PF-JPA

会長就任挨拶
―弁理士のパワーアップを通じて
     知財創造立国へ貢献を―

 

Kato Asamichi
日本弁理士会
会長 佐藤 辰彦



  平成17年度日本弁理士会会長に就任するにあたり、一言、所信を申し述べさせていただきます。

 産業のグローバル化やわが国の知財改革の流れの中で、知的財産制度の枠組みが大きく変化しています。ユーザーは、弁理士が、知的財産権創設の分野から、さらに一歩踏み込んで、保護・活用に至る幅広い分野に関与して柔軟に活躍することを期待しています。ユーザーは、より専門性の高い弁理士、知的創造サイクルのさまざまな局面で活躍できる弁理士、国際競争力のある弁理士を求めています。かかる潮流の中で、私たち弁理士に求められている責務は、弁理士自らが業務のあり方を問い、社会における弁理士の役割を自ら大きく変えて、互いに切磋琢磨して競争し、質の高いサービスを提供することにより、国策である知財創造立国構想に貢献することなのではないでしょうか。

 知的財産推進計画2004の中で、弁理士に対して、社会貢献としての地域知財活動が求められています。地域での活動を通じて、弁理士が地域における知財の創設・保護・活用に関与して、地域振興に貢献することが期待されています。日本の知財創造立国実現のためには、大都市や大企業だけではなく、地域や中小企業・ベンチャー企業を巻き込んだ知財活動の全国的展開が不可欠です。そして、これらの知財活動に、弁理士が積極的に関与し、知財推進計画を強力に後押しすることが求められています。

 平成17年度正副会長会は、今われわれ弁理士に求められている社会的責務を果たすべく、多くの施策を推進していく所存です。

 まず、対外的には地域知財の活性化を目指して、「地域知財活性化運動」を大都市圏も含め全国的に展開して行きます。もちろん、これまでも各地域において弁理士は地域知財活動に積極的に関与してきましたが、今年度はさらに一層これを促進したいと考えています。そのために、今年度は、地域の企業活動に密着した弁理士の業務活動を通じて、地域の知財の掘り起こしを行い、地域における「町おこし」や「村おこし」に役立つ活動を行います。「地域ブランド」保護のための商標法改正を好機として、「商標キャラバン隊」を組織し、「地域ブランド」をキーワードに特許その他の知財の掘り起こしにつなげる運動も行うつもりです。また地域に縁のある弁理士を募り、「ふるさと支援隊」を組織し、地元の弁理士とタイアップして地域知財の掘り起こしを支援いたします。

 このような地域活動を効果的に展開させるためには、地域における活動基盤の整備が必要です。そのため、昨年度に承認された全国支部化をさらに推進し、大都市圏も含めた各地域において、日本弁理士会の受け皿が作れるように努力いたします。また、日本弁理士会の地域における受け皿作りの一環として、地域ユーザーの弁理士へのアクセス拠点としての「アクセスポイント」を展開し、地域ユーザーの要望に応えて行きます。さらに、地方自治体と連携してタウンミーティングを開催し、日本弁理士会の活動を地域に浸透させたいと考えています。

 東京圏では、「秋葉原クロスフィールド」に日本弁理士会の拠点を設け、ここで産学官連携活動や異業種交流を展開し、東京圏における新しい地域活動を進めて行きます。この秋葉原クロスフィールドにおける日本弁理士会の活動の一つとして、弁理士と外部人材の交流研修ができる「知財ビジネスアカデミー」を立ち上げ、弁理士同士の研修では実現が困難な、より実践的なビジネスマインドを加味したスキルアップができる環境を提供したいと思います。

 中小企業・ベンチャー企業支援のためには、大企業に対するものとは異なるきめ細かい日常的な支援が求められています。そのため、現在、支援センターが行っている「中小企業支援員の研修」を、全弁理士を対象とした研修に拡大し、中小企業・ベンチャー企業支援に必要なスキルアップを図り、業務を通じた支援活動が効果的に行われるようにしたいと考えています。

