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「知的財産専門職大学院」(仮称)の
 創設 (文部科学省)

 
yasunari.kakomoto   
弁 政 連 副 会 長
柿 本 恭 成
 2002年(平成14年)6月4日(火曜日)付け日本経済新聞(夕刊)に、総合科学技術会議(議長・小泉純一郎首相)が、知的財産専門職大学院(仮称)を提案する旨の記事が掲載されました。この大学院は、理工系大学などの卒業生を受け入れ、特許出願・契約などの実務、知的財産管理、技術経営などを教え、企業の知的財産部門の責任者や、裁判所、特許庁の審査官などとして活躍できる人材の養成が目的で、2004年に創設が予定されています。特に注目すべきことは、「弁理士資格に準じる新たな資格を作れるかどうか検討する。」と記載されていることです。 弁理士資格は、経済産業省・特許庁が作った資格ですから、他の省庁が弁理士資格に準じた他の資格の創設を検討することは、我が国の産業競争力を人的側面から強化する見地から、誠に結構なことで、英知を出し合い、大いに議論していただきたいと思います。
 しかし、なぜ、このような弁理士資格に準じた他の資格の創設が必要なのか、ふと、疑問に思いましたが、「弁理士資格だけでは不足だから、これに準じた資格が必要である」と言う答えが、脳裏から返ってきました。
 日本弁理士会関係者のご努力の甲斐あって、平成14年4月17日に、弁理士に特定侵害訴訟の制限付き代理権限を付与するための弁理士改正法が公布されました。
 第154国会(平成14年2月4日)での小泉内閣総理大臣の施政方針演説では、「研究活動や創造活動の成果を、知的財産として、戦略的に保護・活用し、我が国産業の国際競争力を強化することを国家の目標とします。」と発言されています。このような国家の目標に対して、一刻も早く対応していかなければ、産業界が現在及び近い将来、この低迷から抜け出せなくなってしまいます。
 文部科学省による2004年度創設予定の法科大学院(ロースクール)構想や上記の知的財産専門職大学院構想は、中・長期的施策としてとらえ、関係者の充分て失敗のないよう実現ることが望まれでには、十年以上もの歳月が必要でしょう。その間、我が国産業の国際競争力は低迷を続けるでしょう。
 この打開策の一つとして、知的財産の専門家である弁理士による産業界への支援が、国民から望まれています。しかし、今回改正された制限付き代理権付与では、弁理士の充分な活動をそれほど期待できません。
 日本弁理士会・正副会長会の使命は何か? 従来の施策を見ていると、まずは会員の声ありきで、会員の声を待って、これに沿って会員の望みを実現して行く、ネガティブなスタンスのように思われます。会員の声は、多くは弁理士から見た要望でしょう。此はこれで、悪くはないでしょう。
 しかし、弁理士資格制度の原点にたち返って見れば、産業界、強いては国民から見て、役に立ち、国益にかなうから、弁理士に特許専権業務を行わせていると思われます。だとすれば、自己の意志で立候補し、選挙で選ばれたいわゆる公人である日本弁理士会の正副会長、とりわけ会長たるもの、産業界を含めた国民からみて、弁理士制度をどう改革していくのが国益になるのか、積極的に提言し、全会員を啓蒙して賛同を得、賛同が得られないときには、辞任するくらいの気持ちでやってもらいたいし、また、これくらいの気持ちでやらないと、国民の声に答えられません。
 国民の声に答えるためには、弁理士の活発で自由な活動を抑制するような今回の制限付き代理権から、さらに一歩進んで、制限無しの代理権の付与が望ましいでしょう。このためには、例えば、能力担保措置として、弁理士試験の内の多岐選択試験に、必須問題として民法・民事訴訟法などを導入し、これに対して、既会員については、研修履行を義務付ける等の弁理士法改正を提言し、その実現にむけて邁進するというアクティブなスタンスを見せて欲しいものです。
 さすれば、我々弁政連もその実現のために、最大限の努力を惜しみませんし、また、そのような日本弁理士会・正副会長会に対して支援していくことを念願しております。
以上

この記事は弁政連フォーラム第115号(平成14年6月25日)に掲載したのものです。

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