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1.秋元 司参議院議員と古谷弁政連会長が対談(5月10日)



 5月10日(月)、午後1時から日本弁理士会において秋元司参議院議員(第22回参議院議員通常選挙・比例代表選出議員)と古谷弁政連会長が対談を行ないました。秋元議員は自民党弁理士制度推進議員連盟の中心メンバーで、日頃から弁理士制度の拡充強化に一生懸命取り組んで頂いております。今日は、日本弁理士政治連盟も推薦している現職最年少の秋元議員の選挙活動の様子もお聞きしながら、我々の直近の重要問題について協力をお願いしました。具体的には、1.弁理士試験合格者の大幅増員、2.特許パック料金制度、3.外国法事務弁護士の日本での法人設立を認める法案の3点について意見交換を行いました。先ず古谷弁政連会長から説明と要望を行い、秋元議員から忌憚のないご意見をお伺いしました。対談の内容は次のとおりです。






1.弁理士試験合格者の大幅増員について

○古谷弁政連会長
 特許庁ともやり取りしているが秋元先生の意見をお伺いしたい。市場原理主義の行き過ぎで、昨年、弁理士試験の合格者が813名となった。その前は約500名、更にその前は約300名であった。813名の合格者の中で実務未経験者が4割近くもいること自体、異常としか言いようがない。何のための大幅増員かと糾したい。
 特許事務所で包容しきれないから、実務未経験者の弁理士が仕事を引き受けることとなる。ワリを喰うのは鑑識眼のない中小・零細企業であり、国の政策として如何なものかと疑問を呈さざるを得ない。また、国内の特許出願は40万件から30万件程度に落ちている。70%を弁理士が代理しているから、ザッと計算して150億円程度のマイナスとなり、特許事務所の経営を圧迫している。
 このような状況を無視して弁理士数を増やし続けることに、ハッキリ言って反対である。まず、昨年並みの500名程度に抑えて、以後、漸次縮減して貰いたい。以前、大幅増員の理由が、地方に弁理士がいないということであったが、弁理士会が全国にネットワークを構築しており、いつ、どこでもタイムリーに対応できる仕組みが完成しており、その心配は払拭されている。
 試験については、工業所有権審議会弁理士審査分科会が審議しており、ここが中々人数縮減を行なわない。知財推進計画2009でも「大幅増員」から「必要な増員」に方向転換を打ち出しているにも拘わらず、政府の方針を守っていない。
 これまで弁理士になる動機としては、一定以上の収入が確保できること、社会的評価が高いこと、が挙げられるのに、今は食べていけない状況であり、とても受験動機にはならない。
○秋元議員
 政府は市場原理主義のもと弁護士の大幅増員を行なってきた。私は、当初から問題があると言ってきた。外国からの圧力で、外国法事務弁護士の手足が必要ということで人数を増やしてきた経緯がある。この煽りを受けて弁理士も増員を行って来た。地方に弁理士が居ないという理由で増員してきたが、弁理士は特殊な専門性が必要な仕事をしており、高度な能力担保をした弁理士に仕事を依頼できることの方が重要である。弁理士は技術的高度な分野を仕事にしている資格であり「質」の確保が最も必要である。ただ単に人数を増やせば良いというものでもない。

2.特許パック料金制度について

○古谷
 知財推進計画2010の骨子に「特許パック料金制度」を設けるという話がある。これは特許庁手数料10万円、弁理士手数料10万円で併せて20万円で出願を引き受けるという話で、誰が不足分を負担するのか未だ中身が詰まっていない。弁理士の費用は大体25万から35万程度で、これを10万円でやれというのは無理がある。
○秋元議員
 国や特許庁が弁理士手数料を決めることになれば、弁理士は特許庁に何も言えなくなる。また、料金が決められれば弁理士の皆さんは努力しなくなり優秀な人材が育たない。このような政策は採るべきではない。この制度は社会主義政策のようにも見える。民間は競争社会において努力してもらうことが重要で、競争の中で能力を向上させて行くことが必要である。特に弁理士には勉強が必要で、それ相応の報酬を貰うことが条件である。弁理士はもっと勉強し成長すべきであって、この制度は弁理士の努力を阻害する要因になる。絶対に認めることは出来ない。
 特許庁の審査請求料については、国が高い料金設定をするのはどうかと思う。昔、無駄な出願を減らすために高い料金設定を行なったということを聞いたことがあるが、今企業は国際競争にさらされており、日本の企業が競争に勝ち抜くためには特許出願についても企業の自由裁量に委ねるべきである。官が料金を決めるのではなく、民間の考えに任せるべきである。特許のような特別分野については、受益者負担という考え方ではなく国が支援し、企業がもっと権利を取って競争力を高めることが知的財産立国の在るべき姿だと思う。

3.外国法事務弁護士の日本での法人設立を認める法案について

○古谷
 外国法事務弁護士の法人化の問題がある。弁理士の仕事は外国出願関連業務が大きなウエートを占めている。現在、組合形式は認められているが弁護士会に登録する義務があり制限も多い。今回の改正は、外国法事務弁護士に法人化を認めて各地域に支店を設けることができるようになる。また、外国法事務弁護士と日本の弁護士が共同で法人を作ることも出来る。弁護士法第3条2項で弁護士は弁理士の仕事が出来るので、外国法事務弁護士に弁理士の仕事がドッサリ持っていかれる恐れがある。日本はアメリカのように訴訟社会になってしまう。
○秋元議員
 古谷先生の説明をお聞きして、まず大事なことはイコールフッティングが必要である。アメリカの弁護士制度は、どのようになっているのか。相互主義の観点からアメリカの制度しだいではないか。外国法事務弁護士が日本国内で弁理士と同じ仕事ができるというのは、国益に適わない。“知財の安全保障”という観点からも、この件は重要である。

 

この記事は弁政連フォーラム第208号(平成22年5月25日)に掲載したのものです。
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