PF-JPA



「副会長退任と
特別顧問就任の挨拶」


日本弁理士政治連盟
特別顧問  杉本 勝徳


 はじめに
 本年4月1日から日本弁理士会近畿支部長を仰せつかっておりますが、支部長就任の条件として弁政連副会長を辞任する事になりました。
 弁理士会の支部長に就任すると、弁政連の副会長を辞任しなければならない根拠がよく分からないままに今日に至っています。
 弁政連の活動はすべて弁理士会および弁理士の業務推進のためであり、政治思想やイデオロギーと無関係であることは本より当然です。そしてこのことに鑑みると、支部長が弁政連副会長を兼務してはいけないという論理の正当性はないと考えます。
 近畿において政治家と付き合うときに、弁政連副会長の肩書と支部長の肩書が同時に必要な場合が多々あることを斟酌すべきでしょう。

特別顧問の職務
 本年8月に改正された弁政連規約によると、特別顧問の規定は第8条U役員(5)に「顧問(最高顧問・特別顧問含む)若干名」とあり、第12条に特別顧問の職務として「・・・但し顧問のうち特別顧問は、特定分野に対応するために置くものとする。」となっています。
 「特定分野」とはよく分からないのですが、少なくとも日本弁理士会近畿支部長が特別顧問で「特定分野」を職務ということになると、「近畿に於ける弁政連活動について」が職務の一つとなるのでしょうか。また本部における特定分野は例えば「知的財産権訴訟における弁理士会の対応」等についてそうなるのかもしれません。


特別顧問としての矜持

 小生如き者に特別顧問の職務を与えられたことに、
弁理士としての矜持をしっかり持って対応しなければ、と心を引き締めています。
 さて、本年2月4日は知的財産権および弁理士にとって歴史的な日でした。100年を越える日本の国会で、総理大臣が施政方針演説に「特許権」「知的財産権」を国家の最重要戦略の一つとして演説したのは、
初めてです。
 我々弁理士はその最重要国家戦略の一翼を担うことになり、活躍の場が一層広がると思われます。
 弁政連は総理の施政方針演説に「知的財産権」「特許権」の言葉を入れることに極めて活発に政治活動を早くから行って参りました。それも単にお願いではなく、日本国家の将来にとってそれらが如何に重要かを、膨大な資料を作成して実力国会議員は勿論、何人かの大臣にも説いてまわり、困難な作業を見事になし遂げています。このことに対して今改めて渡辺望稔会長以下要職の皆様に敬意を表します。
 更に数年前から弁理士の矜持を背に、訴訟代理権獲得に奔走した弁政連活動は私にとっても思い出に残るものです。

