理士の「専権業務」として、特許、実用新案、意匠、商標、国際出願などの特許庁における手続代理、鑑定等が規定されている(法第75条)。また、「標榜業務」として、著作権契約代理や輸出入差止等水際における認定手続の代理、外国出願関連業務代理などがある(19年改正も踏まえて)。このうち、著作権関係は文科省・文化庁の管轄、水際関係は財務省(税関)の管轄である。
 品種登録手続などは、農林水産省の管轄だが、この分野は、弁理士の知見がもっとも生かせる分野の一つであると考えられ、品種登録代理に関しても、弁理士の標榜業務として弁理士法に規定すべきである。既に、弁理士の監督官庁以外の省庁における業務も、弁理士の標榜業務となっている。よって、品種登録を加えることに違和感はないはずである。
 現状では、弁理士自身が、種苗法を代理人として手掛けていいのか、よく分からない状況である(現に、そのような質問を弁理士から受けることがある)。品種登録の代理は我々の専権だと騒いでいる他士業団体もある状況なので、きちんとしておいた方がよいと考える次第である。
 「標榜業務」として「明記」するだけで、十分に意味がある。これにより弁理士の意識も変わり、農林水産省とのタイアップもし易くなる。弁理士が活動しやすくなる。特許だけでなく、品種登録という点にも目を向けることになるからである。



*「標榜業務」とは、特定の事務又は行為を業として行うこと自体は、特定の有資格者に限定しないが、「○○士」という名称を用いてその業務を行うことは、当該資格者に限定するというもの。(産構審 弁理士制度小委員会報告書H18.12/P23より)
*「弁理士の標榜業務」→「誰もが自由に行うことができる自由業務について、弁理士の名をもって業務を行うことを認めるもの。」(⇔独占業務)(産構審第6回弁理士制度小委員会配付資料「弁理士法に規定する業務について(P1)」H19.1.12より)




以下次次号に続く。

この記事は弁政連フォーラム第177号(平成19年10月25日)に掲載したのものです。
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