PF-JPA


中国支部会員の弁政連会費
100%納入を目指して



  

yoshihiro.tanabe
日本弁理士会 中国支部
支部長 田 邊 義 博

1)
本年度の日本弁理士会中国支部長を拝命しました田邊と申します。古谷会長から原稿依頼を受けまして、支部長として、また、一会員として思っていることを僭越ながら忌憚なく述べたいと思います。

まず初めに、私は弁理士登録して10年経ちますが、当初は、弁政連からの手紙や連絡等は内容を見ず、また、年一回の支部の総会時に本会会長等とともに出席されて弁政連幹部の話しもあるのですが、一方的にかつ大抵は時間オーバーして熱弁をふるわれるのですが、「そりゃ本会がやればいいでしょ」という感じで、熱意が逆に鬱陶しくさえ思え全く興味がありませんでした。更には、政治家とつながりを持っていること自体が色気づいているように見え、また、弁政連の会報などにも、○○議員と会談しました、みたいな報告や国会議員と一緒に写した写真を見ると「ああ、そんなことが好きな人達なんですね」とむしろ胡散臭く思っていました。
実際、近年の弁理士数増加により若い方が増え、必然的に(事務所経営でなく)特許事務所や企業の勤務弁理士が多くなっており、加えて、弁理士資格を取得した方々は、独立心が旺盛な傾向にあるため、組織に属するというよりいわば一匹狼的というか職人気質というか、そのような考えをお持ちでしょうから、政治的な活動に興味がないのはもっともともいえます。実際私も同様でした。
しかし、今は180°異なり、弁政連活動こそが本会と対をなし、弁理士の安定的な業務確保・地位保全を担うものと信じています。また、後述のように、地方弁理士・地方支部には重要な存在であると確信しております。

2)
まず、私が紹介するまでもないことですが、弁政連は本会総会によりその設立が斡旋決議され、昭和四十年代に設立されています。また、弁理士登録すると原則加入であり、自身では明瞭に認識しないまでも弁政連会員です(この仕組み自体、私も最近知りました)。ただし、実際に一番重要な弁政連会費納入となると、15%程度です。高楊枝咥えているだけでは、何も活動ができません。弁政連は政治団体であるので、政治資金規正法により、本会から活動資金を充当することができず、個人から会費のみが活動原資です。
ここで、政治団体ですから、個々の会員が「自信の政治的考え」から納入はしない、という判断に基づき未納を選択することは可能ですが、この納入率の数字は、明らかにそのような積極的未納を越えています(ある意味積極的未納の選択は弁政連の活動に関心があるといえますが・・・)。すなわち、ほとんどの方は、任意納入だから払わなくて良い、と解釈されているのだと思います。
この背景の一つには、弁政連の活動成果が見えにくい、イメージとしていうと、議員にお近づきする弁政連幹部の飲み食いに何で金を払わないといけないのか、という感覚があります。しかし、実際の活動は、もちろん飲食はあるでしょうが、その成果は本会に渡すという構図があります。すなわち、黒子的な存在です。逆に、弁政連が自ら、○○は、弁政連の根回しの成果だ、なんていうとそれ自体嫌らしいです。政治に絡めていえば、竹下登首相の言葉「汗は自分でかきましょう、手柄は人にあげましょう」的な存在です(全く関係ありませんが、私は、鈴木貫太郎総理が一番好きです)。

3)
さて、近年の傾向を見ると一昨年から特許出願件数が激減しています。我々の安定的な仕事が確保されるためには、出願件数の増加か業務の拡大しかありません。前者は企業側の問題ですのでこちらではどうすることもできません。ですので、現状では、業務の拡大に期待するしかないわけです。ここで近年の業務の拡大といえば(侵害訴訟)訴訟代理権の獲得があります。ただ、知財関係の訴訟は多くなってきたといえ、年間300〜600件程度ですので、全体のパイからみるとまだまだ十分ではありません。
一方、行政書士は、その圧倒的な数を背景とした活動資金をもとに盛んにロビー活動をおこなっています。我々の商標の専権代理も安定的とはいえません。商標が崩れたら次は特許です。ひいては弁理士資格は国家資格でなくても良い、ということになります。
そうならないように本会があるのだという考えはもちろんありますが、本会が直接議員に説明し働きかけるのはスジが違っており、やはりここは弁政連の活動の場となるでしょう。
ところで、我々の直接の仕事相手は特許庁ですが、特許庁が弁理士の業務拡大を唱えるわけではありません。実際、弁護士でも弁理士でもない者が出願代理をおこなっている例を見受けます。知財関係に特有だと思いますが、弁理士業は他の士業とことなり、役所チャンネルが特許庁のみです。弁護士は、法務省、裁判所、検察庁など多チャンネルに亘り、結果として、様々な主張・駆け引きができます。行政書士等も同様です。交渉チャンネルが1本だと、反対すると窓口がなくなってしまうので結局のところ反対ができず、なるようにしかなりません。上述の業務拡大の扉を押し開くべく多チャンネル化(=ロビー活動)が必要となってくると考えます。
 
