PF-JPA




副会長再任挨拶

Kato Asamichi
日本弁理士政治連盟
副会長 白 井 重 隆


 私の専門分野は、主として高分子科学に関する技術分野であり、審査官面談のため、しばしば特許庁審査第三部高分子を訪れる機会が多い。
 最近の特許庁審査官殿の適切かつ親切な対応には、誠にありがたい限りである。
 さて、特許庁13階から窓外に目をやると、眼下に前後して旧・新首相官邸、旧官邸の右側に隣接して第一,第二衆議院会館、参議院会館が、また新官邸の向う側には政界パーティーがよく開かれるキャピトル東急ホテル、このホテル右に隣接して竹下登先生の個人事務所があった秀和TBRビル、その右隣には金丸信代議士の事務所があったパレロワイヤル永田町の赤い建物が垣間見える。思い返せば、世田谷・代沢の竹下邸を何度かお邪魔したおり、浴衣姿でソファにあぐらをかき、百円ライターでうまそうにマイルドセブンに火をつけて吸われていた竹下先生のお姿が目に浮かぶ。
 最近の新聞報道によれば、現在の衆・参議院会館は、建て替えが検討されているやに聞く。ところで、昭和28年か29年の真夏の頃であったろうか、昭和28年の参議院議員選挙において初当選を果たした父・白井勇(宮澤喜一元総理とは参議院議員の同期と思われる)の参議院会館内の事務所を訪ねたことがある。当時の衆・参議院会館は、現在の旧首相官邸のように青々と茂った大樹の間に低層の木造建物として点在しており、前庭には芝生が広がり、緑豊かな自然の静寂な中に、なぜかミンミンゼミの喧騒さが響き、まさに自然の宝庫であった。事務所の各部屋には、後に参議院において重宗王国を築いた重宗雄三先生率いる明電舎製の黒塗りの卓上扇風機が心地よい風を運んでいたものである。
 父・白井勇は、補選を含めて連続4回当選し昭和49年に引退するまで自民党に所属、この間、田中派の参議員世話人代表(衆議員世話人代表は竹下登先生)となり、第一次田中内閣成立に些かなりとも貢献したようである。しかしながら、参議院議員5選を目指したところ、親分の田中角栄氏に引導を渡されて断念した。参議院・田中派を纏めた父が、当該大親分に引導を渡されたのであるから、政治というものはまさに皮肉で非情なものである。
 私事にわたる話が長くなったことをご容赦願いたい。あれから、全く政治とは関係のない市井の一弁理士として過ごしてきた弊職ではあったが、奇縁なもので、弁政連の仕事をお手伝いすることになってから、早いもので、丸4年が経過した。以後、久しぶりで、議院会館などに出入りさせて頂くようになったが、父を知る議員の先生方も、夫人が親戚筋にあたる相沢英之先生はじめ数名に過ぎない。
 さて、弁政連においては、当初から広報を担当させて頂いており、今日に及んでいる。
 この間、前広報委員長である畑中芳実先生、現広報委員長の福田伸一先生はじめ、各広報委員の方々に格別のご尽力を頂いたことをここにあらためて感謝申し上げたい。福田伸一先生には、現在、PA会幹事長という多忙な要職にもありながら、さらに広報委員長を続行していただくことになり、ありがたいことである。
 また、この間、広報委員会では、ホームページ部会を立ち上げ、弁政連のホームページを開設することができた。これには、立ち上げ当時のホームページ部会の各委員の先生方、特に立ち上げ後においても、HPの管理・運営に尽力されてきた同部会の西岡邦昭部会長、澤木紀一委員の人知れぬご苦労があり、今日に至っている。ここに、西岡邦昭先生、澤木紀一先生に対し、改めて深甚の謝意を表したい。
 広報担当として、今後も弁政連フォーラムの編集や、HPの運営・管理、さらに最近発行されていない弁政連ニュースの発刊に向けて、微力ながら全力を挙げたいと考えている。
 ところで、司法制度改革が具体化し、また、本年7月には、知的財産戦略大綱が発表された。このような中で、日本の知的財産制度はどのような方向つけをされるのであろうか。
 以下に、知的財産戦略大綱で提言された知的財産専門職大学院と第三次弁理士法改正について、私見を述べたい。
 まず、知的財産戦略大綱の中で、知的財産に関する「専門職大学院」を創設すべきとの提言があり、一部の新聞報道によれば、この知的財産専門職大学院の修了者には、弁理士試験に対し優遇措置を講ずる方向であるとの趣旨の記事が掲載されている。しかしながら、仮にこのような優遇措置を講ずれば、現在の弁理士試験合格に複数のルートをつけることになり、試験制度が錯綜化するうえ、受験生に対し不公平であろう。
 このような専門職大学院の設置もよいが、民間には既にこれに劣らない各種の研修コースが設置されている。例えば、発明協会の知的所有権研修センターは昭和48年の創設以来、長い歴史と実績を積んでおり、また、知的財産協会の各種研修コースも、高いレベルにある。仮に、知的財産専門職大学院の終了者に弁理士試験に対する優遇措置を講ずるのであれば、上記のような実績のある民間の研修機間修了者に対しても、同様の優遇措置を講じないと公平に欠けることにもなりかねない。
 次に、第三次弁理士法の改正について私見を述べてみたい。知的財産制度を担う弁理士としては、第二次弁理士法の改正により、義務研修・効果確認試験に合格した付記弁理士が特定侵害訴訟に関し、弁護士と共同して訴訟代理権を付与されることになったが、このような、些か中途半端な代理権では、弁理士の二層構造化をもたらすとともに、気概ある理工系の学生を法科大学院へと走らせることになり、ひいては、弁理士制度・知的財産制度の崩壊につながりかねないと、私は考える。
 けだし、理工系学部卒業後、法科大学院(知的財産コース)を終了し、司法試験に合格しても、このような知的財産弁護士では、企業の工場や開発現場を体験しておらず、決して技術に強いとはいえないからである。
 私見ではあるが、第三次弁理士法改正として、弁理士試験を抜本的に見なおし、例えば、大学卒業生に対しては、法文系・理工系に係らず選択科目を免除し、代わりに民法・民事訴訟法を必須科目に追加、新人研修では、侵害訴訟の実務を必修とし、新合格者には、知的財産権全般について、弁理士に侵害訴訟の単独代理権を新合格者全員に付与すべきと考える。私は、弁政連として、主として、このような第三次弁理士法の改正に向けて全力を尽くしたいと考えている。そのためにも、現在の既存の弁理士は、全員が付記弁理士獲得を目指して義務研修・効果確認テストに望み、実績を作っていく努力が必要であろう。
以上

この記事は弁政連フォーラム第117号(平成14年8月25日)に掲載したのものです。
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