PF-JPA

日本弁理士政治連盟の政策提言
(弁政連フォーラム10月号掲載分の続き)


  

furuya.fumio
日本弁理士政治連盟
副会長 小川 眞一



 
 弁政連フォーラム10月号に掲載しました掲題「提言」について、その続き(項目4から項目7)を次のとおり紹介します。



 [政策検討課題]


1.特許業務法人の一人法人制度については、これを認める弁理士法の改正を行うこと。

2.知財事件に関する弁理士の単独侵害訴訟代理については、侵害訴訟に対する補佐人としての80有余年に亘る実績及び共同侵害訴訟代理の実績を踏まえ、これを認める弁理士法の改正を行うこと。

3.種苗法における品種登録の手続代理を、弁理士の標榜業務として弁理士法に規定すること。

4.著作権登録の手続代理を、弁理士の標榜業務として弁理士法に規定すること。

5.弁理士登録前の実務修習に必要な費用は、実務修習者の過剰な負担とならないよう、国からも必要な支援を頂くこと。

6.弁理士試験においては、工業所有権法(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)の基礎をなす「工業所有権の保護に関するパリ条約」(以下、「パリ条約」という)が工業所有権法にからめて出題されることを明確にすること。

7.弁理士試験の論文試験選択科目の免除の見直しに関連して、免除対象士業を弁理士の論文試験としての適格性の観点から見直すこと。

(※参照のため前回掲載の「政策検討課題」を抜粋)




(説明)
 <項目4について>

 弁理士は、既に著作権契約の代理やその相談業務を標榜業務として行っているが、その業務の中で著作権登録についても依頼されることがある。著作権それ自体は著作物の創作時点で発生しており、著作権登録はその権利の確認的な意味合いであるため、その登録手続はさほど複雑ではなく誰でも代理できる性質の手続であるが(自由業務)、ユーザの利便性を考え、この際、著作権登録の手続代理についても著作権契約や相談業務と同じく弁理士の標榜業務として弁理士法に明記して頂きたい。著作権は弁理士試験科目(短答式試験&論文試験選択科目)ともなっているため、弁理士の標榜業務とするのが最も相応しく、ユーザたる国民の利益保護にもつながる。

 <項目5について>

 弁理士登録前の実務修習は、経済産業大臣が行うことになっているが(改正弁理士法第16条の2)、一方で、経済産業大臣は指定修習機関に実務修習事務を行わせることができることになっている(同第16条の3)。そして、日本弁理士会は、この指定修習機関として実務修習事務を行うことを予定している。
 ところで、実務修習を受けようとする者は、国が実務修習を行う場合には、実費を勘案して政令で定める額の手数料を国に納めなければならず(同第16条の14第1項)、また、指定修習機関が実務修習事務を行う場合には、経済産業大臣の認可を受けて定める額の手数料を指定修習機関に納めなければならないことになっている(同第16条の14第2項)。これによれば、原則として実務修習を受けようとする者の負担において、登録前の実務修習は行われることになる。
 しかしながら、実務修習に要する費用の全てないし大部分を実務修習者の手数料で賄うことにすると、実務修習者の負担が著しく大きくなって実務修習者に酷である。
 かといって、未だ日本弁理士会の会員でない実務修習者の修習に対して、登録会員から徴収した日本弁理士会の会費をその運営費用に充てることは基本的に無理であり、充てるとしても自ずと限界がある。
 そこで、講師料、テキスト代、会場費等、登録前実務修習に必要な費用は、実務修習者の過剰な負担とならないよう、国においても相応の支援をお願いしたい。もともと、弁理士登録前の実務修習は、経済産業大臣が行うことになっていることに鑑みても(改正弁理士法第16条の2)、是非ともそう願いたい。

★ (その後の顛末)この点に関しては、日本弁理士政治連盟で自民党「弁理士制度推進議員連盟」に要望書を提出し、お力添えをお願いしていたところ、指定修習機関が行う実務修習の教材作成については、特許庁や(独)工業所有権情報・研修館等において、その知見を活かして積極的に協力、支援を頂けることになった。

 <項目6について>

 条約の単独科目としての復活を見送る代わりに、条約が「工業所有権」の出題範囲に含まれることを明確化することとなった(政府の国会答弁及び附帯決議参照)。
 しかし、従来の運用では特許・実用新案、意匠、商標で各5年に一度しか出題されていないことが国会で問題にされ、特許庁幹部は毎年出題できるようにすると答弁された。
 附帯決議の趣旨を担保するには、少なくともパリ条約が出題範囲に含まれることを明確化する必要がある。
 パリ条約は、明治32年その加盟と同時に我が国の工業所有権制度が確立されたように、その基盤をなす重要な条約である。
 そのため、「工業所有権法」に密接に関連するものとして、その出題にからめて「パリ条約」を弁理士試験の出題範囲とすることが、弁理士の国際的資質向上のため必要である。

* 弁理士法の一部を改正する法律案に対する附帯決議:
@「弁理士試験の一部免除により弁理士になる者の資質が低下しないよう十分配慮するとともに、その国際的資質を更に向上させるよう工業所有権に関する条約が論文試験の出題範囲に含まれることを明確にする措置を検討すること。」(H19.4.10参議院経済産業委員会)
A「弁理士試験の一部免除について、受験者の負担軽減が弁理士の資質の低下を招くことがないよう十分配慮すること。…弁理士の国際的資質を確保するよう、工業所有権に関する条約が論文試験の出題範囲に含まれることを明確にするための措置を検討すること。」(H19.6.8衆議院経済産業委員会)

★ (その後の顛末)特許庁は、論文試験における「工業所有権に関する法令」の範囲に、当該法令に関連する「条約」についての出題が含まれることを明確化するために、その旨を、弁理士法施行規則に確認的規定として明示する方針を明らかにした(10月24日自民党「弁理士制度推進議員連盟」の会合にて)。そして、総務部長は、論文試験における「工業所有権に関する法令」に関連する条約には「パリ条約」も含まれることを口頭で述べられた。

 <項目7について>

 一部の士業の資格試験では、弁理士試験の短答式に相当するレベルの試験しか行われていないものもあり、このような資格試験の合格者を、弁理士の論文試験の科目免除の対象とするのは、客観的妥当性を欠き、不公平である。弁理士としての専門学識を担保する上で不適切なものは、是正する必要がある。




以下次次号に続く。

この記事は弁政連フォーラム第179号(平成19年11月25日)に掲載したのものです。
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