 ユーザーは自分をしっかり支援し協力してくれる弁理士を探し求めています。そのための判断材料として、ユーザーから弁理士に関するさまざまな情報を開示することが強く求められています。情報開示に関しては、個々の弁理士が対応していく必要があることはもちろんですが、日本弁理士会としてもユーザーの立場に立った役立つ情報開示を行っていきます。

情報社会にあっては、インターネットを通じた情報配信が不可欠です。今年度は、日本弁理士会のホームページのコンテンツをさらに一層充実させるとともに、正副会長会や支援センターや研修所などの各機関や各支部などの活動状況についても、迅速かつ正確にホームページにアップする体制を整え、日本弁理士会のプレゼンスを内外に積極的にアピールして行きます。

 次に、対内的な活動として、平成17年度における最重要課題は、弁理士法改正への対応です。平成12年に改正された弁理士法の5年後の見直しが平成18年度以降に予定されているため、この法改正に対する対応が不可避なのです。これまでに行われてきた知財改革の中で求められている弁理士として十分に活躍でき社会の付託に応えられるような弁理士制度の構築が必要です。そのためには、知財改革の変化に見合う弁理士の創出と育成が不可欠であり、また、ロースクール下の大幅な法曹増員の中で弁理士独自の資格制度の確立が必要であり、弁理士試験制度や弁理士の業務範囲の見直しなど幅広く検討する必要があります。同時に、弁理士業務の強化のために特許業務法人の制度の見直しなど業務基盤の強化を図るための改正が必要であると考えます。

 今、弁理士には、その持てる業務能力を最大限に発揮し、さらに新しい業務に対応できるように業務能力を開発し、きわめて早いスピードで変化する産業界の変化に対応して、知財の職業専門家としてユーザーのために活躍することが求められています。そのためには、各弁理士の日々の研鑽と努力が必要であることはいうまでもありません。日本弁理士会としては、このような弁理士会員のパワーアップを支援するため、必要なときに必要な情報にアクセスできる環境を整備するため、e−ラーニングの拡大やインターネットを通じた業務支援情報の提供システムなどの拡充と開発を進めたいと思います。

 4月には、いよいよ知財高裁がスタートします。特定侵害訴訟代理業務の付記を受けている弁理士の数も1000人規模となりました。知財の専門家である弁理士が、この新しい知財高裁においても、重要なプレイヤーとして活躍できるように、能力担保研修を継続し,更なる付記弁理士を創出するとともに,すでに付記を受けている弁理士に対するフォローアップ研修なども含め積極的に対応していきます。

 近時、弁理士の業務範囲は拡大し、新たな業務への弁理士の対応力が問われています。特に、知財の活用の活発化を目指した知財の流通・流動化に伴う、知財の信託・証券化、その前提をなす知財価値評価や技術標準らの業務に対応することが、弁理士に求められています。これらの新規業務分野に対しても、知財の専門家である弁理士がしっかりとその職責を果たすことができるようにしなければなりません。そのため、他士業との交流などを通じて、これらの新規業務に対応する付属機関・委員会の活動を強化して行きます。

 最後に、弁理士の大幅な増員と弁理士の業務範囲の拡大により、遺憾ながら弁理士とユーザーとの間における紛争や不祥事も多くなってきています。いくら弁理士業務でよい仕事をしても社会から非難されるような弁理士がいれば、弁理士の品位や信頼を大きく損ねることになります。そのため、改めて個々の弁理士が社会から信頼されそのプレゼンスが高く評価されるように、行動することが強く求められています。そのため、今年度は、コンプライアンス委員会を新設し、真剣にこの問題に対処して行きます。

 以上、所信の一端を申し述べましたが、今、われわれ弁理士、そして日本弁理士会が対応しなければならない課題はこれらにとどまりません。しかし、われわれ弁理士が、今の知財改革の中でその中核をなす存在であると自認する以上、すべてについて積極果敢に取り組まなければならないと思います。私をはじめ平成17年度の正副会長会一同、日本弁理士会の活動がより実りあるように精一杯努めますので、皆様の温かいご支援とご協力を賜りますようお願いいたします。

この記事は弁政連フォーラム第149号(平成17年4月25日)に掲載したのものです。
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