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特許法等の一部を改正する法律が
 6月8日に公布
 その対応報告(第2弾)

 5月27日(金)の衆議院経済産業委員会の質疑に向けて、最初に質問者である委員の自民党、望月義夫議員と面会し、引き続き、質問者である理事の公明党、佐藤茂樹議員との面会を行いました。望月議員に関しましては、先月号の弁政連フォーラムに掲載し、深いご理解を頂いたことをご報告させて頂き、写真も掲載させて頂いております。
 さて、5月26日(木)、古谷弁政連会長、谷山副会長、水野副会長、富崎副会長と日本弁理士会の西出眞吾副会長が衆議院第一議員会館の佐藤議員の部屋を訪問し、我々の5つの要望である「ダブルトラック」、「期間徒過に対する救済手続きの導入」、「特許審査請求料引き下げ」、「東日本大震災の復興に向けた知財からの提言」、「望ましい弁理士試験制度」について詳しく説明を行ないました。佐藤議員におかれては、経済産業委員会委員を長年にわたり務められ、知的財産制度にも精通されておられることから、我々の要望説明に対し直ぐにご理解をお示し頂きました。
  
佐藤議員を囲んで(谷山・西出・佐藤議員・古谷・水野・富崎)
   ついては、特許法案及び5項目の要望内容は、我々の最大関心事でありますことから、5月27日(金)の衆議院経済産業委員会での望月議員と佐藤議員の質疑応答全文を今月号に掲載させて頂き、特許法案に対する弁政連の活動の結果を報告させて頂きます。
 なお、会議録原文を読み易くするため副題を付けさせて頂きました。特許法案は、27日の衆議院経済産業委員会可決を経て5月31日成立、6月3日公布の閣議決定後、6月8日に官報において「平成23年法律第63号」として公布されております。施行期日は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する、となっております。同時に成立しております「不正競争防止法の一部を改正する法律」も、6月8日に法律第62号として公布されております。施行は、公布の日から6か月以内であります。

佐藤茂樹議員(経済産業理事)と古谷弁政連会長


第177回国会 衆議院 経済産業委員会
(平成23年5月27日)
会議録 抜粋

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 本日の会議に付した案件                           
 政府参考人出頭要求に関する件                       
 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)(参議院送付)
 不正競争防止法の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)(参議院送付)
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【望月義夫議員質疑】

●田中委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。望月義夫君。

●望月委員 おはようございます。それでは、早速質問に入らせていただきたいと思います。
 
[特許出願件数の減少は科学技術立国の観点から由々しき問題]

 まず、特許法の方から質問させていただきます。
 グローバル競争が激化する中で、我が国の産業の国際競争力を高めるためには、知的財産の戦略的な創造、保護、活用を図ることが極めて重要であります。これは端的に言いますと、より早く、より安く、特許料、申請するのに、それからまた、より強い権利保護といいますか、そういったことが基本理念の中の具体的なことではないかなと私は思っております。
 しかし、我が国の状況を見ますと、十年前には世界全体の四〇%近く特許の出願があった。ところが、二〇〇九年では一五%。それからまた、我が国は知財立国というものを標榜してきましたけれども、これは凋落的な状況にあるのではないかなと我々はまさに心配をしているわけでございます。世界の動向を見ても、アメリカだとか中国、さまざまな国が倍々でふえてきている。それが我が国は一体どういう状況かといったら、まさに十年前には四十四万件だった出願が、今は三十四万件。
 これは一体どういうことなんだろう。基本的な考え方をしっかりしていかないと、我が国は、まさに今原子力の問題でいろいろな問題がありますけれども、エネルギーも、早く言えば資源も何もない国である、まさに知財立国で生きていくしか仕方がない、科学技術立国、さまざまな問題がございますけれども、その基本的な我々の国の大切な財産を失うことにならないよう、今まさにそういうようなときに来ているのではないかな、私はこのように思うわけでございます。
 知的財産を取り巻く環境も全く変化をしているわけでございますけれども、これはイノベーションを通して促進していくことが大切でございますけれども、今言ったような問題を踏まえて、問題意識にこたえて、今回の法改正がそういうことになっているかどうか、基本的な考え方をまず大臣からお伺いしたいと思います。

●海江田国務大臣 望月委員にお答えをいたします。
 今望月委員から御指摘のありましたように、近年、我が国の特許の出願数というのは減少をしております。この理由は幾つか考えられますが、一つは、やはりリーマン・ショック以来の景気の停滞ということでございます。それから、出願人が出願を厳選しているということも一つの理由になっておろうかと思います。
 他方、企業等のユーザーが特許権を適切に保護、活用できるようにし、特許権を取得する魅力を一層高めることは、まさにイノベーションを通じた我が国の競争力を高める上で大変重要なことであるという認識を持っております。
 このような観点から、今御審議をお願いしております法律案は、社外の技術も活用して研究開発や製品化を行うオープンイノベーションの進展に対応して知的財産制度を見直すとともに、中小企業等のユーザー利便性の向上や、委員先ほどお話のありました迅速さ、紛争の迅速かつ効率的な解決を図ることを目的としたものでございます。
 以上です。

●望月委員 基本的な考え方を聞かせていただきました。
 今、私は、冒頭は若干きれいごとを言っただけのことでございまして、ちょっと心配なのは、四十四万件が三十四万件と余りにも低くなっている。これは一説によると、余りにも多いから、厳選しているというよりも、余りくだらないものをたくさん出すんじゃないよというような指導があったとかないとか、さまざまな意見がございます。これはともかくとしても、そういうようなことに関してさまざまな問題がございますので、ちょっと深く話をしていきたいと思います。
 
[通常実施権の第三者対抗要件について]

 ライセンス契約の保護の強化ということでございます。
 最近は、一つのものに対してさまざまな特許のライセンスを結んでいるわけでございますけれども、世の中が昔と違って、昔だったら若干いかがなものかなというものが当たり前になってきている時代でございまして、MアンドA、要するに企業買収だとか企業合併だとか、自分たちの足りないところを企業を買収したり合併したりすることによってより強みを増すということもございます。
 これによって、例えば、よく言われることは、DVDの中に一体どれだけの特許が含まれているかというと、約二千件の特許が含まれていると。そうすると、ビジネス界の現場を考えると、すべてを登録しろなんというのは、一つの製品で二千件ですから、それはちょっと不可能に近いような状況にあるということでございます。
 現行法では、特許法の第九十九条に基づいてライセンス登録がされていないと、特許が一つでも譲渡された場合、ライセンスを受けている事業が差しとめを受け、製品全体が製造販売できなくなるおそれがある。
 そういうことでございますので、ちょっとうがった考え方をすると、ライバルの会社をつぶすのにちょうどいい。これは一見合法的な手段で、ちょっとしたその中の一つのライセンスを引っ張り出すことによって、製品を差しとめしちゃう。それによって、最近の製品というのは陳腐化するのが早いですから、その間にどんどんその会社は疲弊してしまうというような形で、ライバル会社をつぶすのには格好のことになってしまうというようなこともございます。
 こういった悪意を避けるために、ライセンスの登録をしなくても第三者に対抗できる制度の導入というのは、産業界では長く要望されてきたことでございますので、これは評価できるとは思います。
 しかし、一方で、この制度が導入されると、第三者にライセンスの存在が登録によって示されることがないため、ライセンスの存在を知らないで高い金を払って、ああよかったというような方に、早く言えば特許権を譲り受けた善意の第三者とも言える人たちに不測の事態が生じてしまうというようなことも起こり得るわけで、これは非常に難しい問題でありますけれども、この不測の被害を防止するため、十分な周知徹底というものは必要だと思いますが、これはどうお考えでしょうか。

