PF-JPA




弁理士又は特許業務法人でない者が
出願手続等を代理することを
認めるべきでない!
  

furuya.fumio
日本弁理士政治連盟
副会長 丸 山 幸 雄



 弁理士法第75条は、
「弁理士又は特許業務法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、特許、実用新案、意匠若しくは商標若しくは国際出願若しくは国際登録出願に関する特許庁における手続若しくは特許、実用新案、意匠若しくは商標に関する異議申立て若しくは裁定に関する経済産業大臣に対する手続についての代理(特許料の納付手続についての代理、特許原簿への登録の申請手続についての代理その他の政令で定めるものを除く。)又はこれらの手続に係る事項に関する鑑定若しくは政令で定める書類若しくは電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成を業とすることができない。」
と規定して、弁理士又は特許業務法人でない者が特許庁に対する出願手続等を代理することを禁止しています。
 一方、弁護士法第72条は、
「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」
と規定して非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止を規定しています。
 弁理士法では「他人の求めに応じ報酬を得て」、弁護士法では「報酬を得る目的で」と規定している点が相違していますが、立法趣旨に差異はないと考えます。
 裁判所においては、弁護士法第72条の規定を受けて、特に他の法律で規定されている弁理士・司法書士等の一部手続を除き弁護士又は弁護士法人でない者(法人含む)が裁判事件の代理を行うことや裁判に関与することを認めていません。
 一方、弁理士法の立法に深く関与している特許庁においては、弁理士法第75条が規定されているにもかかわらず、弁理士又は特許業務法人でない法人が特許庁に対する出願手続等を業として代理してもこれを受理し、非弁理士業務を放任しています。受理する理由として、聞くところでは、「他人の求めに応じ報酬を得て」の文言が規定されていることを根拠に「報酬を得ている」客観的な事実が確認できないからとのことです。
 しかしながら、このような取扱いは即刻改善されるべきであり、立法趣旨に鑑み特許庁でも裁判所と同じく非弁理士の出願手続の代理などを認めるべきでないと考えます。上記「報酬を得て」があるために法人代理を認めざるを得ないというのであれば、弁理士法の改正にあたって第75条の立法趣旨を実効あるものにするために「報酬を得て」の文言を条文から削除するように求めたいと思います。
 特許庁は、客観的な事実が確認出来ない限り手続を不受理とする取扱いに改め、弁理士又は特許業務法人でない法人などが特許庁に対する出願手続等を代理しようとした場合には、その手続の都度、出願人に対して、@弁理士又は特許業務法人でない者が特許庁に対する出願手続等を代理することは原則として禁止されていること、A代理人により手続きする場合には弁理士又は特許業務法人を代理人に選任すべきこと、B代理人の選任がない場合には出願を受理しない旨、を通知すべきです。
 そして、当該通知に対して、@出願人より代理人の一切の手続に関し、如何なる報酬も支払わない旨、A代理人より如何なる報酬も受け取ることがない旨、を明示した疎明書類を提出した場合に限り、代理人として手続を継続することを認める取扱いをするべきです。手続が適法であることの釈明を求めることは広く採用されており、非弁理士による代理手続に釈明を求めることに何らの問題はないと思料します。
 それとともに弁理士法改正にあたり、弁理士法第75条の規定の趣旨が護られるよう「他人の求めに応じ報酬を得て」の規定を削除することを求め、これが不可能な場合には弁護士法同様に「報酬を得る目的で」と改正して裁判所と同じように特許庁においても原則として法人代理を認めない取扱いをするよう求めたいと思います。
 さらに、非弁理士が報酬を受け取って代理していた場合等、違法な手続で権利を取得した場合には、権利を行使することが出来ない、あるいは無効理由とするなど権利行使を制限する規定を設けることを要求したいと思います。
 今回の要求は、弁理士の既得権益といった狭義の問題ではなく、弁理士制度の根幹に係わる事柄であると共に、我が国の知財戦略に大きな影響が及ぶ可能性があるとの認識から、あえて述べさせて頂きました。特に弁理士であれば守秘義務が課せられておりますが、一般の法人はこのような義務はなく、利益を追求することを目的としており、今の状態がそのまま改善されることがないと、日本の法人のみならず、外国の法人が広く代理業務に進出することも予想され、我が国の技術が海外に流出することも考えられます。
 このような状況を招かないためにも、守秘義務も無い、利益追求を目的とする一般法人が出願手続などを代理している現在の状況を何とか改善する必要があると考えますので、会員の皆様の賛同をお願い致します。

 最後に、現在、弁政連の活動資金は少なく、活動が制約されております。例えば、弁理士の専権範囲の開放を求めて政治活動を続けている某団体は、その豊富な資金力を背景に多くの政治家との親密な関係を築き、その立場を着実に強化してきております。弁政連では、非常に少ない活動資金での活動を余儀なくされており、最大限の効果が得られるように、政策提言等の知恵出しで対抗しておりますが、これだけでは所詮限界があります。
 平成4年12月の臨時総会で、原則として全ての弁理士は弁政連の会員となり、会費を納入する義務が生じました。弁理士法の改正を控え、又資格制度の見直しが検討されている大切な時期を将来に禍根を残すことがないように乗り切るため、弁政連会費を納入していただけるようお願いいたします。
  

この記事は弁政連フォーラム第225号(平成23年11月25日)に掲載したのものです。
Copyright &;copy 2000 Political Federation of JPA, All rights reserved.
日本弁理士政治連盟 〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-4-2,弁理士会館内
E-mail: info@benseiren.gr.jp
Tel: 03-3581-1917 Fax: 03-3581-1890
更新日: