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「政権公約を実現する会」総会で
  弁政連の古谷会長が知財戦略について講演


 1月28日(木)、午前11時40分から衆議院第二議員会館会議室において民主党「政権公約を実現する会」総会が開催され、総会終了後50分間にわたり古谷史旺会長が日本再生のための知財戦略について講演を行いました。今回の講演は大畠章宏衆議院議員(会長)から要請があり実現したもので、「鳩山政権への提言」と題して“日本再生のカギ『知財戦略』”について20数名の所属議員を前に、政治連盟が以前から訴えて続けて来た地球温暖化対策に欠かせない「研究開発」、「知的財産権の包囲網の構築」、「世界標準化」の3つのキーワードについて説明しました。
講演終了後の質疑では、所属議員から地球温暖化対策基本法と地球温暖化対策本部の動向、人材と技術流出の問題、環境技術と技術標準化の重要性等の様々な具体的質問があり、古谷会長が実務と実態を交えて時間の許される限り詳細に回答しました。当日の講演と質疑の内容を次のとおり報告させて頂きます。
「政権公約を実現する会」講演会報告
○議員
これから知財戦略で日本再生を図りたい。そのためには、知的財産権を憲法にしっかり明記することが必要であると日頃から主張されている日本弁理士政治連盟の古谷会長から日本再生のための知財戦略について講演して頂きます。

○古谷会長(講演要旨)
30年前にアメリカの経済状況はどうであったか。日本から安くて良い製品が大量に流れ込みアメリカ経済は壊滅的な打撃を受けた。1985年にレーガン大統領が就任するや否や、アメリカはそれまでのアンチパテントからプロパテントに政策の大転換を図った。物づくりから知的財産で金を稼ぐ転換で経済の復活を果たした。やがて、韓国、中国の台頭により、物づくりの地位を奪われた日本は、暗くて長い不況から脱出できないでいた。小泉政権が誕生した時に、知財立国を提唱し進言した。小泉首相は国会の所信表明演説の中にそのことを採り入れ、知財戦略が一気に加速し、知財高裁創設などの大改革が行われた。民主党も、大畠先生、簗瀬先生、古川先生を中心に、ヤングレポートに匹敵する“はばたけ知的冒険者たち”を策定公表し、経済の復興を成し遂げた。
鳩山首相は国連総会でCO2などの温室効果ガスを2020年までに25%削減することを発表したが、その具体策がハッキリしていない。我々は環境技術にスポットを当て、これにより日本経済の復興を果たして頂きたいと念じている。そのためのレポートを纏め、提言させて頂く。
しかし、CO2などの環境技術開発、新エネルギー技術開発には多額の投資が必要で、企業の負担は大きい。ある会合で亀井金融大臣にお会いした時に、10兆円規模の予算措置が必要と申し上げた。環境技術、エネルギー技術の開発に国の予算を付けなければ技術開発は進まない。25%削減の目標達成は難しい。
 日本経済を再生するためのキーワードは3つである。1つは、技術開発の促進である。それには国の予算措置が必要なことは先ほど申し上げた。2つは、世界に特許網を張り巡らせること。3つは、特許網を世界に構築した後に技術の標準化である。特許には有効期間がある。その期間を過ぎれば誰でも当該技術を自由に使える。それでは意味がないし、技術を独占させたままでは地球環境は改善されない。技術の標準化を目指せば、その技術が使われ続ける限り、日本企業は潤い、利益を生み出し、国の税収も増える循環が整う。これが正に国家戦略ではないのか。
次に、知的財産権に対する啓蒙が必要である。憲法に知的財産権尊重の精神を明記し、創造的な技術を生み出し、それを守っていくことの大切さを子供の時からしっかり教育していくこと。創造することの大切さ、それを真似しない、尊重することの重要性を教育することが必要である。
次に、我が国は産業財産権の所管は特許庁、著作権は文化庁、科学技術は文部科学省、輸出入税関での水際取締りは財務省、種苗法は農林水産省と分かれているため統一的な意思決定が遅くなる。アメリカは意思決定が早い。縦割りの弊害を改め「知的財産権庁」構想のようなものが必要である。縦割り省庁の弊害を打ち砕いて頂きたい。視座が低くなるが、特許制度、弁理士制度、にも問題はあるが、後日改めて説明させて頂きたい。
最後に苦言を呈しておきたい。自民党から民主党に政権が移って4ヶ月が経った。まだ4ヶ月という人も居るし、早や4ヶ月という人も居る。私は、早や4ヶ月と言いたい。鳩山総理、小沢幹事長の金銭問題で政策実行が停滞している。国民の大多数は、こんなことの追求を期待しているのではなく、景気浮揚策の実行である。見ていると、小沢幹事長の陰に怯えて何も言えない、何も出来ない。あなた方国会議員は小沢幹事長に信託されているのではなく、国民に信託されている。そのことの自覚をシッカリと肝に銘じて行動して貰いたい。ガンガンやらないと夏の参議院議員選挙では大敗する。熱し易く冷め易い日本人の国民性を知るべきだ。

(質疑応答)
○議員
鳩山総理の25%削減の話について説明すると、この話は他国もCO2削減に協力をしてもらうというのが前提である。アメリカと中国でCO2を世界の50%以上排出しているので、この2国の協力が不可欠である。特に、中国の火力発電の排出量が大きいので、日本は中国とのEPAを通じて交渉し中国のCO2を減らしていくことが重要である。中国、インドと話をしてCO2を減らすためのスーパー火力発電所を作ることも考えられる。外国を巻き込んでいかないとCO2は削減できない。鳩山総理は、このような戦略的な考えを視野に入れて対応を考えておられることを申し上げておきたい。

○議員
古谷先生から民主党は25%削減について、具体的に実行するようにとのアドバイスを頂いた。また、具体的提案として「地球温暖化対策本部」を設置するようにとの提言も貰っている。この辺りは、今どのような状況になっているのか。

○議員
政府の関係閣僚委員会で検討中である。仙谷大臣、小沢大臣が中心になって検討しているが、本年3月頃に「地球温暖化対策基本法」を環境省から提出し今国会中に成立させる方向で進めている。この中に地球温暖化対策本部設置も検討されるだろう。

○議員
我が国の知的財産権については、登録されているものと、人についているものとの二通りがある。例えば、日立製作所の幹部が中国に連れられて、特許という形ではなく人についている技術が流出するという場合はどうにもならない。長年にわたって培われた技術、技能が安易に使われることについて産業界は懸念を持っている。古谷先生のご意見をお伺いしたい。

○古谷会長
その人が持っている固有の技術とか技能・知識が海外に流出する根本原因は、そういう人達への国、企業の配慮が欠けているからだと思う。流出していく技術者の多くは、むしろ愛国心の強い方が多いと思っている。
 先だって行われた事業仕分けで、“どなたかが大型スーパーコンピュータの開発で世界一を目指すのではなく、何故二番を目指して悪いのか”といった考えが象徴的だと思う。一番を目指さないで何故二番が採れるのか、何故予算を削るのか、技術立国、知財立国が泣ける。こういう考え方が蔓延れば、優秀な技術者の海外流出は止まらないと思う。

○議員
環境技術で飯を食うためには、どのような技術で飯が食えるのか。例えば、日本の鉄鋼技術は素晴らしいものがあるが、中国の鉄鋼会社にこの技術をはめ込んだらCO2は半分位になると聞いている。日本は、どのような取り組みをすれば飯が食えるようになるのかお伺いしたい。

○古谷会長
技術は日進月歩。ドンドン進んでいる。古い技術ではなく新しい技術を開発し、特許で抑え、それを中国で使わせ、ロイヤリティーを得ればよい。中国に限らない。世界で使わせればよい。世界に特許網を構築し、やがて国際標準化させる戦略を立てる。そうすることによって無期限に日本の技術が使われて利益を生み出すことになる。まず、知財で守るということが無ければ、技術の海外流出でしかない。

○議員
医療機器について日本には優れたものが多い。例えば、血糖値測定器で一部を取り替えれば何度も使えるという素晴らしい機器でも、困ったことに中国とアメリカが手を結んで、中国はアメリカの製品を買って日本の製品を買わないで、中国はできる範囲で基準を設けて日本の技術を排除するという行為をする。このような行為を戦略的に解決できないか。

○古谷会長
新しい製品は特許に守られていれば使うことはできない。次のステップとしては当該技術の技術標準化である。しかしながら、現状では国を挙げての技術標準化への取り組む姿勢が弱いと思う。技術標準化を目指すためには、国がしっかり戦略を立てサポートしてやらないと難しい。企業や経済産業省だけで対応しても無理で、国の中、例えば国家戦略室の中にそういう組織を組み込んで頂きたい。
 
 

この記事は弁政連フォーラム第205号(平成22年2月25日)に掲載したのものです。
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