●岩井政府参考人 お答え申し上げます。
 今先生御指摘のように、この法律を通していただきますと、特許権を譲り受けた第三者は、仮にライセンスの存在を知らなかった場合であっても対抗できなくなるというふうな効果を伴うわけでございまして、実務の方を伺いますと、特許権譲渡の際には、通常、ライセンスがあるかどうかということにつきましては、これが売り買いをする特許権の価値を評価する重要な材料になることから、特許権を譲り受けようとする者は、譲り受ける前にライセンス契約がついているかどうかということを確認されるやり方が一般的なやり方としてはあるんだということを承っております。
 したがいまして、特許権を譲り受ける際には、ライセンス契約の有無などを確認する、いわゆるデューデリジェンスと言われておりますけれども、こういったことの励行が、これまででも重要なわけでございますけれども、この法律をお通しいただいた後はさらに重要になってくるのだろうと思います。
 こうしたことがございますので、今後、制度の改正につきまして、全国の主要都市で二十回程度説明会を行わせていただこうと思っておりますし、ホームページ上でも法改正の中身をよく周知をさせていただこうと思いますけれども、今のようなことが非常に重要になってきているという点も重点を置いて、ぜひしっかりと周知をさせていただきたいというふうに考えておる次第でございます。

●望月委員 これはしっかり周知徹底をしていただきたいと思います。
 
[真の発明者が保護される制度の強化]

 次に、最近は共同研究、共同開発、産学官ということでさまざまな組み合わせ、そして新しいものが次々と生まれる、これは非常にいいことだと私は思っておりますが、最近いろいろ我々が聞くのは、こういう共同研究をしていて、例えば大企業だとか金を出した人たちが、ある日突然に、勝手にと言ったらおかしいんですけれども、特許権の登録をしてしまう。そうすると、中小企業を初め弱い方の人たちは、泣き寝入りをせざるを得ない。だから、大企業や、産学官というものはやりたくないなというような声が出かかっているというのが現状でございます。
 さまざまなトラブルがあるわけでございますが、それでは訴えて権利がもらえるかといったら、そうではなくて、それが無効になるということがありますから、結局は、研究開発した人たちが、オープンになってしまって何も使えないというような悪い状況にあるということになります。これは雲泥の差。だから、訴えることもできない、泣き寝入りをするというようなことになってしまいますので、本来の特許権者に特許権を移転することを認めるべきだというような声がございます。
 今度の法改正によって、特許法第七十四条に移転の規定を設けたことは評価させていただきたいと思いますが、まさにこういったことが未然に防げることで安心して研究開発ができる、こういう点について先ほどのように広く周知徹底が必要だと思いますが、これについてどのようにお考えか、取り組んでいくか、お聞かせいただきたいと思います。

●中山大臣政務官 ただいまの問題意識は、そのとおりだというふうに思います。できる限り多くの研究者が共同で研究をするということと、文殊の知恵を発揮して新しいものを生み出していく、イノベーションをつくっていく、こういうことが共同開発の目的だというふうに思うんですね。
 ですから、共同開発をするに当たっては、お互いに共同でやる前にいろいろな申し合わせをちゃんと文書で取り交わすことを周知徹底しようということで、特許庁を初め、経済産業省もそういうようなパンフレットをお配りをして、約二万件、都道府県の窓口であるとかいろいろなところから周知徹底をして、必ず契約を交わしなさいよとか、文書でやりなさいよとか、いろいろな指導をしているところでございます。

●望月委員 この辺の周知徹底を、漏れなく、そういった事故の起こる前にしていただきたい、このように要望しておきます。
 次に、今中小企業の話が出ましたけれども、我が国の中小企業は、よくまくら言葉で言われるのは、中小企業が四百二十万社ある、そして、我が国の企業の九九%、大企業というのは一%だと。しかし、我が国がいかに世界に冠たる工業立国というか、そういう国になっているかというのは、その中小企業のレベルが非常に高い、ほかの国と違うんだ、そういう自負を持っているわけでございまして、我が国の産業の中心的な存在である、これはどなたも御存じのことだと思いますけれども、こういった中小企業の知的財産を、事業の発展を支援していくのが、これは大切なことである。
 しかしながら、現状は、これだけたくさんの企業が、さまざまな研究をしていても、特許の出願件数というのは全体の一割にも満たないくらいだと言われております。
 では、一体そこにどんな問題があるのかということであります。
 
[出願審査請求料を25%減ではなく50%減にすべき]

 今までのことをいろいろ考えてみると、資金面で中小企業を支援するための特許料の減免制度は評価をさせていただいておりますけれども、二〇〇八年ごろから、先ほど大臣がおっしゃったように、景気低迷で出願件数が一気に激減している。この状況から早く脱出しなくてはならないということでありますけれども、思い起こせば平成十六年、このとき、我々も反省しなきゃいけないと思います、特許のさまざまな、世界で一番早くというような改正、それで、資金面でいろいろな問題があったものですから、これはたしか倍になったんです、倍の状況になって、このときから中小企業の出願が非常に少なくなっているというのが現状でございます。
 私たちの反省点も加えて、せっかくこういうような改正でございます。今回は、たしか二五%ぐらい低くする、これはまさにやらないよりやっていただいて非常にありがたかったなとは思いますけれども、平成十六年以前に比べると倍になっている。たしか、一件八万円が十六万円だとか十万円が二十万円。物によって違うのかどうか、我々もちょっと内容がわかりませんけれども。そういう状況になってきているということを考えると、そのときに、要するに出願件数をふやすということになるのなら、さっき言ったようにくだらないのはやめてくださいね、しかし、汗をかいて、どんな小さいことでも出す。それから、出すのには金がかかる。十万円が二十万円では高過ぎてとても出せないといえば、件数は減るに決まっております。
 今我々が心配するのは、特許特別会計に一千億ぐらいの余剰金があるじゃないかと。よく我々が聞くと、これは預かり金で必ず戻るんですと言うんだけれども、では、なぜ今回二五%減らすことができるんだ、もとに戻れば五〇%減らすことができるんじゃないか。そういうようなことで我々はこの二五%の根拠というものがよくわからないんですけれども、それだったら五〇%にして、もとに戻すということですから、もとよりも安くするということではないんですから、これぐらいはできないんだろうかということをお聞きしたいと思います。

●中山大臣政務官 御存じのように、特別会計の性質上、収支相償といいますか、全体を見て何年後にこのくらいで特別会計が維持できるとか、いろいろなことを考えたわけでございまして、審査料金と特許料、過去は審査料金をずっと下げて特許料を上げるとか、またはいろいろなことをやりながら、私たちもどんどん特許を取ってもらおうといういろいろな誘導作業もやってきたわけで、弁理士会の皆さんともよくお話をしたり、弁理士法改正のときも今先生の言ったような御指摘を随分いただきまして、中小企業に少しでも特許を取ってもらってイノベーションを盛んにしてもらおう、こういうことも過去に随分議論をしてきたことでございます。
 ただ、特別会計という性質上、何とかこれが維持されるように、できる限り無駄を省いて、申請料とか特許料、なるべくそういうところを安くしようと思って……。仕分けなんかも私たちはされました、例えば発明の大切さとかそういう研究を、これは全部文科省の方にやってもらおうと。そういう特別会計の無駄を省きつつも、できる限り審査請求や何かを少しでも安くし、特許料も安くしていこうという、我々の考え方は基本的には変わっておりません。
 二五%がとりあえず目いっぱいでございますが、できる限り特許を取りやすい方向にこれからも考えていきたいと思っております。

●望月委員 政務官から、二五%という数字については、我々も、もちろん評価をしますけれども、そういったことについてはより研究をしていただきたいし、一日も早くもとに戻してもらうことを念願させていただきたい、このように思います。

[新規性喪失の例外規定の拡大について]

