PF-JPA


次期弁理士法改正の基本的視点について



  

furuya.fumio
日本弁理士政治連盟
副会長 奥 村 茂 樹

(1)  現在の政治状況は末期的であると思える。政治主導を掲げて政権を奪取した民主党は、今や、政治主導ではなく官僚主導であると思える。政治家は立法し官僚は法を執行するはずなのに、官僚が立法している。このような事態は、民主党が政権を奪取してからではなく、以前の自民党政権のときも、そうであったのだが、その程度がひどくなっているように思える。多分、立法過程において民主党内での議論が十分になされておらず、内閣を構成する国会議員たちの経験値が低いためなのかもしれない。
そのような政府提案による立法には、民主党内からも公然と異論は出るし、参議院で多数を持つ野党から厳しい攻撃がなされる。この結果、立法は滞り、何も決められないという閉塞状況に陥っている。

(2)  このような閉塞状況が続くと、不連続な変化が起きるのではないかと思える。その予兆は大阪にある。大阪には橋下市長という大阪維新の会(大阪の地域政党であるが、以下、「維新の会」という。)に属する特異な人物が居る。維新の会は、「大阪を元気にする」として、府政及び市政を改革することを目的としている。この改革は、今までの延長ではなく不連続な改革であり、憲法違反と思える事項もあるが、府民、市民及びマスコミにもてはやされ、急ピッチで進んでいるようである。
維新の会が「大阪を元気にする」だけであればいいが、「船中八策」という政権公約の類が出て、国政を伺う気配がありそうである。世論調査では、維新の会の国政進出を期待するとの回答が多数を得ている。民主党や自民党にとっては、危険な状況となっている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(3)  さて、次期弁理士法改正が予定されているのは平成26年である。平成26年というと、遅くとも平成25年には衆議院選挙があり、半数改選の参議院選挙もある。したがって、次期弁理士法改正は、現構成の国会で審議されるのではなく、選挙後の国会で審議されるのである。このとき、国会の構成はどうなっているだろうか。自民党や民主党は跡形なく壊れ再編が進んでいるかもしれないし、維新の会が大きな影響力を持っているかもしれないし、あるいは官僚主導がさらに強くなっているかもしれない。つまり、次期弁理士法改正は、どのような政治勢力の下で行われるか分からないのであるから、ぶれない確固たる根拠を持つものでなければならない。そうでなければ、政治勢力によって改正内容が左右され危険であると思う。

(4)  次期弁理士法改正については、日本弁理士会から素案のようなもの(パテント2月号の巻頭を飾っているので、それを見ている。以下、「素案」という。)が発表されている。そこには、基本的視点が書かれているのであるが、なぜかピンとこない。素案の各論を見れば、基本的視点の意味が理解できるのであるが、基本的視点とは各論を上位概念で記載したものなのであろうか。明細書と請求の範囲の関係ではなかろう。基本的視点とは、次期弁理士法改正を行うための根拠でなければならない。
次期弁理士法改正は、平成12年の新弁理士法制定後の連続の中にあると思う。新弁理士法は司法制度改革の流れの中で、それを根拠になされたものと理解している。そして、その後の数次の改正も、新弁理士法後に積み残され達成不十分な課題を解決するために、なされていると理解している。連続性を重んじるならば、基本的視点とは、未だ積み残され達成不十分な課題のことではないのか。かかる課題は、前改正時における国会の附帯決議の中に顕れている。つまり、基本的視点は附帯決議にあるのではないのか。この附帯決議の各項に関して、調査研究することから始めないといけないのではないのか。そして、各項がどうなっているかを発表することが、次期弁理士法改正の前提ではないのか。

(5)  参考までに、衆議院での附帯決議を最後に転載しておく。附帯決議の中にはすでに解決済みのものもあり、また素案の各論に触れられているものもあるように思うが、少なくとも4項について、検討・解決したとは聞いていないし、素案にも触れられていない。次期弁理士法改正の基本的視点は、附帯決議から出発しなければならないと思う。そうでなければ、素案は日本弁理士会の勝手な要望を記載した程度にしか思われず、立法府や行政府に説得力のある説明はできないと思う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

附帯決議

  1. 弁理士に期待される社会的役割が増大する中で、弁理士を含めた知的財産人材の育成に努めるため、公的支援も考慮しつつ、必要な措置を講じること。また、登録前実務修習については、弁理士に必要な能力を担保できるものとするよう十分措置するとともに、日本弁理士会が行う定期的義務研修については、弁理士の不断の自己研鑚を促し、弁理士の資質の維持・強化に資するよう、適切な制度設計を行うこと。
  2. 弁理士試験の一部免除について、受験者の負担軽減が弁理士の資質の低下を招くことがないよう十分配慮すること。また、海外での知的財産権の戦略的な取得及び活用が重要となっている現状にかんがみ、弁理士の国際的資質を確保するよう、工業所有権に関する条約が論文試験の出題範囲に含まれることを明確にするための措置を検討すること。

  3. 弁理士への信頼性を確保するため、弁理士の名義貸し禁止規定の趣旨が徹底されるよう、弁理士の補助員の業務に関するガイドラインを整備するなどの措置を講じること。併せて、弁理士に対する経済産業大臣による懲戒や日本弁理士会による処分についても、それぞれの措置の運用基準を整備すること。
  4. 特定侵害訴訟代理制度における弁理士の受任等の在り方を含めた弁理士の積極的活用については、訴訟代理の状況や利用者のニーズを踏まえつつ、引き続き検討を進めること。

  5. 地域において知的財産制度の積極的な活用を促進するよう、弁理士に関する情報の提供を含め、地域ブランドや地域資源の活用による地域・中小企業の活性化などの各種の取組みに、弁理士が積極的に関与しうるための施策の充実を図ること。

この記事は弁政連フォーラム第229号(平成24年3月25日)に掲載したのものです。
Copyright &;copy 2000 Political Federation of JPA, All rights reserved.
日本弁理士政治連盟 〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-4-2,弁理士会館内
E-mail: info@benseiren.gr.jp
Tel: 03-3581-1917 Fax: 03-3581-1890
更新日: