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新年を迎えて

  

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日本弁理士政治連盟
会長代行 杉 本 勝 徳


1億2752万
 新年おめでとうございます。
 2013年、平成25年の新春を迎えて心引き締まる思いです。平成時代になってもう25年になるのかと、歳月の過ぎ行く速さに、人生は長いようで短いようでやはり短いと思わざるを得ません。感慨に深ける新春ですが、今年も早1ヵ月が過ぎています。
 1万人弁理士が、我が国においてどの様な国家的役割を果たせるのか、政権が代わった今、喫緊の問題として静かにそして深く考えなければなりません。
 日本は資源の無い国と言われていますが、実は世界に誇れる3大資源があります。一つは水資源です、今一つは森林資源です。そして三つ目は1億2752万個の超精密な頭脳資源です。水資源は高度経済成長と全国の針葉樹植林によって山の保水力が失われて、すっかり汚れてしまい、命の飲み水ですら外国から輸入している有り様です。森林資源は林業に従事する労働力の減少によって放置されっ放しで、木材の大部分は輸入に頼っています。その様な現状で頭脳資源だけは健在です。この頭脳資源を確り活かすのが弁理士の国家的役割ではないでしょうか。

知財のインフラ
 政権が交代し、自由民主党に日本経済再生本部(本部長高市早苗自民党政調会長)が設けられ、副本部長として知財戦略調査会会長の保岡興治衆議院議員が就任されました。保岡興治先生は、10年前、私が近畿支部長時代に知的財産高等裁判所の必要性を説かれて、私達弁理士と一体になって政府と裁判所を説得して設立された思い出があります。
 その保岡興治先生が知財戦略調査会会長であられることは、神の采配か、今一度ご一緒に日本の知財国家戦略確立に1万人弁理士が協力できる、正に千載一遇の機会と捉えたい思いです。
 1万人弁理士は、あらゆる技術を網羅し全世界にネットワークを張り巡らす日本唯一最大の技術集団です。その弁理士集団は1億2752万個の頭脳を活かし、国家のグローバルな技術開発戦略を側面から支えるインフラを構成することになります。
 知財戦略の中核は発明であり特許ですが、その特許出願が我が国においては年々減少する一方、隣国中国や韓国の出願件数は相当な勢いで右肩上がりとなっています。特に中国特許庁の統計によると、昨年2012年の特許出願65万3千件、実用新案出願74万件、意匠出願65万8千件となっており、特許と実用新案合わせると実に140万件と言う驚くべき数字が出ています。特筆すべきは特許出願中、外国からの出願は11万8千件に過ぎないのに、国内出願が質はともかく量は54万件近くあることです。中国国内の特許出願マインドが昂揚していることは明らかで、中国の国家戦略が成功していると見られます。

弁理士法
 弁理士は弁理士法によって存在しているのですが(当然のことながら各士業はそれぞれの法律で成り立っている)、他の士業と違って理科系集団である弁理士は、そのことを意識していないことが多く、実は意外と弁理士法の規定の詳細を知らないのが実態です。弁理士の全ての業務および高い倫理性は弁理士法の中で規定されていますが、今の弁理士法には日本の知的財産のインフラを支える充分な規定があると言えません。
 弁理士法第1条には「この法律は、弁理士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、工業所有権の適正な保護及び利用の促進等に寄与し、もって経済及び産業の発展に資することを目的とする。」とあります。この規定は弁理士業務の目的を定めているに過ぎず、弁理士の国家的使命を定めてはいません。
 一方、弁護士法、公認会計士法、税理士法等にはそれぞれ国家的使命が法律上定められています。例えば弁護士法第1条には「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」とあり、税理士法には「税理士は税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」とあり、公認会計士法には「公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。」と規定されています。
 弁理士法の第1条には使命は規定されていないばかりでなく、業務範囲が「工業所有権」と規定されており、工業所有権以外の知的財産権については業務外と思われる様になっています。

弁理士法改正
 上記のように、弁理士の国家的使命が規定されていない以外にも、現在の弁理士法には多くの不十分な点が見られます。
 知的財産全般に於ける業務範囲の規定の中途半端さ、国際業務が圧倒的に増加しているにも関わらず、国際活動を正面から規定していません。更に試験制度においては、国際業務に必要な条約や知的財産に関する国際的理念、知財訴訟に関する知識を担保する試験もありません。また、弁理士として適正な業務を行えるための一定レベルを保障する規定もありません。特定侵害訴訟代理も中途半端です。
 今、日本弁理士会も弁政連も弁理士法の改正に真剣に必死に取り組んでいます。1万人弁理士の皆さん、これから何十年と国家の知財戦略を支える弁理士として、弁理士法の改正に一丸となって意見を発信して下さい。

注:1月の時点で依然として会長職は空席となっておりますが、2月には日本弁理士政治連盟臨時理事会を開催して会長を選出する予定です。

 


この記事は弁政連フォーラム第239号(平成25年1月20日)に掲載したのものです。
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