 次に、我が国は、ヨーロッパ型といいますか、先出願主義、先願主義というものをとっております。アメリカはまさに先発明主義というようなことでございまして、特許権を取得するためには特許が公表される前に出願しなくてはいけないというのが原則でありますけれども、これは例外規定で、例えば特許庁長官の指定する学会での発表等の方法以外で公表されてしまうと、特許をとれなくなってしまうことになっています。
 しかし、研究者というのは、一生をかけてというか、自分の時間と労力、それからまた周りの人を犠牲にしてというか、たくさんの人たちで研究してきた、やっとつくり上げたもの、すぐにでも世間に向かって発表したい、こういうようなことで、今さまざまな方法がございますけれども、発表してしまう。発表してしまったら特許がとれないというような状況は、非常に何かしら研究者のニーズに合っていない状況になってしまうわけであります。
 公表者が発表した場合であれば、方法を問わずにこれが保護されるというようなことが今回ありますから、こういうことについては発明の権利化の促進に資する、私はこのように思っておりますが、公表の方法を問わずに保護されるということになると、一体公表の基準がどこにあるのか、何かしらこの法案の内容を見るとよくわからない面があるわけでございますけれども、みずから公表したという範囲、これは明確でなければならないと思いますけれども、この点についてどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

●岩井政府参考人 お答え申し上げます。
 今御質問いただきましたように、今回の改正によりまして、みずから公表した場合は特例として認めよう、法律的に言えば、「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して」という形で書かせていただいております。
 それは例えば具体的にどういうことかという御質問でございましたけれども、今後新たに例外に扱われるものといたしましては、例えばこれまでであれば指定された学会でなければいけなかったのが、特許庁長官の指定のない学会での発表は大丈夫ですよとか、テレビ、ラジオで公開することは大丈夫ですよとか、具体的な例が考えられるわけでございます。
 その範囲は一体どこなのか、どのような場合にできるのかということをきちんと示すことが大事だという先生の御指摘は、まことにそのとおりでございます。そういうことができませんと、本制度の円滑な活用もできないということになろうかと思います。
 したがいまして、特許庁といたしましては、今準備をしてございますけれども、この法律をお通しいただければ、どのような行為が新制度の対象になるのか、可能な限り具体的かつわかりやすいガイドラインのようなものをつくりまして広く世の中にお示しをし、よくおわかりいただくように努めてまいる所存でございます。

●望月委員 今さまざまな媒体があって、そういったものを通して発明、発見が広く世の中に一日も早く知られることがこの世の中のためになる、まさに日本が国内だけではなくて世界的にも信頼される国になるということで、こういったものをしっかりと認めていただけるような仕組みをつくっていただきたい、このように思います。
 
[知財震災特区を創設すべき]

 次に、今回震災がございました、この大震災で、各企業は、さまざまな通常の業務ができない、それが復旧できない困難な状況にあると思います。この震災で被害を受けた企業は期限に定めのある特許料の納付手続をすることが困難だ、こういうことがありますので、当分の間この期限を延長するべきである、このように私は思いますし、加えて、情報の入手が難しくなっている被災地の企業に、情報をしっかりと届ける、こういったことが大切だと思います。このお問い合わせや相談に乗って、しかるべき措置をとる十分な配慮が政府としてしっかりとしているかどうか。
 それからまた、せっかく復旧し、新しい町をつくっていくんだ、都市をつくっていくんだということが盛んに言われておりますけれども、まさにこの知財というものは、そういう意味では我が国特有の、特別な、そしてまた大切なものでありますので、特区というのか、どういう形にするかわかりませんけれども、被災地の新産業の創成に係る企業開発に融資することで新産業の創造、それから新技術の創出につなげていく、こういうことが非常に大切なことではないかな、このように思うわけでございますが、被害を受けた企業ではどのような問題が生じているのか、それに対してさまざまな手だて、それからまた新しい時代をつくる、そういう意味では大臣はこういうことは得意ではないかなと思いますけれども、それについてお答えをいただきたいと思います。
    〔委員長退席、楠田委員長代理着席〕

●海江田国務大臣 望月委員御指摘のとおり、特許法では、審査請求、特許料の納付といった権利の取得、維持に関しては期限を設けております。ですから、今回の震災によりまして、被災地の多くの企業がこの期限を守ることが困難になっております。こうした事情を勘案しまして、特許庁では、震災後直ちにこの期限を本年八月末までという延長の措置をとりました。それから、海外については、九十カ国・地域の知財庁に対して、料金納付の手続期間の延期等の特例措置を要請いたしました。既にアメリカ、ヨーロッパ、韓国、中国など、四十五カ国・地域がこの特例措置をとるということを発表してございます。
 それからもう一つ、こうした特例措置あるいは延期の措置があるということを周知徹底させなければいけませんから、そのための専用相談窓口を開設し、特に被災地域各県の知財総合支援窓口とも連携をしながら、被災地の中小企業等に対してこうした救済措置があるということをお知らせしております。五月の二十六日現在で、この専用窓口への相談件数が二百六件ございます。それから、こうした救済措置があるというお知らせを約三千通発送してございます。
 いずれにしましても、今委員からも御指摘がありましたけれども、被災地の復興に向けて新産業の創造や新技術の創出を促進していくためには、知財の活用が重要であるという認識を持っておりますので、今後とも、現地のニーズを十分把握した上で、知財面からもこの地域の復興に最大限の支援をしていきたい、そのように思っております。

●望月委員 九十カ国ですか、たくさんの国々で我が国の人たちが特許をとっている。中小企業はそういうノウハウが非常に少ないわけでありますから、ぜひそういった面でしっかりやっていただきたいなというふうに思います。
 
[ダブルトラックの問題で特許庁の信頼性が失われているのではないか]

 次に、件数が多いものですから、大変申しわけないんですが早口でお願いしたいと思いますが、ダブルトラック問題。
 これは、実は現行制度では、従来、特許の有効性は特許庁で争うということになっておりましたが、これが、平成十二年四月キルビーの最高裁判決、あるいは平成十七年四月の特許法第百四条の三の規定によって、侵害訴訟において特許の有効性の判断を争うことが一方で可能となったわけでございます。
 これは、もともとは紛争を早く解決するための改正であったはずでありますが、これによって侵害訴訟の被告に特許無効とするチャンスを実は二重に与えてしまっているということで、例えば特許権者にかえって一方的に不利な状況になっているのではないかというようなことが最近言われております。もちろん、これは試行錯誤で、最初、さまざまな問題で、特許についてはまだまだ新しい法律でございますので、こういったものは改正がなされてきているけれども、そこに不都合が生じているというのが現在でございます。
 現行制度では、企業や個人が裁判所に特許権侵害を提訴しても、訴えられた側は、まず第一に特許権の無効審判を請求してこれに対抗することに加えて、特許法第百四条の三の規定により侵害訴訟において無効を主張することができる、今最初に言ったことでございますけれども。裁判所での訴訟と特許庁の無効審判の双方で特許の有効性が一つのことについて争われる、これがダブルトラックなんですけれども、まさにダブルトラックが発生して、裁判と審決の判断が対立してしまうんですね。
 現実に、特許権侵害訴訟においては権利者が敗訴してしまうというようなことがございます。特許庁に対してしっかりとしたものをつくってもらいたい、登録をして、それによってしっかりと守られていくんだというものが、裁判によって負けてしまう。こういうような例があると、一体何を信じていいのか。特許庁を信じることができない、国を信じることができない、裁判所の方が強い権限を持ってしまうというようなことで、今現場としては非常に混乱をしているというような状況が多々言われております。
 そういう意味では、裁判所でこういうような判決が生まれてきたということでございます。本来の特許庁に、しっかりと申請して審決をいただければこれでもういいんだというような強いものを国としてとっていかなきゃいけないのに、裁判の方に丸投げするような形にだんだんなっていくとなると、日本の特許庁は信頼性がなくなってしまう状況にならないかどうか、これを我々は非常に心配しているわけでございますが、これはどのようにお考えでしょうか。
    〔楠田委員長代理退席、委員長着席〕

