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参議院議員選挙結果と日本弁理士会
  

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日本弁理士政治連盟
副会長 杉 本 勝 徳



1.参議院議員選挙における政権党である民主党の敗北

 7月11日に投開票が行われた参議院議員選挙の結果は、弁理士および弁理士会にとって衝撃的なものであった。
 弁理士の菅直人さんが総理大臣であり代表である民主党が、改選議員数より10名減らして敗北したことと、弁理士会にとって結果が衝撃的なものであったこととは、直接的には関係ないのであるが、先ず民主党の敗北を総括してみる。
 敗北の第1は、唐突な消費税増税政策の表明である。消費税は全国民にとって最も直接的で最も日常的な税であり、最も敏感な関心の高い税であるにもかかわらず、増税の目的と使い道について綿密な試算とシュミレーションを描くことなく増税の表明をしたこと。そしてまた、民主党が政権を取った時に菅直人さんは増税について、「逆立ちしても鼻血も出ないときに考える」と名言を発したが、それから半年も経たぬ内に財務官僚主導と思わせる政策で増税を口にしたことである。
 敗北の第2は、政権奪取時の国民の期待である特別会計の無駄を洗い出し、10兆円〜20兆円を捻出するとした約束に応えきれていないこと、および官僚支配の国政から完全な政治主導の政治に転換するとしたビジョンを示せなかったことである。この事によって民主党に対する国民の期待は失望に変わり、菅直人政権に交代しても選挙直前に至るまで支持率の回復が出来なかったことである。
 敗北の第3は、国民にとって最も関心の高かった事業仕分けでも思うような独立行政法人のムダを洗い出せなかったこと。
 敗北の第4は、国民の賛否両論が分かれた高速道路の無料化、建設中のダム工事全面廃止に見られる公共事業の中止、および子供手当の支給等について国民を納得させる説明ができなかったこと。
 敗北の第5は小沢幹事長、鳩山代表時代の金銭にまつわるダーティイメージを払拭出来なかったこと。

2.弁理士および弁理士会にとっての衝撃

 以上のとおり、弁理士菅直人さん率いる民主党が敗北したことは、同業者を総理大臣に戴いた我々弁理士にとって残念なことだが、私達弁理士及び弁理士会にとっての衝撃とは、そのことではなく、弁理士業に最も理解のある2人の有力議員を失ったこと、弁理士会の理解者だった与党の国民新党が敗北したことである。
 即ち、民主党の弁理士議員連盟の要である瀬進議員と自民党の若手で常に弁理士会のこと考えて頂いた秋元司議員の両名を失ったことである。私達弁理士会は、昨年の衆議院議員総選挙で、数々お世話になった保岡興治代議士の当選を果たせなかった悔いがある。問題を山積している弁理士業にとって、かけがえのない3名の先生を失ったばかりか、与党の国民新党まで敗北したことは余りにも痛過ぎる。何年も掛かって営々と築き上げてきたパイプがプッツンだ。
 これからこのように太いパイプを築き上げるにはどの様にしたらよいか、弁理士会と弁政連にとって重い課題を背負ったことになる。

3.原因の究明

 知的財産制度および弁理士制度にとって、応援団長のような存在であった元自民党司法制度調査会長の保岡興治さんは、弁理士の訴訟代理権獲得や外国業務を弁理士業務にすること、そして知財高裁創設等に政治的に敏腕を発揮していただいたが、その保岡興治さんが私に次のように言われた。「杉本さん、知財や弁理士や言うても票にも金にもならんよ。だけど、天下国家のためには大切だと考えているから一生懸命頑張っているよ」。正に本音である。そして保岡興治さんは昨年の総選挙で落選した。弁理士および弁理士会が保岡興治さんの為にどれほどの応援をしたか。弁政連の個人数人が自らの時間を割いて鹿児島入りした程度である。
 今回またまた弁理士会の応援団である瀬進議員と秋元司議員そして国民新党のために、弁理士および弁理士会は何をしたのか。それも「何で推薦葉書を寄越したのだ」と逆切れする弁理士がいたという。
弁政連は、知的財産制度と弁理士制度に深いご理解とご協力を頂いている場合に限り、推薦依頼があった候補者に推薦状を発行し会員名簿を提出し、秋元司議員、瀬進議員をはじめとする有力候補者に対しては弁政連会長自らが選挙事務所に赴き激励して回っていた。弁理士会の為に尽力してくれて、今後もキーパーソンになる議員に対して、8千人以上いる弁理士や弁理士会が殆ど選挙に協力しない現状は、政治的に弁理士および弁理士会が極めて弱い資格であり団体になろうとしている恐ろしい現状である。

4.弁理士会の今後の対策

 キーパーソンを失い頼りにしている政党が弱体化した今、私達弁理士および弁理士会は政治的に弱い立場になってしまったが、今日で政治が終わるわけでもなければ弁理士会が無くなるわけでもないので、今後どうすれば今回のような衝撃的なことを無くせるか総括しなければならない。
 総括の第1は、全弁理士および弁理士会が政治と自己の業務が密接なことを学ばなければならない。そのためには、弁政連を教師として、弁理士会が義務研修でその事を全会員が学ぶようにすることである。
 総括の第2は、来るべき総選挙に備えて、弁政連がキーパーソンを選定しその当選を目指す行動を開始する事である。そのためには、弁政連の指導のもと弁理士会は全弁理士に対して、擁立するキーパーソンがどれ程弁理士会の為に働いてくれているかを知らしめることである。
 総括の第3は、来るべき総選挙に備えて、弁政連の指導のもと、擁立するキーパーソンに対して全弁理士が個別に当選のための支援をすることである。選挙人名簿の提出、選挙ハガキの署名など方法はいくらでもある。
 総括の第4は、弁政連の活動を支援するための資金を弁理士会が提供することである。弁理士会が弁政連に資金援助する事の法的な正当性については、後日弁政連から理由を説明した要望書が提出されることになっている。

 以上のように、近々1万人になろうとする全弁理士の将来の命運が有力な政治家とどう付き合っていくかに掛かっていることを肝に銘じることである。



この記事は弁政連フォーラム第210号(平成22年7月25日)に掲載したのものです。
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