4)
本会も弁政連も、所詮大都市域の活動かというとそうでもないと思います。地方弁理士が弁政連に期待できることは何でしょうか。私は、その一つは、品種登録(種苗法)の明示的な出願代理権を獲得することだと思っています。植物新品種は、地方に原種ないしそれに近いものが残っており、各県の農業試験場や大学(生物系学科)で盛んに研究・改良されています。地域興しの観点、新たな特産品の創出というのも追い風になっています。
私は、国立大学法人島根大学の産学連携センターで客員教授をしており、発明審査委員会に出席して職務発明の大学承継の審議に携わっています。そこで、植物新品種も審議されます。これまで、実際に6件ほど出願代理をおこなっています。
最初に依頼があったとき、大学の事務方が行政書士に依頼したところ、手続したことがないとのことで断られ、私にまわってきました。実際の業務は、先生へのヒアリング、フィールド等の視察、そしてそれらを「特性表」としてまとめて提出します。理科系の素養が必要となります。また、都市域の弁理士が地方の大学等の先生と電話・メールのやりとりで仕上げるのはなかなか大変だと思います。まさに、弁理士、特に地方弁理士にうってつけの仕事です。加えて、品種名をつける際には、商標調査が必要となってきます(私は以前商標調査をして登録可能性あり、と結論づけて出願代理した案件が、伏兵植物品種名に引っかかったことがあり、商標法と種苗法の一元的取扱いを痛感したことがあります)。
また、手続の過程で不明な点があり、農林水産省に問い合わせの電話をした際に、先方から、こちら(農水)も、弁理士さんに代理してもらうとこちらもやりやすい、と伝えられました。脈ありです。
現在植物新品種の出願は、年間1000件教ですが、農林水産省は、年間3000件に持っていくことを目指しています。十分気運が高まっています。
あと一点。期限管理は、我々の当然の業務ですが、種苗法では、登録査定から30日以内に登録料が納付されなければ、登録を「取り消さなければならない」と強行規定となっています(種苗法45条、49条)。特許等と違い待ってくれません。また、登録査定は3月に集中する傾向があり、人事異動と重なるため、期間途過しやすいという事情があります。実際、青森では数十年かけて改良した新品種が取り消された例がありました。現状では、農業試験場は、これまでの実務経験もあって自己出願をしていますが、上記のとおり潜在的な需要は十分あります。
大学などには私のように弁理士を客員教授として迎えているところが多数あります。私が代理したときは、あくまで、客員教授の大学職員として手続をおこない、書類送付先および連絡先は事務所として農林水産省側からすれば、実質的に弁理士が仕事をしているのがわかるように工夫しました(ただし、大学へは、客員教授の活動実績時間として報告し、大学規定の時間給を頂きました)。
本会もしくは弁政連で、弁理士が所属している各大学・研究機関等の出願実体を調査してはいかがでしょうか。弁理士の関与件数を以てロビー活動をすればどうかと思います。

5)
最後となりますが、皆さんは事務所を誰かに(たとえば自分の子供に)継がせたい、自分の子供も弁理士になって欲しい、と現在の状況で思われるでしょうか。私は残念ながらそう思えません。自分の子供に事務所を継がせる「環境を整えられなかった」となるのはあまりに忍びないです。
弁政連に会費納入したから、一朝一夕に環境が好転するわけではなく、また、どこまで期待できるかは私自身未知数ですが、年会費はわずか2万円です(自動納付では19000円)。弁理士は人数が多くなったといえ、行政書士のようの数(票)では勝ち目がありません。せめて活動資金だけは潤沢であってほしいですし、そうなるように各会員がせめても会費納入をしてほしいと願っております。年会費は、保険と考えれば十分納得ができると思います。いかがでしょうか。

中国支部でいえば、本年度の第一回の役員会で、弁政連会費納入を支部会委員に働きかけることが了承されました(役員の皆様ありがとうございます)。まずは、中国支部会員の会費納入100%を目指したいと思います。

追伸:世の中は、お父さん(本会)とお母さん(弁政連)、プラスとマイナス、ご飯とおかず、陰と陽、太陽と月、のように対比される二つがあってよくまわります。

この記事は弁政連フォーラム第231号(平成24年5月25日)に掲載したのものです。
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