●岩井政府参考人 お答え申し上げます。
 今先生御指摘いただきましたように、特許法第百四条の三ができましたことによりまして、いわゆるダブルトラックという問題が指摘をされております。
 このダブルトラックにつきましては、今御質問いただきましたように、いろいろな問題が発生しているのではないかというような御意見も寄せられております。したがいまして、今般の法改正の検討を行いました産業構造審議会におきましても、この問題をよく御議論いただきました。
 いろいろな議論がなされたわけでございますけれども、大きく言いますと二つ、侵害訴訟の判決確定後に無効審判が確定した場合であっても確定判決が再審により覆されないというような制度的な改善が必要なのではなかろうか、あるいは、無効審判のさらなる審理の迅速化等進行調整の運用の改善をするということも必要ではなかろうか、現状から比べるとそういったことが必要だということを御指摘いただいた上で、そういうことが解決をすれば、現行どおり両ルートの利用を許容するべきではなかろうかというのが今回の審議会の御答申でございました。
 したがいまして、今回、私どもは、御指摘をいただきましたもののうち、再審を制限するというような制度的な改正の案を法律案の形でお示ししたところでございます。また、無効審判の審理を早期に行って、その判断が侵害訴訟での裁判所の判断の参考にするというようなことも運用改善でございますので、努力をしていく必要があるのだろうと思っております。
 今回、この法律をお通しいただきました場合には、こうした再審制限導入後の運用というのがどういうことになっているのか、あるいは、私どもを含めて行わなければいけない運用改善というのがどのような効果を上げているのだろうか、こういったことも真摯に状況を把握いたしながら、指摘されている種々の問題について、私ども、引き続きよく注視をしていく必要がある、こういうふうに考えておる次第でございます。

[特許庁の贈賄事件について]

●望月委員 ちょっと話を変えた方面から見て、これは特許庁の信頼というような形で今言ったんですけれども、例えば、昨年、特許庁のシステムをめぐる贈賄事件がございました、大変残念なことでございますが。特許庁及びシステムベンダーの双方から逮捕者が出た、こんなようなところでございます。八月二十日に、外部有識者により構成される委員会によって特許庁情報システムに関する調査報告が発表され、改善措置が答申されたわけでございます。これについてちょっとお伺いしたいと思います。
 本事件から見られるように、特定の業者との間で長期取引が継続し、古くからいる業者のノウハウに依存したシステム開発や保守、運用が行われると、新規の業者の参入が難しくなり、委託者としてプロジェクト管理能力が育たなかったり、そういうような問題が生じるというのはどんな場合においても言えることでありますが、一般競争入札によって新規事業者の参入を実現した、今回はそういったことで理解はしておりますが、現実には、既に二〇〇六年の開発開始から過去二度の稼働延期を行っている状況にある。すぐにでもどんどんやっていかなきゃならないのに二度改善をしている、このような事態に至った原因をどのように認識しているのか、お聞きしたいと思います。

●岩井政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、特許庁の新システムは、二〇〇六年から開発に着手をいたしましたけれども、これまで二度にわたりまして計画の変更を行った上で、稼働を目指して進んでおるところでございます。
 御指摘がございました第三者委員会においても御指摘をいただいておりますけれども、こうした稼働の延期を行ったような原因といたしましては、そもそもこのシステムが大規模なシステムであって難しいということもございますけれども、受注者が特許庁の業務に精通していなかったこと、あるいは、特許庁側も組織的なコミットが不足していた、そういう問題があるのだという御指摘を既にいただいております。
 私ども、今後のシステム開発におきましては、こうした原因によるさらなる遅延を繰り返すことがないように、第三者委員会による御指摘を十分に踏まえつつ、しっかり取り組んでまいる所存でございます。

●望月委員 知的財産立国を標榜する我が国が、さまざまなところから見て恥ずかしくないようなものを構築していかなくてはならない。我々も大いなる反省の上に立って言っていることでございまして、今、政府の皆さんに、そういったことを踏まえて、新しいものを構築していく段階で、ここは大いにしっかりとした視点を持っていただきたいな、このように思うわけでございますが、日進月歩で進むIT業界で五年も前に設計したものがまだ稼働していない、こういうことだったら、オール・ジャパンでこういったものをしっかりやるべきだ、国の威信をかけてやるべきだと思いますが、そのことについて。
 それからまた、こういうような災害があっても、まだしっかりと稼働していないということになると、そういった災害に強いようなシステム、これは、今の政府で二年近くたつわけでございますので、IT政策に対する知見や、やる気やガバナンスが、我々の反省の上に立ってもそうですが、今回もそういった意味では若干欠如しているのではないかなということを心配しております。
 これについて、特許庁システムの完成に向けて今後どのような指針を設けて取り組んでいくのか、大臣、そこら辺の気持ちをしっかりと打ち出していただきたいと思います。

●海江田国務大臣 望月委員にお答えをいたします。
 私も、せんだって、これは三月十一日以前でございますが、経産大臣に就任をいたしまして特許庁を視察に行ってまいりました。その中で、今委員からお話のありました過去の問題、そしてそこから立ち直るべく新たなシステムの開発というお話も聞きまして、これは特許制度の基本的なインフラでございますので、本当に一刻も早く、しかも、公正、透明にやるようにということを指示いたしました。しっかりとやっていきたいと思っております。

●望月委員 大臣の強い気持ちを聞いて若干安心しましたが、特許庁はこういうことでもない限りは国会において話題が出てくることがなかなかございません。特許庁の職員を見ると、非常に勉強していて、我々がびっくりするぐらいにレベルが高い人たちですから、そういう人たちがしっかりと働けるような状況を、政府としてそういう姿勢を打ち出していただきたいなと思います。

[弁理士制度を再構築すべき]

 それから、弁理士のあり方。
 まさに我が国の企業は、今後、労働力の低下、国内市場の縮小という大きな課題に向かっていかなくてはならない中で、中小企業の知財活動に深く関与している弁理士が知的戦略に対して高度な助言を行うような形になってきているわけでございます。
 我々も司法制度改革をやって、隣接法律専門職種という、司法書士とか税理士とか、さまざまな皆さんにさまざまな権限を与え、そして勉強していただいて、例えば弁護士だとか公認会計士が総合病院とすれば、町のお医者さん的な立場でしっかりと中小企業の人たちや一般の市民に、法律にいつでもどこでもだれでもが接することができる、そういうような形の中であるわけでございます。そういう中で、弁理士の皆さんというものは、そういった意味では中小企業の相談相手としては大変大切でございます。
 ところが、一時期からどんどん弁理士の数がふえてきて、何万人体制というような、たくさん数さえあればいいというような、余りにも最初は少なかったものですから、そういう形になってきた。ところが、どうも内容がいま一つ、しっかりできる人もいればそうでない人もいるというようなことで、何か粗製乱造というような形になってしまって、結局はこの資格が、場合によってはそのレベルが非常に低くなってきてしまっているのではないか、そういう心配が弁理士の中からあるわけでございます。
 そういう意味でいきますと、この数が、決して多ければいいというわけではありません。やはり国民の役に立つような人材をしっかり出すためのものになっているかどうかという問題。何しろ数が多くなってくると、ただ安ければいい、能力はともかくとしても安ければいい、そうすれば、中小企業やいろいろな人たちはわからないから安い方に行った、ところが、全然役に立たない、失敗してしまった。こういうことがないように、我々は資格を持った皆さんに対してもそういうようなことを言わなきゃならないし、そういったものをしっかりと位置づける。
 この弁理士のあり方について、大臣の考え方をお伺いしたいと思います。

