PF-JPA
 


1.大畠章宏経済産業大臣と会談(12月2日)
2.吉田おさむ衆議院議員、日本経団連・続橋聡産業技術本部長と懇談(11月24日)

大畠章宏経済産業大臣と会談
  12月2日(木)の午後2時から経済産業省大臣室において大畠章宏大臣と会談しました。日本弁理士政治連盟から古谷史旺会長、水野勝文副会長、富崎元成副会長、榎本英俊副会長が訪問し、特許出願件数激減対策の一環として研究開発促進税制に関する平成23年度税制改正について要望書を提出しました。これは政府税制調査会が法人税引き下げの代替財源として研究開発促進税制等の見直しを打ち出したため、我々は日本が科学技術創造立国を標榜し産業国際競争力の一層の強化を図る観点から、高度技術の保持が必要で、そのためには持続的な研究開発・技術開発投資が重要との認識から反対を表明しました。
 
 最初に、古谷会長から研究開発促進税制の廃止には反対であることを表明し、加えて研究開発投資における政府部門の投資額を増大させること、特許庁のこれまでの審査優先から出願人優先へ方針転換を促し、出願人が特許価値を享受できる魅力ある特許制度の構築を強く求めました。
 大畠大臣からは研究開発促進税制については、当然継続が必要であること、加えて恒久化も求めていくことを承りました。また、政府部門の研究開発投資の重要性もご認識頂き、特許行政においても事務処理中心からプロパテント政策の一層重視にもご理解を頂きました。さらに、東アジア経済圏における特許ネットワーク構築の必要性についても言及されました。
 続いて、富崎副会長から我が国の知財戦略を論ずる場合、省庁と学識者だけで論ずるのではなく、必ず大勢の実務家、特に弁理士を加えることを要望、水野副会長から我が国の学生に対して、もっと知的財産権教育を強化する必要性から文部科学省だけに任せるのではなく経済産業省・特許庁も積極的に取り組むことが重要との意見を申し上げました。
 最後に、大畠大臣と古谷会長が固く握手を交わし、大畠大臣からは今後も弁理士の皆さんの意見を聞きながら知財戦略を推進して行くとのご示唆を承り、古谷会長から我々も大臣をしっかり支えて行く決意を申し述べ30分間にわたる会談を終えました。
   
   
要 望 書
平成22年12月2日
経済産業大臣 大 畠 章 宏 先生

日本弁理士政治連盟
会 長 古 谷 史 旺

研究開発促進税制の廃止反対

〔要望事項〕

 日本弁理士政治連盟は、政府税制調査会及び民主党における法人税減税の議論での『研究開発促進税制』の見直しに、以下の理由で反対します。

1.はじめに
 政府税制調査会では、2011年度税制改正に向けた議論が始められている。民主党は、この改正に向けて、要望書を11月末に政府に提案すると伝えられている。この中で、我々は法人税減税の議論に見過ごせないものがある。即ち、法人税減税の財源として、平成15年度に抜本的に改正された『研究開発促進税制』の見直しが伝えられている点である。
 狭い国土に資源もない我が国が、今後も世界に誇る高度の技術を今以上に保持し、この技術で経済的な発展を持続して世界に伍していく必要があり、このためには、持続的な研究開発が重要であることはいうまでもない。一方、日本経済は、リーマンショック以来の景気低迷、中国等のBRICsの台頭、人口構成の高齢化による内需不振、円高等、予断を許さない状況である。
 これを打開するには、今まで以上に官民が一体となって、研究開発により世界トップの製品、サービスを開発し、産業の高度化を図る以外に、日本の未来はない。

2.研究開発促進税制
 平成15年度に抜本的に拡充された『研究開発促進税制』は、研究開発に伴う機材等による需要創出効果、雇用効果、技術ストック(注1)の上昇による生産性の上昇等によるGDPの押し上げ効果があったと言われている(注2)。
 即ち、『研究開発促進税制』により誘発される研究開発投資は、短期的には、一般的な公共事業より景気刺激効果があるとされている実験機器等の高度な研究機材等の調達、研究開発に関わる人件費等による短期的な景気刺激効果と、長期的には研究開発の成果によるイノベーション効果である。結果として、これらの効果は『研究開発促進税制』による減税を上回る税の増収を産むと言われている。
 他方、昨年の日本の研究開発投資は、景気低迷により減少しており(注3)、これに伴ってその成果である技術ストックの指標の一つである特許出願件数は低下している。新興工業国の台頭による世界的な低価格化競争、円高、高い法人税等により工場の海外移転に伴って、日本国内の空洞化は、研究開発も例外ではない。
 このような状況下で、『研究開発促進税制』が廃止されると、法人税減税の効果どころか逆効果となり、研究開発に伴う機材等の調達量の低下による短期的な需要創出効果の低下、雇用情勢が厳しい折に高度技術を有した人材の雇用の減少、長期的には技術ストックの減少による生産性の減少等による負のスパイラルに入りかねない。取り分け、昨今問題になっている若年層の雇用の減少、中高年層の海外への流出に繋がる。
 また、財政難のため、事業仕分けで話題になったように、スーパーコンピュータ等の学・官による研究開発投資も減少傾向であり、これを景気低迷状態の民間企業による研究開発投資が補う状況でもない。
 以上の説明から理解されるように、法人税減税の財源として『研究開発促進税制』の見直しで、これが廃止されると、日本全体の研究開発投資が減少し、日本の技術の優位性はなくなり、長期的には日本経済そのものが負のスパイラルに入りかねない。
 よって、日本弁理士政治連盟は、平成15年度に抜本的に改正された研究開発促進税制の見直しには、国家的損失により反対する。


(注1)科学技術、特許等の知的財産権、ノウハウ、人が有している技能等である。
(注2)「研究開発促進税制の経済波及効果について」平成17年4月28日、経済産業省発行
(注3)総務省統計局「科学技術研究調査報告書」平成21年度版
 

吉田おさむ衆議院議員、日本経団連・続橋聡産業技術本部長と懇談
  政府税制調査会の平成23年度税制改正に関する研究開発促進税制等の見直しに対応するため、平素から厚誼を頂いている経済産業委員会委員の吉田おさむ衆議院議員と11月24日(水)の午後3時から議員会館において古谷会長、水野副会長、福田副会長が面会し、我々の要望である「研究開発促進税制の廃止反対」について意見交換を行いました。吉田議員におかれては、民主党税制改正プロジェクトチームの審議内容にも精通されておられることから、情報提供をお願いし今後の対応策についてアドバイスを頂きました。この時に、党の平成23年度税制改正に関する提言が11月末位に決定されること、党として「研究開発促進税制」については、日本の国際競争力の源泉である当該税制を廃止することは、経済成長を阻害する要因になるとして注意を要するとの認識であることをお聞きしております。
 また、日本経団連においても「研究開発促進税制の見直し」について反対を表明、加えて当該税制の恒久化を提言されているとの情報から、我々としても日本経団連と連携した方がより効果的であるとの判断から、以前懇談の機会を持ったことがある産業技術本部の続橋聡部長に早速面会を申し入れ、11月29日(月)の午後2時に古谷会長、水野副会長、富崎副会長が経団連会館を訪問し続橋部長と意見交換を行いました。今後とも日本経団連とは当該税制はもとより知的財産制度全般にわたって情報交換、協議、連携して行くことを申し合わせました。

この記事は弁政連フォーラム第215号(平成22年12月25日)に掲載したのものです。
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