弁理士会が抱える当面の問題
(1)ロースクールの問題
 2年後からスタートするとされているロースクール卒業生4000人の8割くらいを司法試験に合格させるようですが、ロースクールには法律系の学生ばかりではなく、理科系の学生を入学し易くするということも伝えられています。そうすると司法修習を受けた技術の分かる弁護士が大量に誕生する事になり、現在我々が全力投球して進めている弁理士の訴訟代理権の必要性が希薄になる危険性があります。
 更に言えば仮に理科系の弁護士が年間400人誕生し、彼らが弁護士法3条2項に規定された「弁護士は当然に弁理士の業務が出来る」によって、弁理士業を業務とするならば、弁理士は相当程度の業務圧迫を受ける危険性が考えられます。
(2)行政書士の問題
 圧倒的な資金力による政治力を有する行政書士会が、今後何かにつけて弁理士の業務を浸食する恐れがあります。極端に言えば、特許・実用新案以外はすべて行政書士の業務に取り込む危険性を孕んでいます。これは、3月に行政書士会が有力国会議員に提出した著作権、不正競争防止法、関税定率法関係の業務を行政書士の専業業務と認めるよう要請した書類からも伺えます。
 政治は理論や正義それに必要性によって動いている部分と、利害関係者の力関係すなわちパワーポリティックスで動いている部分のあることを忘れてはいけないと思います。
(3)新民事訴訟法6条改正の問題
 新民訴法6条には「特許権等に関する訴えの管轄」
が規定されており、そこには「特許権、実用新案権、
回路配置利用権、又はプログラムの著作物について・・・当該各号に定める裁判所にも、その訴えを提起することができる。」として、従来の土地管轄に加えて、東京地裁と大阪地裁も特別に管轄とする、いわゆる「競合管轄」の規定があります。
 この競合管轄は、知的財産権全般に渡って規定すべきであるところ、意匠権、商標権、プログラム以外の著作権および不正競争防止法関係を除外しています。このことがどういう影響を与えているかといいますと、特許、実用新案、回路配置、プログラム以外は弁理士の専業ではなく、行政書士も直接関与できる業務である印象を与えてしまっているのです。
(4)新民訴法6条改正に対する弁理士会の対策
 行政書士会が盛んに意匠、商標、著作権を自らの業務と主張するキャンペーンを張っている根拠は、実にそれらがこの新民訴法6条から除外されたことにあると思われます。
 そこで、新民訴法6条の改正については、たとえ東京地裁と大阪地裁が競合管轄から専属管轄に改正されても、意匠、商標、著作権も含めることが日本国家の将来にとって極めて重要でることを、弁理士会および弁政連が積極的に主張すべきであると思われます。
 大所高所から判断すれば、「地方の零細企業や中小企業にとって不利である・・・」と言う主張は今は控えるべきではないでしょうか。
(5)知的財産基本法の制定
 知的財産国家戦略会議の中で「知的財産基本法」制定が確認されました。そしてその中身の条項「案」が出来ています。是に対して弁理士会は早急に、我々の力が充分に発揮できる法案であるよう検討し修正していかねばなりません。
 この事は弁政連の問題ではなく、弁理士会の問題であるわけですが、法案の検討と修正については弁理士会でできるとしても、最後は政治的に動いて理想の法案成立にこぎつけなけれはなりません。弁理士会と弁政連は今、全力を挙げてこれに取り組まなければならないでしょう。
(6)知的財産国家戦略にもっと弁理士の活用を
 冒頭に述べたように、本年は知的財産元年ともいうべき年でありますが、弁理士が国家戦略に深く関与しているとは言いがたいのではないでしょうか。
 本より弁理士会所属弁理士4800名は大きな技術集団を形成しており、このブレーンはどんな大学、どんな研究所よりも優れ、そしてあらゆる分野の技術が網羅され世界の知的財産制度も知っています。
 政府は知的財産基本法を含めてこの集団をもっと活用すべきであり、我々弁理士会もあらゆる国家戦略に弁理士を活用するようにアピールするべきではないでしょうか。政界へのアピールは弁政連の守備範囲でしょうが、弁理士会と協調しながらモノ申す必要があると思われます。そしてそれは経済産業省に止まらず、農水省、文部科学省、法務省そして内閣府から内閣官房に至るまで働きかけることが肝要です。
 「弁理士を日本国家発展のサポーターに!」
 このスローガンで特別顧問は頑張ります。

特別顧問としての決意
 特別顧問という新しい役職に就任した以上は、何らかの結果を残す働きをしないと、数年後には「特別顧問制度廃止」なんてことになっては、森哲也会長と弁政連会員に申し訳ないことになります。
 本年の特別顧問は私と古谷史旺大先輩の二人と聞いていますが、古谷先輩の足元に及ぶ程度の働きはしたいと決意しています。
 最後に一言。
 弁政連の活動は弁理士会の将来にとって極めて重要であり、弁政連の活動なしでは弁理士の将来はあり得ません。従って4800余名の会員は目先のことだけではなく将来のことを考えて、たった2000万円という行政書士会の100分の1に過ぎない政治資金を、せめて1億円程度になるよう、全員が弁政連に加入し、全員が年会費2万円を納入することが必要であります。




  

この記事は弁政連フォーラム第118号(平成14年9月25日)に掲載したのものです。
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