●海江田国務大臣 これも、今委員からの御指摘がございましたけれども、私も委員と同じような考え方を持っております。
 特に、弁理士の方々には、権利の取得だけでなく、まさに知財戦略と申しますか、そうした考え方をしっかり持っていただきたいと思いますし、先ほどこれも委員からお話ありました、海外へ中小企業が進出をしていく際の後押しという役割もしなければいけないわけでございますから、海外における知財の保護でありますとか活用に関する知見を深める、そうした不断の勉強などもしていただきたいということでございます。
 そして、現在、弁理士制度のあり方につきましては、日本弁理士会との間で意見交換を行っているところでございますので、特に、今御指摘のありました、企業の国際展開を支える人材として活躍をしていただこうということを念頭に置きまして、日本弁理士会との間の意見交換から実のある結論を引き出していきたい、そのように思っております。

[不正競争防止法の改正について]

●望月委員 時間が少なくなりましたので、不正競争防止法の方をちょっとだけさわりたいと思います。
 人材や財政力には制約がある中小企業にとっては、特許権の取得をやみくもに目指すのではなくて、みずからの経営にとって核となる技術、ノウハウについて営業秘密として管理をする、他社との差別化を図る、営業秘密として保護し、オンリーワンの技術を長期にわたって守り、周辺特許をとられてしまうことを回避する、これが大切なことでございます。
 これは二年前に衆議院の附帯決議から出された宿題でございますので、今回の法改正は、さまざまそういった意味では評価をしていきたいな、このように思いますが、これは中小企業にとってはかけがえのない技術、ノウハウが営業秘密として保護されるためには、他社に開示する際にもきちんと契約上の縛りをかけたりする。先ほどの特許法とも同じでございますが、適切に管理するということが大変重要なことだと思いますが、秘密管理の手法などをわかりやすく周知していくことについてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

●中山大臣政務官 今、お話のとおり、本当に、中小企業がいろいろ開発をする、発明をする、これは会社にとって非常に大切な秘密だというふうに思うんです。
 そういう意味でも、オンリーワンの技術が、いろいろな方と共有したり製品として出したときに、その秘密が裁判で訴えたときに表に出てしまったり、いろいろあるわけですね。それぞれの条件を、営業秘密を守り、管理しようということで、都道府県の各窓口に二万部ほどパンフレットをお渡しして、こうやって企業秘密を守っていくんだよということを、今案内を出しております。
 中小企業にとって、本当に自分のところの製品は、商売にとって一番かけがえのないものですから、そのノウハウをとられてしまったらもう商売できないということにもつながりますので、その辺はしっかり我々も営業秘密を守るためのパンフレットをつくりまして、これを読んでいただけばすべてわかるというような形を今とっております。
 それから、本当は近くの弁理士さんとかそういう方にもしっかり相談をして、本当に自分たちの持っている営業秘密を守っていく、それが自分のこれからの営業に非常に重要であるという認識をさらに深めていただきたいというふうに思っております。

[アクセスコントロール回避装置等に対する規制強化]

●望月委員 時間がございませんので、最後の質問になると思います。
 今回、アクセスコントロール回避装置等に対する規制強化ということがございますが、これはまさにソフトパワーといいますか、クール・ジャパンと呼ばれて、我が国のアニメやゲームといったコンテンツは世界で高く評価されているわけでございまして、次世代の我が国経済を担う極めて重要な戦略である、このように思っております。こういった海賊版の問題に対しては、一層コンテンツ産業の存立基盤を保護するというようなことで評価するところでありますが、この刑事罰についてであります。
 この刑事罰、今まで民事罰だけであったのが、今回刑事罰を入れる。これも私たちも反省しなきゃいけないんですけれども、さまざまなそのときの時代的な背景があって刑事罰は導入しなかった。ちなみに、各国のアクセスコントロールの回避に関する規律における刑事罰導入時期については、アメリカは一九九八年、韓国は二〇〇二年、イギリス、ドイツは二〇〇三年、そういうような状況で、早いうちから刑事罰が入っているというようなことでございまして、導入する必要というものと、遅きに失したのかどうなのか、それからまた、この罰則の基準は適当であるのか、どうして我が国がここへ来てこの刑事罰を導入されたのかということでございます。

●田中委員長 望月君、時間が来ていますから。

●望月委員 わかりました。
 それと、刑事罰。提供した方と提供された方があるわけでございますけれども、使う方がいるものだから、どうしてもつくってしまうというようなことがございます。これは、例えば使う方の人間にも刑事罰を世界に先駆けて導入するべきではないかというようなことを考えるわけでございますが、これについてどう思いますか。最後にこの質問をさせていただきます。

●海江田国務大臣 時間も少なくなって、たくさんの御質問をいただきましたが、遅きに失したかどうかということは意見の分かれるところでありますが、私どもはできるだけ早くというふうに思っております。
 種々回避装置が出てまいりましたので、やはりそれに対応するためにはどうしても刑事罰も必要ではないだろうかということでございます。特に、コンピューターを利用しましたネットショップやネットオークションということがございますので、これは民事措置だけでは限界があるということでございます。
 あと、もし必要があれば答弁させますが、委員の問題意識というのは私どもも共有しておりますので、今後、またぜひ貴重な御意見をお聞かせいただければと思っております。

●田中委員長 以上で望月君の質疑は終了いたしました。
 次に、平井たくや君。


【佐藤茂樹議員質疑】

●北神委員長代理 次に、佐藤茂樹君。

●佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。
 きょうは、特許法等の一部を改正する法律案と不正競争防止法の改正案と二法でございますが、それぞれ前回の改正は、特許法は平成二十年でございましたし、不正競争防止法は平成二十一年でございました。ですから、それぞれ三年ぶり、二年ぶりということなので、本当は、我々野党の希望としては、しっかりと審議時間をとって法改正の内容について徹底的に議論した方がいい、そういう考え方でございましたが、残念ながら、参議院の審議は、震災の渦中ということも理由に一時間二十分程度で終えているわけでございます。
 我々としては、衆議院としてはしっかりと時間をいただきましたので、主に法案の内容について質疑をさせていただいて、立法者である政府の考え方をぜひ確認させていただきたい、そのように思います。残った時間で、震災関連で若干お聞きすることがあるかもわかりませんので、対応をお願いしたいと思います。
 まず、特許法についてですけれども、今回の改正は、社外技術を活用して研究開発や製品化を行う近年のオープンイノベーションが進展している環境変化に対応して、我が国の経済成長を支える新たな技術や産業の創出を促進するための必要な改正であると私も思っております。

[ライセンス契約の保護の強化 ―第三者対抗要件の見直しについて―]

 そこで、事前に特許庁からもいろいろお聞きしておりますけれども、きちっと議事録に残しておかないといけないという点もありますので確認をさせていただきたいんですが、今回の四本柱のうちの一つであるライセンス契約の保護の強化について、まずお聞きをしたいと思うわけであります。
 一つの製品を開発、製造することについても、自社の技術のみではなくて、さまざまな社外技術を活用しての開発というのが多くなってきているわけでございまして、その中で他社の特許発明を利用することが非常に増加している。そういう状況から、ライセンス契約に基づき通常実施権が設定されることが非常に多くなっているんですが、その中で今回の改正のようなライセンス契約の保護の強化というのが必要だということはずっと言われてきました。
 しかし、今まで、現行制度上、通常実施権については登録しなければ第三者に対抗することができない、そういういわゆる登録対抗制度というのがとられてきたんですが、実質この登録対抗制度がどこまで活用されているのか、その実態を見ますと、これは特許庁による国内企業へのアンケート調査でも、通常実施権についての登録率が〇%または一%未満と回答した企業の割合は八七・二%ということで、一言で言うと、ほとんど登録がなされていない、そういう実態があるわけであります。
 こういうライセンスの法的保護の必要性が高まっている一方で、現行の通常実施権登録制度は、この数字を見ても必ずしも十分に活用されていなかったというのが現状であると思うんですけれども、その理由はどういうところにあるというように経済産業省あるいは特許庁として見ておられるのか、まず御答弁いただきたいと思います。

