PF-JPA




ロースクール卆弁護士の出願代理

 
  
日本弁理士政治連盟
会 員 田辺 徹
 
 

 弁理士の侵害訴訟代理に関連して、弁理士の習得すべき訴訟関係の知識が大きく議論されているが、なぜ弁護士の出願代理については議論があまり行われないのであろうか。
 訴訟知識に乏しい弁理士の侵害訴訟代理と、特許や商標の出願知識に乏しい弁護士の出願代理は、同程度に問題とすべき課題である。
 これから、弁護士(とくにロースクール卆の弁護士)の数が大幅に増加することは確実である。その場合、特許や商標の出願代理を重視する弁護士の数がどれくらい増えるかが心配になる。
 私は、日本はアメリカのようにはならないし、なってほしくないと思っているが、10年後、20年後に、運悪くアメリカのように出願代理を専門とする弁護士の数が多くなる可能性がないともいえない。
 ご承知のように、アメリカのパテント・アトーニィ(特許弁護士)の大半は出願代理を専門としている。彼らの仕事内容は、日本の弁理士とほとんど同じである。そして、私の知るかぎり、出願代理を専門とするパテント・アトーニィは、ロースクール卆業後に訴訟代理をやろうとしたが、成功しなかったため、やむをえず出願代理を専門にせざるを得なくなった人ではない。ロースクールに「入学」する時点で、すでに積極的に出願代理を専門にすることを希望していた人が多い。
 わが国でも、将来、この種のロースクール卆の弁護士が多くなる可能性があると思うが、どうであろうか。
 その場合、アメリカと違って、日本の弁理士会と特許庁の両方にとって問題になると予想されるのが、非弁理士である弁護士の出願代理である。特許や商標の出願知識に乏しい弁護士が、弁理士として登録せず、したがって日本弁理士会に所属せずに、多量の出願を代理することが可能なのである。
 従来の司法試験を合格した弁護士は、この点に関して既得権があるが、これから新しく生まれてくるロースクール卆の弁護士には、今のところ、まだ既得権がないと思う。現行の弁理士法と弁護士法でいう「弁護士」には、ロースクール卆の弁護士は含まれない、と解釈できる余地がある。
 そこで、ロースクール卆の弁護士については、従来の弁護士とは違い、特許や商標の出願代理に必要な知識の試験をして、それに合格したロースクール卆の弁護士のみが弁理士として登録して、はじめて出願代理ができるようにすべきではなかろうか。
 これは、アメリカの例をみても明らかなように、特許庁にとっても、ユーザーにとっても、重要なことである。そして、弁理士会にとって、今こそ、それを実現できる最高の(おそらく最後の)チャンスである。


この記事は弁政連フォーラム第108号(平成13年11月25日)に掲載されたのものです。

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