●海江田国務大臣 佐藤委員にお答えを申し上げます。
 委員御指摘のように、現行の登録対抗制度は、ライセンスを受けた者がライセンスを特許庁に登録しないと、特許権を譲り受けた者から差しとめ請求等を受け得る制度であります。
 このライセンスの登録につきましては、一つの製品開発に当たり多数のライセンスが許諾されていることも多く、そのすべてを登録するのには膨大な手間とコストがかかること、これが一つの理由。
 それからもう一つは、登録を行うにはライセンスを受けた者と特許権者が共同して申請する必要があるわけでございますが、特許権者が登録に協力する義務はなく、特許権者の協力が得られない場合があることなどの事情がありまして、ライセンスの登録が実務上困難であることから、登録対抗制度は、先ほど委員も数字をお挙げになりましたけれども、十分活用されていないという認識を持っております。

●佐藤(茂)委員 それで、今回の改正案では、当然対抗制度、一言で言うと登録を要件とせずにライセンス契約の存在のみで通常実施権を第三者に対抗できる制度というのを導入することが今回の改正案の一つの大きな柱にされているんですけれども、この当然対抗制度を導入することによってどのような効果が実際に得られるのか、その法改正の効果についてどのように考えておられるのか、ぜひ経済産業大臣の見解を伺いたいと思います。

●海江田国務大臣 今回の改正によりまして、ライセンスを受けた人の権利を守ろうということが大変大きな考え方でございます。
 そして、こういう形でライセンスを受けた者の地位が守られることによって、片方でイノベーションのオープン化という問題がございますから、そうしたイノベーションのオープン化などの環境変化によって多数のライセンス契約が締結され、多数の特許権が譲渡されている現状において、イノベーション促進の立場から意義があるというふうに思っております。

●佐藤(茂)委員 そこで、私は、きょう質問しようと思っていたのを自民党の望月先生や橘先生もきめ細かく聞かれたので重なる部分が結構あるんですけれども、今改正案について、また積み残された問題等についてさらに確認をさせていただきたいと思うんです。そういう一部重なっている部分はほとんど重複を避けたいと思いますが、党がそれぞれ違うので、先ほど質問があったというような答弁でなしに、しっかりと答えていただきたいんです。

[ダブルトラックの問題について]

 やはり、これは長年の大きな問題として言われている、ダブルトラックの問題というのが非常に大きな課題だと思います。特許の有効性に関する判断が無効審判ルートと侵害訴訟ルートの二つのルートで行われる、いわゆるダブルトラックの問題については、この二つのルートがあるがゆえに紛争処理の結果の予測というのが非常に困難である。
 要するに、両ルートにおいて判断そごが生じるという点がずっと指摘されておりますし、さらには、重複して争うことによって社会経済的に効率が悪いんじゃないのか、そういうような指摘もありますし、特許権者の手続負担がそれでふえておる、そういう御指摘もあります。
 ですから、私は、今回の法改正に当たって、そういうダブルトラックの問題等について、今まで指摘されている問題をどのように解消されようという方向で法改正されたのか、まず確認をしておきたいと思います。

●岩井政府参考人 お答え申し上げます。
 ダブルトラックについての問題でございます。
 この問題につきましては、さきの産業構造審議会でも大きな議論になりました。議論になりました点は、今御指摘いただいた内容と重なってございます。すなわち、特許の有効性が裁判所と特許庁の双方で争われることによって、判断のそごが生じてしまうのではないかという問題。また、特許権者が権利を行使するために裁判所及び特許庁の双方の場で勝たなければならず、特許権者の負担が大きい、こういう問題が非常に大きい問題であるという認識で審議会でも議論をしていただきました。
 審議会での議論の方向性は、まず、今申し上げました判断そごの問題につきましては、無効審判のさらなる審理の迅速化等進行調整の運用により改善できる余地が大きいのではないだろうかということが示されたところでございます。また、後段の特許権者の負担の問題につきましては、無効審判等の審決確定に係る主張を制限して再審による紛争の蒸し返しを防止する、こういった制度的な対応をすることが負担の軽減につながるのではないかというお考えを示されたところでございます。
 今回御提案申し上げております法案の中身は後段の制度改正の部分でございますけれども、私どもにも関係がある運用改善の問題もあわせ御指摘をいただいているというのが、審議会での御議論の結果あるいは方向性でございました。

[技術専門性の高い特許庁の判断を尊重すべき]

●佐藤(茂)委員 そこで、経緯があって今はダブルトラックと言われる制度になっておるんですけれども、平成十七年四月に百四条の三という規定によってそういうことが可能になってきたことそのものについて、これは産業構造審議会で相当議論もされているとは思うんですけれども、そもそも見直して、要するに、もともと特許庁の判断というものが無効とされるケースが非常に出てきているわけですから、技術専門性の高い特許庁の無効審判制度を本当に生かした制度への再構築というものももう一度考えていくべきではないのかな、そのように私は思うんですけれども、特許庁の見解をぜひ伺っておきたいと思います。

●岩井政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほども御答弁申し上げましたように、この問題は非常に大きな問題でございますので、産業構造審議会でも大変活発な御議論をいただきました。
 その中身は、ダブルトラックに関して現に発生していると指摘されている問題について、二つの点で、再審による紛争の蒸し返しということについては、再審の制限という制度的手当てをすべきである、あるいは無効審判のさらなる審理の迅速化等進行調整の運用の改善を図るべきである、そういうことがなされれば現行どおり両ルートの利用をするということでよいのではないかというのが、産業構造審議会の今回お出しいただいた結論でございます。
 その意味で、私どもといたしましては、まずここでうたわれている再審制限導入という制度の改善をお願いしているわけでございますけれども、このほかに、先ほど申し上げましたように、我々行政サイドあるいは司法サイドともども運用の改善を図らなければならないという宿題もいただいております。その二つのことができれば今のままでよいのではないかというのが産構審の答申でございますので、今、法律を通していただいて、再審の制限というのがどのように運用されていくのか、あるいは我々に宿題として課された運用の改善というのが実を結んでいくのか、しっかり努力をしていく必要がございますし、その中で、このダブルトラックの問題についてどう考えていけばいいのか、引き続き我々は努力をしながら考えていかなければいけない問題である、このように認識をしているところでございます。

●佐藤(茂)委員 我々も、この経済産業委員会にいる立場として、今回の法改正で蒸し返しの問題が実効性をどこまで上げるのか、さらに、もう一つ言われた運用の改善についても、本当にこれからどう努力されていくのかということについてはしっかりと見届けていきたい、そのように思います。
 
[ユーザーの利便性の向上について ―PLT条約の加盟の促進をすべき―]

 次に、ユーザーの利便性の向上というところに当たるかと思うんですけれども、特許制度における期間徒過に対する対応について確認をしておきたいと思うんです。
 今回、改正点で指摘されたんですけれども、現行の特許制度では、特許料及び割り増し特許料の追納期間等の限られたものを除いて、期間徒過後の救済手続というのは基本的に設けられていないんですね。
 また、特に、今回の部分でさわられていますが、外国語書面出願の翻訳文であるとか外国語特許出願の翻訳文の提出手続については、期間を徒過した場合の救済手続が設けられていないということがございます。
 もう一つは、特許料等の追納期間に関する救済についても、救済が認められる要件が欧米と比べても非常に厳格であって、実質的な救済が図られていないということが指摘をされていたわけでございますが、今回の特許法改正において、そういう期間徒過の問題について、救済手続をどのように図られたのか、その内容についてお尋ねをしたいと思います。

●中山大臣政務官 今佐藤委員が言われた項目、一応全部緩和をしていく、こういうことでございます。
 ユーザーがどういうことを考えているか。やはり、自分たちが特許を取っても、何か、今回の災害みたいなときにおくれてしまったとか、いろいろなことがあり得るわけですね。ですから、取った権利が簡単に奪われないように、委員のおっしゃったとおり緩和をするということでございます。

●佐藤(茂)委員 それで、望月委員のときの答弁にも出ていましたが、特許法条約というのが平成十七年から発効しております。国際調和の観点からも、この特許法条約というのは、なるべく救済していこうという考え方に基づいた極めてユーザーフレンドリーな手続の導入であるとか、国際的な手続調整を目的とした国際条約なんですけれども、これに準拠したさらなる救済手続というのは常に心がけていかないといけないであろう、これは当然だと思うんですが、今、日本として、PLT、特許法条約への加盟に向けての取り組み、検討というのはどうなっているのか、また、加盟に当たってどういうことが課題だというように考えておられるのか、まず経済産業省の考え方をお聞きしたいと思います。

●岩井政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のPLTでございますけれども、これは、企業の国際化が進んでくる中で、各国、区々分かれる制度のままではいけないのではないだろうか、したがって制度の調和を図っていくべきだというのが一つ大きな流れとしてございます。その制度の調和を図る際には、実質的な制度の中身の調整を図るとともに、手続の面でも調整を図っていくべきだという考え方がございます。ただ、より重要なのは、中身、実質でございまして、きょう大臣からも御答弁申し上げましたような、国際的な実質的な中身の調和の努力が非常に大事になってきております。
 ただ、なかなかこれは時間がかかりますので、それでは合意のしやすい手続面だけでも先に合意をしようかといって、できましたのがこのPLTでございます。その意味では、PLTの方向性は私ども大変正しいことだと思っておりますけれども、現状は、発効はいたしましたけれども、我が国を初め米国、中国、韓国、欧州、ドイツ、カナダといった特許の主要国は、まだ残念ながらこのPLTには入ってございません。それは、主要国は、今申し上げましたように、まず中身の議論を先に進めていくことが大事だと考えていて、そちらの議論に注力をしているということ、あるいは、PLTに入るといたしましても、いろいろな制度を直さなければいけませんので、非常に率直に申し上げますと、特許制度ができたばかりの国はゼロからPLTに合わせて制度をつくればいいので入りやすいのですけれども、長年の歴史を持っているところは直すコストが大きいというような要素もあろうかと思います。
 他方で、救済の方法につきましては、PLTというのは一つの準拠するべきものでございますので、PLTにどう入っていくかということとは別に、PLTの中身をしんしゃくしながら制度をどうつくっていくかという問題もあわせてあるものと思っております。
 今回の法改正におきましては、PLT準拠ということで検討いたしましたけれども、その中には、例えば特許審査期間、請求期間が過ぎてしまったものをどうするかというような論点がございます。これはPLTでは救済の対象になっているのですけれども、その期間が過ぎてしまえば特許にならないわけでありますので、実は、ユーザーサイドでも賛成という方と反対という方もおられまして、審議会で議論いたしましても、ユーザーサイドの意見がまとまらなかったために救済の拡大ができなかったようなこともあったわけでございます。
 いずれにいたしましても、特許権の使いやすさということと国際的な調和ということを頭に置きながら、引き続き努力をさせていただきたいと考えております。

[出願審査請求料を50%減額すべき]

●佐藤(茂)委員 もう一点。これも望月委員と重なるんですけれども、質問された部分は割愛して、今回の改正で、ユーザーの利便性の向上で、特許料等の減免制度の拡充、意匠登録料の引き下げ、国際出願手数料の引き下げ、こういう、料金に絡むものを引き下げされておるんですけれども、政令に関する部分で、審査請求料が、今平均二十万なのを十五万、一言で言うと約二五%引き下げる、この程度に終わっているというのは、私はやはり不十分だと。
 それは先ほどの認識と全く同じ立場でございまして、今は、東日本大震災によって、被災地域だけではなくて全国的に景気が停滞して、産業の競争力というのは弱体化しているんですね。そのときに、これからもう一度復興に向けて産業に力を入れてもらおう、知財についてももっと力を入れていこう、そういう姿勢をやはり政府として示すべきではないか。
 そういうことからいうと、平成十六年の四月に二倍に引き上げたものを、今回二五%カットではまだまだ高いんですよ。やはり、以前の、平成十六年の四月レベルに戻すために五〇%引き下げというところまで思い切った措置を講ずる必要があるのではないか、そのように思うんですけれども、経済産業省の考え方をお聞きしたいと思います。

●中山大臣政務官 今お話しのとおり、一時引き上げをした。ただ、審査請求と登録料金をうまく調整したりしていろいろ合理的なことをやってきておりまして、実は、今回も合理的な手段を講じて料金見直しに伴う減収というのは百五十億円、これは大変大きいわけでございまして、特別会計の性質上、何とかうまくやりくりをしていこうということで、二五%ぐらいならばということでございますし、いろいろな減免措置を初めとして、もし中小企業の方がお困りであれば、いろいろな融資、対象もしっかり考えていかなければいけない、このように思っております。

[震災知財特区を創設すべき]

●佐藤(茂)委員 もう一つは、今、東日本大震災のことを言いましたけれども、東日本大震災の復興のためには、新規産業の創造であるとか新技術の創出を視野に入れて復興に結びつけていくべきであると私どもは思っております。そのときに、特許制度などの知的財産制度というのは大いに活用していくべきである。そういう観点から、きょう、具体的に、そういうことができるのかどうか、お聞きしたいわけです。
 被災地に本社を置く中小・ベンチャー企業が、もうほとんど、実際のところ工場も被災してしまったとか土地もほとんど使い物にならぬとか、そういうところも出てきているわけですね。その中小・ベンチャー企業がそこで所有している特許権等の知的財産権を担保として、また、それに対して信用保証協会がこれを保証して、復旧または新規の設備投資、あるいは研究開発費用等に特別融資するような制度を今の政府として考えていくべきではないか。
 これは、工場もやられているとか土地もほとんど使い物にならぬということで、立ち上がるのに、再建は容易ではないと思うんですけれども、そういう知的財産を担保とした特別融資制度の創設について、経済産業省としてどう考えておられるか、お聞かせいただきたいと思います。

●中山大臣政務官 知的財産を担保にというのはいろいろ議論のあるところでございますが、そういうものも含めてこれからしっかり考えていかなければならないというふうに思っております。
 やはり、知的財産というくらいですから、それは当然財産であって、これをどのくらいに評価するか、そういう査定も必要なのかなというふうに思います。今までも、よく、中小企業基盤整備機構か何かでこれはいい発明だとか言われても保証協会の保証がつかなかったり、こういうことじゃしようがないので、やはり、これが本当に知的財産として有効であればそこにちゃんと貸し付けであるとか保証協会の保証とか、そういうものをつけるべきだと私たちは思っております。

●佐藤(茂)委員 私は、新たな一歩を、壁を破るものとしてぜひ考えてもらいたいなと思うんですね。
 もう一つは、今、特別委員会で東日本大震災の復興基本法案の議論をしています、政府案、自民党さんの案。私どもも案をまとめまして、中身をちょっとチェックしたんですけれども、私どもの案の特徴としては、復興特区制度の創設というのを東日本大震災復興基本法案の中にうたっているというのが、実は政府案と自民党さんの案との違いです。
 そういうものが成り立つかどうかは別としても、被災地の経済振興のために、こういう知財のような成長分野について経済特区を指定して、規制緩和された経済特区に、全国、あるいは世界と言ってもいいと思うんですが、そういうところから中小・ベンチャー企業を誘致して、全部の企業というわけにいかない、業種を絞って、例えば、今政権で力を入れている新エネルギーとか省エネ、あるいは健康・医療産業、コンテンツ産業などに特定した産業を起業し、かつ国策として育成していくというのも一つの復興の道ではないか、そのように思うんです。
 そういうところで、税の話は財務省ですけれども、例えば法人税も減免したり、あるいは外国人の入国規制緩和とかした上で、今回テーマになっている特許等の取得、維持に関しても、出願料とか先ほど議論しました審査請求料なども無料化に近いような減免をして被災地の産業復興を加速させるような、そういう思い切ったことをしないと、この地域はなかなか復興していかないのではないか、そういうように私は考えるんですけれども、そういう特区を活用しての、知財を本当に生かしたような復興のあり方について、経済産業省として考えておられることがあれば御答弁いただきたいと思います。

●中山大臣政務官 私、最近よくいろいろな会合に出て申し上げるんですが、今こそ政府系金融機関の存在感を示すときでございまして、今委員のお話のようなことについてファンドを設けるとか、政府系金融機関でそういうものをしっかりやる必要があると思うんですね。ですから、私たちの考え方としては、政府系金融機関で今みたいなことをやる。特区という形でなるべく新しいことを創出したいというふうに思っております。
 政府系金融機関の人たちはかなりやる気でおりますので、ひとつよろしくお願いします。

[弁理士の試験制度を見直すべき ―免除規定を撤廃・条約の試験復活―]

●佐藤(茂)委員 あともう一つは、今回、この法改正によって知的財産制度の拡充強化が図られるんですけれども、望月委員も最後に指摘されたと思うんですが、この知的財産制度の担い手である弁理士制度の拡充強化というのも当然不可欠だと思うんですね。先ほど答弁で、平成二十五年の見直しを目指して協議に入っているんだということでした。
 そこで、もうちょっと具体的にお聞きしたいのは、今、一言で言うと、質の余り高くない人が相当ふえてきているのではないのか、弁理士さんの仲間からもそういう声が出てきているわけです。ですから、これからそういう弁理士の試験制度の見直しについては、質が高くて、なおかつ国際性に富んだ、そういう人材をどう育てていくかという視点で、一つは、ほかの士業の方々の免除規定なんかももう一回見直すことも含めて検討すべきだし、あるいは国際条約もしっかりと知識として身につけているかどうかを試験のときにちゃんとチェックする、必須科目にするというような、そういう望ましい弁理士制度というか、もっと言ったら望ましい弁理士の試験制度の再構築のための検討というものを図っていくべきであると思うんです。
 これから検討をされようとしている方向性について、政府の考え方をお聞きしたいと思います。

●海江田国務大臣 この弁理士制度の改正は平成十九年ですから、そして五年以内にということですから、まさにこれから新たな弁理士制度のあり方について、今、日本弁理士会と意見交換をしているという状況でございます。
 その方向性でございますが、今、佐藤委員がお話しになりました国際性というんですか、これは、中小企業がどんどん海外でそうした知財の権利をしっかりと確保していこうという流れがございますから、それに適合した弁理士さんを育成する必要があろうかと思いますので、そういう方向で意見交換を今行っているところでございます。

●佐藤(茂)委員 そのときには、きょうは質問しませんが、具体的に業に携わっておられる方々の声も、ぜひこれからの検討の中で、されると思いますけれども、しっかりとお聞きして、方向性を間違わないようにしていただきたいと思います。
 あと一分ほどありますので、最後に震災関連で大臣にお聞きをしたいんです。
 今私が気になっておりますのは、五月二十五日に電力不足対策で節電の例外事項というのを発表されました。ただ、その大前提としては、既存の電力の安定供給ができることが必須条件であります。これは、既存の原子力発電所の運転継続を最低限図っていった上でないと、今の節電目標というのは達成できないんですね。
 ところが、今の既存の原子力発電所がどうなっているかというと、全国で五十四基ある発電所のうち、稼働しているのが十九基で、三十五基が定期検査も含めてとまっているわけです。何が問題かというと、定期検査に入った原発が東日本大震災後一基も運転を再開していない、そういう現状があるわけです。これは、定期検査終了後の再稼働には法的には地元の同意は必要ないんだけれども、電力各社は地元住民の不安に配慮して再稼働できないという現状がある。このままいくと、定期検査はこれからさらにされていきますから、国内に五十四あるといっても、三月には原発がほぼすべて停止してしまう可能性も否定できないということを言っている人もおります。
 ですから、私は、ぜひ政府として努力してもらいたいのは、五月十六日に、原発立地自治体の知事らの首長でつくる原子力発電関係団体協議会が、安全性を判断する基準を明示するように政府に求めることで一致されたそうですけれども、今までお聞きしていると、政府としては、浜岡原発はだめだと言ったけれども、浜岡原発以外は非常用電源の多重化などの緊急安全対策によって安全性に問題はない、そういう立場でおられるんです。しかし、地元の自治体は、浜岡をとめているのになぜ自分のところの原発を動かすのかということについて、地元自治体が納得できて、住民に説明できるような、そういう安全性を判断する基準、安全基準を政府で取りまとめて提示すべきだということを強く言われているんだと思うんです。
 私は、経済産業省としても、そういう声を無視するのではなくて、安全性の基準というものはこうこうこうだ、だから浜岡以外は再稼働してもいいんですよということを、もっと強く、明確に基準を打ち出すべきだ、そのように思いますが、経済産業大臣の見解を伺っておきたいと思います。

●海江田国務大臣 今度の東京電力福島第一発電所の事故が起きまして、三月三十日でございますが、まず、緊急の安全対策は出しました。それが五月の上旬に、その緊急の安全対策は要件を満たしているということをそれぞれの発電所について通知いたしました。
 そして、知事さんでありますとか、あるいは地元でありますのは、そうした緊急の安全対策だけでありませんで、もう少し中長期的な安全対策をしっかり示して、それに対する適合性というものを明らかにすべきではないだろうかという意見でございます。
 この中長期的な安全対策というのは、津波対策などでは幾つか私どもも出しております。それから、電源関係では容量の大きな電源車などを高台に置くようにというような指示もしておりますが、さらに地域の皆様方が本当に安心できるような基準を出すということには、やはり今回の福島第一発電所の問題ももう少し精査をして、その上でというふうに私は考えております。
 ただ、先ほどお話をしましたけれども、三月三十日、あるいはその後、四月と、四月にも二回ほど出しておりますので、そういった安全基準をクリアしているということを地元で説明するための説明会は、保安院が中心になりまして、たしか二十五カ所程度、あるいは二十五カ所以上ですか、説明会は既に行っておりますが、ここでさらにしっかりとした説明をする、それから、必要があれば私も出向いていって説明をするということはお伝えをしてございます。

●佐藤(茂)委員 私は、そういう、原子力発電所がせっかくあるのに、浜岡原発と同様のドミノ現象に陥る危険性を打破するためにも、電力会社任せにするのではなくて、今、海江田大臣が最後におっしゃった、必要があれば私も出向いてということを、海江田大臣初め政務三役が前面に立って、地元の説得、また御納得いただくような説明に努力をしていただくことをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
(会議録抜粋終わり)

この記事は弁政連フォーラム第220号(平成23年6月25日)に掲載したのものです。
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